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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
最終章 大暴れして、異世界の救世主となれ
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#154 全面戦争

 エバーグリーンの亡骸を建物の影に隠した俺もみんなに加勢し、広場の帝国兵をあらかた片付け終わる。

 俺の知り合いの戦闘員が全員広場に集まってる――まずは状況を確認しなきゃならんな。なんたってここに集まったメンツは全員俺の知り合いってだけであって、あいつら同士で面識があるとは限らねぇから。


「お〜いおい……なんでエルフがここにいんのよ。部外者はお呼びじゃねぇぞ」


「なに、エルフで悪い!?」

「喧嘩しちゃダメよ、ルール!」


 それ見たことか。ブラッドがエルフ姉妹に絡み始めた。でもこれはブラッドが特別悪いワケじゃねぇ、これが普通の人間とエルフの関係なんだよな。


「待てよ? 助けたは良いもののどうして敵地(ここ)に小さな女の子がいるのだ? まさかジャイロ、貴様が連れて来たのか!?」


「…………」


「ち、違うの女騎士さん! 私が行きたいってしつこくお願いしたから……それに今、ジャイロはね……えっと、なんというか……」


 最悪のタイミングで当然の疑問を投げるウェンディ、背を向けて黙り込み続けるのはジャイロで、返答したのは焦ってるプラムだった。ほら、面倒なことになってきた。



「おい、全員集まれ! 俺だよマコトだ! どうしてこんな状況になったのか説明する――それにしてもカオスな絵面だな……」



 集まってくる面々は人間の騎士に魔術師、エルフにオオカミにドラゴンと、なんでもアリ状態。

 これを『混沌』と言わずして、何と表現するか。



▽▼▼▽



 穴に落ちて泣き、覚悟を決めたおかげで随分と体が楽になった気がする。整理された心で落ち着いてみんなにいくつか説明をした。


 一つ、『騎士王』エバーグリーン・ホフマンが魔王ツトムに殺され、遺体はすぐ近くに隠してあること。

 ジャイロは俯いて黙り続け、ウェンディは膝をついて涙を流した。レオンは目を閉じて何度も頷き、アーノルドはただただ目を見開いてた。他のヤツらも驚いて何も言えてなかったな。


 二つ、ここに集まった面々は、事情がどうあれ全員が俺の知り合いであること。

 人間もエルフも関係ねぇ。仲良くまでする必要もねぇが、全員悪いヤツじゃないのは確かなんだから協力しなきゃだ。敵は魔王どもなんだしな。

 要は『細けぇこと気にしてる場合じゃねぇ』ってことよ。


 三つ、魔王軍の幹部に当たるような人物はほぼ全員別の世界(日本)から来たこと。そして転移に伴って特殊な能力を得たこと。

 能力の詳細は俺がわかる部分まで説明しておいた。ついでに土属性を扱うウザい魔術師の存在も教えた。


 四つ……かくいう俺もそいつらと同じ世界から来て、同じように能力を女神様から貰い受けたこと。

 さらに、女神様が俺をこの世界に呼んだ目的も――魔王ツトム・エンプティを倒すためだったってことも話しといた。


 あいつらは全員、よーく俺の話を聞いてくれた。中には俺がどんな能力を持ってんのかさえ知らねぇヤツもいるだろうに。


「先程は取り乱してしまい、ジャイロには申し訳ない事をした。マコト……まさか貴様が別世界から来たとは。すぐに納得はできんものの色々と辻褄が合ったよ」


「大丈夫だウェンディ、俺もジャイロもわかってる。さっきはエバーグリーンがどういう状態かもわかんねぇから焦ってたんだろ? まぁ……これが一番認めたくねぇだろうが……」


