#14 ルークとプラム
「「ルーク!」」
俺と少女の驚く声が重なった。こいつらも知り合いなのか。
――ん、そういえばチンピラ共、「魔術師団の見習いがどうたらこうたら」言ってたような。この少女がそうなら、団のNo.2であるルークとは……なんつーか、『師弟関係』的な感じかな? そう思っとこう。
「いきなり撃ってしまってすみませんでした。プラムに何かしてるのかと思って……」
「気にすんなって」
早まった事を頭を下げて詫びるルークに、掌を向けてそう言っといた。
「えっと……そこに倒れてる彼らは?」
「あ、あのねルーク、私この人達に襲われそうだったんだけどね。おじさんが助けてくれたの」
「マコトさんが……そうでしたか、本当に良かった。お世話になりました」
「そこもあんま気にすんなって」
少女の説明を聞いて、保護者みたいな発言をするルークに、もう一度同じリアクションを返す。
そして、ルークが手に持ってる、だいたい何が入ってるのか想像のつく袋を指摘しようとして、
「す"まんルーク……そ"れより――」
「まったく、外で杖を見つけた時はヒヤヒヤしたよプラム。無事でよかったけどさ」
声が掠れちまって聞こえなかったようで、無視された。
「えっ、杖見つけちゃったの!? ――あとでこっそり回収するつもりだったのに」
「どうして外なんか勝手に出たの。しっかり話してもら――マコトさん!?」
「おじさん!?」
ルークが語りを辞めてまで驚き、少女も同調した理由。それは、飢餓状態の俺がぶっ倒れて完全に気を失ったからだ。
▽▼▼▽
口の中へ温かくて滑らかでおいしい液体がなだれ込んできて、俺は目を覚ます。
眼前には黄色っぽいスープの入った筒と、それを持つルーク。たぶん俺が寝てる間も、少しずつ飲ませてくれてたんだろう。量が結構減ってた。
場所はいまだに路地裏、俺は壁を背もたれにして座っている状態だ。
「うまいなこのスープ。そういえば……お前の帰りを待たなかった事、悪かった。不法入国なのに」
「いいんですよ。結果論ですが、トロい僕を待っていたらプラムや魔術師団はどうなっていたことやら。あなたには感謝してもしきれません」
自虐を挟みつつ苦笑するルークの言葉に、嘘は無さそうに見える。しかも見上げてみると、さっきまで青かった空が微妙にオレンジがかってきてるし、俺はだいぶ長いこと寝てたようだ。
きっと俺が気を失ってる間に、二人は互いに情報を交換してたんだろうよ。
「マコトさん、相当お腹空いてるでしょう。最初に僕が気づくべきだったのに……何から何まですみません。スープも好きなだけ飲んでくれていいし、パンもありますよ」
ああ、間違いない。前の世界でもここまで腹減ったことがあったんだろうかってくらい、最高に空腹だ。
が、
「………」
後ろで何も喋らない少女が小さく目線を落とし、腹をさすったのを俺は見逃さなかった。
「ルーク。パンはいくつある?」
「一応五個買っておきましたが」
「そうか……俺のための食料なのに悪いけど、三つそいつに食わせてやってくれ。スープも一緒にな。俺は二つで大丈夫だ」
「え? ……いいの?」
俺に指さされて驚く少女。少し嬉しそうな表情にも見えるのが本心バレバレでなんか面白い。
まぁ、あいつも多少疲れてるだろうし、怖い思いもしたろうし、腹が減ったんだろ。子供はよく食べるべきだ。
俺の想いを酌んでくれて、ルークは少女へパンを手渡す。
「ありがとう、おじさ……………マコト!」
「呼び捨てかよ。別にいいけどな、プラム」
腹減りコンビの俺とプラムは、その場で笑顔を交換した。




