#33 フルスロットル!!
ブラッドと無駄話をしてる間に、かなりの勢いでスケルトンに囲まれてた俺。正確には霧の中、たくさんの影が迫ってきてるワケだが。
「な〜にが『闇の魔法』だよ、あいつ厨二病なんじゃねぇの? なぁお前らもそう思うだろ、骨格標本ども」
スケルトンはその厨二病男に実際に召喚された魔物だし、答えてくれるはずがねぇか。あ、そもそも魔物は喋れねぇか。
「お前らプラムの居場所知らねぇか――うぉっとっととと」
俺の無意味な質問を遮るかのごとく、一体のスケルトンが剣を振るってくる。俺は体を横にスライドさせ躱して、ステップして距離を離す。そしてスケルトンに向かって跳び、
「ジャンピングフロントキック!!」
名前そのまんま、正面へ飛び蹴りするだけ。即興で発明(?)した技だが効果はバツグン。
肋骨の辺りを蹴ってやるとスケルトンはすごい速さで五メートルくらい吹き飛び、その線上にいた他のスケルトン達にも衝撃が伝染していった。
対して俺は軽やかに着地。吹き飛んで動かなくなる仲間のスケルトン達を、踏み越えてまで向かってくる別のスケルトン達を見やり、
「まだまだこんなもんじゃねぇぞ」
右手に生み出したのは――鉄の柄の先から短く鎖が伸び、さらにその鎖の先端に小さめのトゲ付き鉄球がついたガチの武器。
詳しくはねぇけどいわゆる『モーニングスター』ってやつか。
「う〜らよっ」
突撃してきた一体に渾身のトゲ鉄球攻撃。重いしぐわんぐわん揺れて扱いづらいが、その辺は《超人的な肉体》でカバーだ。
そのまま二体くらいの頭蓋を割った後、体を回転させモーニングスターを振り回し続ける。ジャイアントスイングの要領で自分を軸に回転してる感じだ。
この攻撃で、集まりすぎた周囲のスケルトンを全員ぶっ飛ばすことに成功した。
「あっ」
回りながら俺は気づく。たった今、柄から鎖が千切れて鉄球とともにどこかへ飛んでいったことに。
まさかの事態に回転を止めた俺、そこへ後ろから容赦なく飛び込んでくる一体のスケルトン。だが手に残っている鉄製の柄で振り向きざまにぶん殴って一撃で倒す。
役割を終えた柄を捨て、今度は木製バット。こりゃルークの氷魔法から身を守ってくれた実績がある有能アイテムだ。
「おらおらァ!」
近寄ってくる奴らに、一回ずつ丁寧に確実にバットを叩きつけていく。骨だけだから胸やら腹を横に殴るとガッシャンガッシャン崩れて爽快だ。こいつら干からびてるから血は出ねぇしな。
十体くらい倒したところでさらに、前方に何十体かで群れたスケルトンが現れ、ゆっくり近づいてくる。
「ここは三段階攻撃だ」
いわゆるコンボ? まず群れへ突っ込んでいきバットを左から右へ一閃。群れの先頭に立っていた五、六体のスケルトンが横に吹き飛んでいく。
振ったままにバットを投げ捨て、体の右側で両手で握るのはエレキギター。元の世界で弾いたことあんのかね、と思いつつ今度は右から左へ振る。バットより弱そうだが、意外と四体くらい破壊できた。
でもってギターも申し訳ないが投げ捨て、俺の体の左側で唸りを上げるのはチェーンソー。どうやら生み出した瞬間勝手に起動してくれる特別仕様らしいな。ゴブリンの時も世話になったよ。
それは置いといて、また四方八方囲まれてた俺は前方に残る群れの残党と周囲のスケルトンを寄せ付けないため、
「ううぅぉあぁ!」
雄叫びを上げ、体を回転させてチェーンソーを振り回す。俺が回る、視界が回る、チェーンソーの刃が回ってる。その刃が近づくスケルトンを切り刻んでいく。
といっても二回転くらいで辞め、最後に前方を向き大きく斜め上へ振り上げて斬りつけ、コンボ攻撃終了。
その後もバール、フライパンなど見知ったやつ、他にも槍、メイス、鉄パイプ、ゴルフクラブからドラム缶まで何でもアリの『武器ガチャ』全開で大暴れした。
戦い始めてまだ間もない気もするけど、もはやスケルトンは最後の一体のみになっていた。
「ほっ」
フィニッシュの右ストレート。頭部を文字通りぶっ飛ばされて首なしになったスケルトンは膝をつき、倒れた。俺も疲れてはいるがヤツのように倒れる訳にはいかん。
霧がなんとなく晴れてきた。これを機に周りを観察すると、どうやらブラッドと話した門の反対側にもう一つ門があるみてぇだ。さすがにあれは開くだろ。
「はぁ……よーしブラッドとゼインを見つけてバチボコにしてやって、プラム助けて、迷子捜索ちゃっちゃか遂行して、さっさと帰って寝るとしようか」
生物は俺しかいない墓地の真ん中で、誰にともなく呟いた。