「団長は……最後まで勇敢であった。それだけを胸に刻み込み、彼の仇を取ろう」


「よく言った。そうしようぜ」


 たぶん、永遠に泣き続けたいくらいウェンディは辛いだろう。だが永遠なんてあるワケねぇ。

 この『絶望』をさっさと終わらせて少しだけでも『希望』を味わおうじゃねぇの。


「あ〜、さっきは悪かったな……今エルフだとか気にしてる場合じゃないよな」


 先走ってミスしたブラッドは目線を逸らして頭を掻き、照れを隠しながらエルフ姉妹に謝罪し、


「いいのよ、もう忘れましょ。あなたもそう思うでしょルール?」


 人間好きな姉リールは彼をあっさり許して妹にも同意を求めるが、


「……名前はルールちゃん……おお、この子……か、可愛いくねっスか兄貴……!?」


 ロリコンのゼインがまさかの乱入。人間でもエルフでも見境がないやべーヤツに対してロリは、


「ぇ、怖い……今は人間というよりそのツンツン頭の人が怖い」


 人間嫌いでなくてゼイン嫌いになってくれた。もうこれハッピーエンドだよな。

 みんなと楽しく話せば、ジャイロやウェンディもエバーグリーンの死によるストレスを払拭できるかもしれん。でもそんな余裕はねぇ。

 とにかく俺が最も言わなきゃいけねぇのは、



「ここには……魔王を自分の手で倒したいヤツもいると思う。だが今回は俺に任せて欲しいんだ」



 魔王ツトムは俺が倒す。理由は簡単で、



「さっきも言ったが俺と魔王は同郷だ。仮にも同じ世界で生まれ育った野郎が、自分勝手な考えでこの世界をメチャクチャにしようとしてんだ……俺はようやくこの世界に慣れてきた。色んなヤツと助け合って、この世界が好きになった。こんなにもファンタジーで――平凡なこの世界を、俺はあいつに壊させたくねぇ」



 これ以上は誰にも死んでほしくねぇ。拾えなかったモノを想いながら、全部拾い集めてやる。失くなっちまう前に。



「綺麗事ばっか並べたが、これも俺の我欲だ……だから強制はしねぇ。魔王は俺が倒したい! 納得いかないとしてもどうにか納得してほしい! 俺に手を貸してくれ!!」



 叫ぶ。そしてプロポーズでもするみてぇに頭を深々下げて、手を正面に突き出す。

 誰も俺の手を取ってくれねぇかもしれない。俺とあいつらの絆ってもんがどれだけ深いのか、俺には知る由も――



「――ったりめぇだ」



 俺の手をぐっと力強く握ったのは、黙り込んでたはずのジャイロだった。


「いまさらオレはお前を裏切ったりしねぇ。魔王はオレがブッ殺してやりてぇよ。でも、どうがんばったってオレにはできねぇ。だからお前に任せる。オレは……自分にできることをやる」


 俺の肩を叩き、背を向けてからボロボロの上着をその辺に脱ぎ捨てるジャイロの目には――初めて会った時みてぇな『情熱』が見えた気がした。

 彼の見る先には、自身の剣をウェンディに譲るレオンの姿があった。


「この剣の名は『雷鳴』。団長のために戦うんなら、団長補佐のお前が使うべきだウェンディ……これからもずっとな」


「……ありがたく、頂戴いたします。レオン氏」


 剣を交換し合う二人。戦いの準備が整いつつあるって俺も思ったしジャイロも思ってただろう。そこへルークがやってくる。



()()()()()()。エバーグリーン氏の言葉を忘れた訳ではありませんね? 騎士団団長殿、さぁ剣をどうぞ」



 広場で拾ったというエバーグリーンの美しい剣をジャイロに見せるルーク。静かに頷くジャイロに、レオンが話し掛けた。


「その剣の名は『不死鳥』だ。文字通り、団長の意志をお前が継ぐなら……その鳥は死なないのさ、ジャイ坊」


「――親父の死を、ムダにはしねぇさ!」


 薄く微笑むルークから、剣を受け取るジャイロ。彼は鞘から光沢のある刃をおもむろに抜き、そして天に掲げた。



「お前ら、声を上げろ、闘志を叫べ! これはサンライト王国――じゃなくて、『マコト・エイロネイアーの友達連合軍』と『ムーンスメル帝国魔王軍』との、全面戦争だぁ!!!」


「「「おう!!!」」」



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