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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
最終章 大暴れして、異世界の救世主となれ
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#147 武器ガチャ vs 武器ガチャ

 どこ行っても空は闇だらけ。詰まるところ北の森の中も、森を抜けてからの草原も、魔物だらけってワケだ。

 前にいるルークは空中にいくつかの氷のトゲを作っては飛ばし、作っては飛ばしてて、魔物を掃除しながら馬を進める。

 こんな感じでルークが余所見してる時に都合よく横から飛んでくるのは、


「ルーク危ねぇ、どおぉうっ!」


 人間くらいのサイズの闇の球。ルークを庇った俺はそれに簡単に呑み込まれ、馬から強制的に降ろされた。

 地面を転がる俺にはまだ景色を見る余裕はねぇが、この闇……ツトムしかいねぇじゃねぇの。


「……〈アイス・シールド〉!」


 転がりに何とかストップをかけ、急いでルークの方を見る。あいつの前には氷の盾。そしてツトム。手に持ってるのは……アイスピック? ふざけてんのか?


「ぐふっ……!?」


 たまらずに駆け出す俺。やはりツトムはふざけてなんかいなかった。

 アイスピックが突然闇を纏い、分厚い氷を破壊。そしてツトムはルークを蹴り飛ばしやがったんだ。



「俺の相棒に何してんだ魔王さんよぉ!」


「相棒? 虫けらの間違いだろうマコト・エイロネイアー……!」



 右の拳に力を入れる。折れたアイスピックを捨てて空からこっちへ向かってくるツトムも同じように構えてる。

 俺もツトムも超人同士。白いオーラを纏う両者の拳が轟音とともにぶつかり、互いに勢いを殺した。

 衝撃で周りの草が吹っ飛んだから、ぽっかりとここだけ土や砂が見える。


「……フ、やるじゃないか……だが残念、僕にはこれだけじゃなく、闇もあるのをご存知だろう」


 突き合わせたままの二つの拳。ツトムは白いオーラに、さらに黒いオーラを混ぜた。

 その瞬間、互角だったのに押され始める俺。どんどん後ろに押されていく。必死に力を入れてんのに、靴が大地を抉ってまで後退させられる。とんでもねぇパワーだが、


「俺の……背負ってるものは……もっと……重いッ!!」


 更に力を入れた瞬間、バァンッという破裂音に近い音とともに俺の体が後ろにぶっ飛ばされた。ツトムも同じく空中で何回転かさせられたらしいが、すぐに通常の状態に戻ってやがる。

 俺もなんとか転ばんように着地に成功。


「……はぁ……何だ今の。まぁいいや、お前はどうしてここにいるんだツトム? エバーグリーンとは戦わなかったのか?」


 戦っていてほしくない。絶望から目を逸らして、俺はこの質問に希望を求めた。だが、



「僕はエバーグリーン・ホフマンに勝利した。王国へのサプライズは面白かっただろう、余裕ができたからやったのさ」



 何の悪びれもなく魔王ツトムは言い放った。


「……勝利って? あいつは死んだのか? おい……答えろよ……クソったれがッッ!!!」


「そう熱くなるな。返答よりも先にこれを見てくれよ、酷いもんだろう」


 学ランのボタンを全部開けたツトムの腹には斬撃を受けたらしい傷が見られる。血も流れてて浅くはなさそうだが、あの野郎は汗一つかいてねぇ。


「これはエバーグリーンにやられた傷さ。あの老いぼれが必死こいて付けた傷――と言ってもこのくらいは闇に愛された僕には、掠り傷程度のダメージしか無いがな。フフフ、フハハハ」


「それ以上あいつを侮辱すんじゃねぇ! 死んだのか生きてるのか、早く答えろってんだよ!!!」


 俺はよくわからんがとにかくハンドガンを生み出し、両手で構えて空中のツトムに向ける。女神様の指示が無けりゃ銃も元から出せたらしい(出せないもんだと錯覚させられてただけ)。

 容赦なく、躊躇なく、俺は引き金を引いた。一つの発砲音が響くもツトムは軽く回避しやがった。

 続けて何発も狙い撃つが、全部外れちまって弾切れ。対するツトムは矢のセットされたクロスボウを生み出し、的外れが過ぎる方向へ矢を射出。


「おっと、手が滑ってしまった」


 俺とルークが乗ってた馬の脳天に矢が突き刺さる。ツトムの野郎……やっぱ魔王だけあって命を軽く見てやがる。当たりどころがよっぽど良かったのか、馬が即死してくれたのがせめてもの救いだ。

 間髪入れずにあいつはもう一発を俺に放ってくる。ガードするために生み出したのは金属製の盾だった。そういや異世界で最初に生み出した武器もこれだったような。


「この!」


 しっかり矢を弾いてくれた盾をぶん投げると、ツトムの手にあるクロスボウにヒットして弾き、両方とも消滅。

 直後、何を思ったのか翼をはためかせて俺の方に突撃してくるツトムをフライパンで迎撃しようとする俺だったが、横振りの一撃をあっさり躱されちまう。


「フライパンが武器? あんたの脳内はどうなってるんだか」


 俺の背後の空中に逆さまで浮くツトムの手には鞭があった。確かにあいつのはガチの武器ばかりだ。ヘビみてぇにしなる鞭が俺の後頭部を狙ってくるがイナバウアーみたいな体勢でギリギリ回避。

