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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第二章 冒険者となり大暴れせよ
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#34 よくわからない怒り

「はぁ……はぁ……おいプラム、どこだ!?」


 墓地を抜け出し、両側を木々に挟まれる道をゆく。心配で仕方がない、大事な我が友人の名を呼びながら。


「離してよっ――――むぐ」


 遠くから少女の声。直後に口を押さえられたか何かされたようだが、とにかくまだ無事なんだな、ひと安心だ。

 一直線に続く道を走る。ただ走っていると案外すぐに人影が現れた。その影は……俺を騙しやがった憎きゼインと、ヤツに取り押さえられたプラムだ。

 プラムは俺に気づき拘束を一瞬ほどいて、


「マコト!」


 縋るように俺の名を呼ぶ。今のでまた、闘志に火がついた俺は力強く前へ跳び、


「くらいやがれ、ジャンピングフロントキック!!」


「てめ――ぶふァッ!?」


 ネーミングセンス皆無にして俺自身の唯一の必殺技、飛び蹴りが振り返るゼインの顔面に決まった。

 ゼインは地面を転がっていき、開放されたプラムは駆け寄って来る。しゃがんで目線を合わせた俺に抱き着き、


「ごめんなさい、私あんなヤツと仲良く……」


「お前に責任は無いさ。大丈夫安心しろ、俺はもうここにいる」


 ちょっと泣きそうな目で、まさかの謝罪。怖かったよ〜とかガキっぽく言うのかと思いきや今度は責任を口にするか。

 ある意味では生意気だが、まぁ何にせよ怖かったろうし寂しかったろう。俺はただ少女の背中を擦った。


「ジジイてめぇ、よく()()()()()もんだなオイ。急がないと追っ手が来ちまうんじゃね?」


「……残念だが、スケルトンは全滅させてきたからお前の援軍はナシだぜ」


「は?」


 なんとか起き上がりながらながらも、まだ俺を舐め腐ってるゼインの質問に答えてやった。ヤツは目を見開いて冷や汗をダラダラ流しまくり、


「う、嘘だろ? 百体はいたんだが――」


「だから全滅だって言ってんだろ」


「えぇっ……え……えぇっ!?」


 百体か。確かに中々の量だったがそんなにいたかな。

 しかしな、今の俺にそんなの考える余裕はない。今そこで驚いてやがるあいつを倒したい。それだけしか考えてらんねぇよ。


「プラム下がってろ。ちょっと荒っぽくいく」


「う、うん」


 せっかく助かったのにまだ何か言いたげな態度のプラムだが、とにかく抱き着いたままは戦えねぇからな。いくらなんでもこれは下がってもらうしか――


「ねぇ」


 後ろに下がったプラムはやっぱり何か要件があったようで、俺の袖を軽く引っ張る。「ん?」とできるだけ優しい声で応じて俯く少女の顔を見ると……赤くなってる?


「触られた」


「は?」


 静かに放たれた一言から、嫌悪感を吐きそうなくらいに浴びた俺はプラムの仕草を見る。

 自分の太ももを指でちょんちょん触っている。黒いタイツっぽいのに包まれた、その太もも――


「こんっのロリコンクソ野郎がああああああ」


 こんなにも短い時間で――ゼインの本性、狙い、プラムにした事、プラムがされた事全てを理解して、怒りを叫びに表した。


「ち、違う! さっきのはただの出来心っつうか……触っただけでそれ以上の事は何も」


「いいか、今のお前には人権がねぇ。黙秘権()()しか持ってねぇんだお前は。言い訳無用だ、黙ってろ」


「ちょ待ってホント……ホントすいま」


「永遠に黙れ」


 歯を食いしばり、地面を踏みしめながら、腰を抜かして座り込んでるゼインの目の前へ。

 木製バットを静かに創造して、



「ぎゃああああああああああ―――――ッ!!!」



 メッタ打ちにした。

 間近で上がる男の情けない叫び声が、辺り一帯に響き渡ったのも気にせずに。

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