 代わりに鞭がフライパンに巻き付いてきやがって、武器が没収された。


「すまないが、ここでとどめを刺させてもらう」


「死ぬワケいくかよ!!」


 鞭を捨て、チェーンソーを生み出したツトム。俺もそれに合わせてチェーンソーを用意。

 空中から迫る刃、大地で迎え撃つ刃。高速回転する二つの刃がぶつかって重なり、物理的に火花を散らす。


「「おおおおお!!」」


 こんなに火花が飛んできてアッチィ鍔迫り合いは初めてだ。チェーンソー二つだし、音も間近だから耳が壊れそうだ。

 しかし退くワケにはいかん。ここだけは、譲れねぇ。

 だが両者の刃からビキビキと変な音が鳴り始める。そしてついに互いに刃がぶっ壊れた、そのタイミングで俺はさらなる武器を生み出した。それは、


「ジャイロの燃える剣だ! くらいやがれぇ!!」


 バランスを崩した目の前のツトムに向かって、炎魔法ごと出したジャイロの大剣を思いっきり振り下ろす。

 剣が地面に触れた瞬間、大爆発が周囲を呑み込む。手からすっぽ抜けた剣は消滅した。が、黒煙の中からしれっと無傷のツトムが現れる。


「とんでもない物をガチャで引くんだなあんたは。想像力とは色々な意味で恐ろし――おっと」


 仕留められなかった。

 その悔しさで食いしばった歯が折れそうになる俺をフォローしてくれるみてぇに、三つの氷塊が発射される。だがツトムはさらっと避けやがった。

 もちろん少し離れた所に杖を構えたルークがいて、


「あなたが魔王ツトム・エンプティさんですね。エバーグリーン氏はどうなったんですか? それにあなたは何故ここに?」


「どいつもこいつも同じ質問ばかり、いい加減うざいな。エバーグリーンなら生きているよ。()()な」


「一応……!?」


「もうこれ以上は答えない。僕がお人好しに見えるか?」


 心底冷めたような顔をして空にふよふよ浮かび上がる魔王ツトム。あの野郎のことだ、どうせここにいる理由も暇潰しとかだろう。

 エバーグリーンが生きてるのはとりあえず喜ばしいことだが、一応って何だよ。意味不明だ。


「どうやらあんたらは相当あのじいさんを崇拝しているらしい。バカみたいだが、そんなに会いたいなら帝国に来ることだ。まぁ馬はいないから徒歩だろうけどな。フフ……フフフ……」


 馬の死体を見ながら俺達を鼻で笑ったツトムは、闇の翼で帝国のある方角へ飛んで行っちまった。

 突然攻撃してきて突然帰ったフリーダムにも程がある魔王に、俺とルークは深いため息。


「馬を守らなかった僕の責任です……彼の言い方だと急いでも無駄なのかもしれませんが……」


「いいや、急ぐべきだよルーク。エバーグリーンがどんな状況にあるか知らねぇが、遅く行っても良い事なんか起きねぇぞ」


「そう、ですよね……」


 今の戦闘の間、ジャイロが先に帝国に着いてるかもしれねぇな、なんて思いながら自分の足で走り出す俺、そしてルーク。

 ――今のがツトムの本気か? それともまだお遊び気分か? どうなってんだ、もし今のが本気ならタイマンでエバーグリーンが負ける強さじゃねぇと思うが……



▽▼▼▽



「……? 妙な気配がします。『闇』です!」


「ん!?」


 ルークが叫んだかと思うと、続々と草原の地面から黒い塊が現れる。それらは形を変え、魔物の姿に。

 サンライト王国の時と同じだ。ツトムの野郎抜け目ねぇな……っておいおいおいすげぇ増え方だぞ。王国の比じゃねぇ量になってきた。


「この量、さすがに辛いですね。しかも帝国で戦闘は避けられないでしょうに……」


「体力の温存とか言ってる場合じゃなくなってきたな」


 そう、これから十中八九、いや絶対的に魔王軍とは戦うんだ。できるだけ元気マンマンで戦地に赴きたかったがしゃーねぇ。


「やりましょう、マコトさん」

「おう、もちろん――」


「いえ、あなた達は行って。〈テンペスタ〉!!」


 突然に後方から知ってる女の声、だが振り向く暇無く俺もルークも横向きの超巨大竜巻に巻き込まれる。見た目としては地を這う大蛇のようだ。

 ……しかしおかしい。巻き込まれたものの痛みも大きな衝撃もねぇ。なんか竜巻の中心でフワフワ浮きながら前進してて、例えるなら空港とかにある『動く歩道(平らなエスカレーター)』の感覚に近い。

 風も俺らを中心に吹き荒れてるはずだが特に何も感じない……でも吸い込まれた他の魔物は強風の壁でぐるぐる回って風圧で死んでいく。見覚えのある光景だよな。


「マゼンタ!」

「団長!」


 同時に振り返り、ほぼ同時にそいつを呼ぶ。マゼンタ・スウィーティ。「後で行く」と言ってたがもうそんなに時間経ったか。


「エバーグリーンは負けたが、まだ生きてるらしいぞ!」


 たぶん竜巻の中でも俺とルークとマゼンタだけは、風の音や風圧を感じないようマゼンタが工夫してるんだ。声は届くはずだ。


「……やはりね、ご報告ありがとう……エバーグリーンさんと私のコンビは、魔王に負けた。私にできることはあなた達の支援だけよ! この辺りの魔物は任せて、前に進んでちょうだい!」


「わかった!」


「そうだ、忘れてた……後で封印に向かうわ!」


「事情は知ってるが、()()()()()()()! 俺――じゃなくて俺達を信じてくれマゼンタ!」


 素直に頷くマゼンタの目に浮かぶ涙は気にせず、俺とルークは前を向く。しばらくすると風のトンネルは終わった。

 時間も距離もマゼンタのおかげでかなり稼げた。もう外壁が視界に入ってる、あと少し走ればムーンスメル帝国だ!

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