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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
最終章 大暴れして、異世界の救世主となれ
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#145 それぞれの心の整理

今回は、最古参キャラクターなのに初のプラム視点です。舞台が王国から北の森へ変わります。


 ここは北の森。私は、マコトや女神様(?)から頼まれて、さっきまで戦ってたはずのドラゴンの治療をすることになった。

 いっつも戦ってばっかりのマコトを助けるために覚えた〈ヒール〉だけど、色んな人の役に立てて嬉しいな。


(むすめ)……先程から、すまぬ。儂のために魔法などかけてくれてな……」


「いいんだよ! 魔王に操られてたんでしょ? だったら悪い人じゃないってことだもん」


「……わ、儂はどう見ても人ではないと思うがな。それにしてもこの魔法、温かく、傷付いた体が癒やされる……」


 地面に横になるドラゴン。そのお腹の上で回復魔法をかけてるところなんだけど、ドラゴンはとっても気持ち良さそうに目を閉じてる。こんなに大きいのに……なんか猫みたい。


「ところでおぬし……『ぷらむ』と言ったか。治療を開始した頃から気づいていたのだが、何か思い悩んでいるな?」


「えっ!」


 そういえばさっきマコトが、いつもみたいな渋い声で言ってたかも。「あいつら心読んでくるぜぇい? 気をつけろやお前コラ」とか。

 あれ? こんな言い方じゃなかったかな。よく覚えてない。でもそうか、ドラゴンには話してもいいんだよね。



「実はね、マコトが異世界から来たって、さっき初めて知ったの。けっこう長い間いっしょにいたのに、初耳。それで驚いちゃったし、なんか、寂しい感じがして……」



 マコトのことは、今でも嘘つきだなんて思ってない。

 それよりも、あの人の故郷がここじゃないってことがなんとなく寂しい。どうしてだろう?


「プラムよ。『当たり前』が壊される時というのは、誰もが動揺するものだ。マコト・エイロネイアーは大人であるから、おぬしのような子供は特に動揺を隠し切れないのは理解している事だろう」


「子供じゃないもん!」


「失礼。儂が言いたかった事はだな……それを分かっているからこそ、彼もおぬしに打ち明けるのに勇気が必要だったろう。もしもおぬしに嫌われ拒絶されてしまったら? 頭がおかしいと思われたら? ――付き合いが長ければ長い程、恐怖は増すのだから」


「そ、そっか……」


 すごく大人な意見だ。私にはちょっと難しいけど、つまりマコトだって怖かったけど話してくれた、ってことだよね。


「だがおぬしは彼のホンモノの友人であった。彼を拒絶しなかっただろう。だから彼も、おぬしを急がせたりは絶対にしないさ。すぐには理解できまい、ゆっくりで良いのだ――」


「うぇーい、おはよ〜〜〜ございますっ! ドラゴン様ぁ〜はプラムっちと何のコソコソ話をしていらっしゃるのでございますか!? アタシめにもお教えくださるとありがた迷惑にはならなくてありがたいのでございますぅ!!」


「うるさっ!」


 すごく大人な意見に、すごく子供な叫び声が割りこんできた。ドラゴン教の教祖、ドラコ(十八歳)だ。私は十二歳なのに。

 今の今までドラゴンの首元に抱きついて寝てたのに、いつのまに起きちゃったんだろう。


「あー、さてはマコトっちの話だなぁ!? プラムっちとマコトっちってアホみたいに仲良いもんね! ホンット、アタシとドラゴン様と同じくらいの友好関係だよ!」


「そんなに仲よく見えるの?」


「見える見える! 端から見るとマジ父と娘にしか見えないよ! アタシとドラゴン様も親子に見えるでしょ!?」


「見えなくもない? かな?」


「でしょでしょ! さすがプラムっちは話がわかる子だぁね!」


 すごいなぁ、ドラコは瞬時にたくさん言葉が思いつくみたい。私ももっと会話が得意になりたいな。

 ドラコからもはや親扱いされてるドラゴンはため息をついてるけどね。


ドラコ(おぬし)が庇ってくれた事は聞いて感謝している。しかし、おぬしはまるで儂と以前から知り合っているような口振りだな。意味が分からんぞ」


「細けぇことは気にしないでしくさってくださいよドラゴン様! その真っ赤な体、その声、その喋り方。アンタの存在の全てがアタシの栄養源なのですから! さぁ、今度は尻尾をしゃぶらせてくださいまし!」


「何という事だ。ここまで会話の成立しない人間がおるのか……しかもある程度歳を重ねた者なのに……」


「あはははっ!」


 思わず笑っちゃう。もう一回深くため息をついたドラゴンを無視して、ドラコが尻尾を舐めに行っちゃったから。

 その間も治療は続けてるけど、今度は下の方から「おーい」って声が聞こえてくる。


「話は聞いてたぞ、嬢ちゃん。なに、マコトの転移の件なら俺も、ついでにそこで寝てるアーノルドも、本人から既に聞いた。安心してくれ。あと、ドラゴン教の女も多分理解しようとしてないから心配いらないだろう」


 あぐらをかいてる騎士のおじさん……レオンとかいう人。

 さっきドラゴンの攻撃をくらったけどエクスカリバーのおかげで大丈夫だった騎士のアーノルドは、私が少し〈ヒール〉をかけた後は静かに寝てる。


「マコトのことだが、こう考えるといい。『故郷がどこだろうと、マコトはマコトだ』ってな――その人の生まれた場所がここでない世界だとしたら、あるいはその人がそれを打ち明けたら、その瞬間にその人は別人になってしまうのか?」


「……ううん、ならない」


「そうだろう。嬢ちゃんが転移の件を隠されていたことに腹を立てていないなら、今までのように普通に接していればいいんだ。あいつが好きなら、そんなの簡単だろう?」


「たしかに……マコトだってそうして欲しいに決まってるもんね。おじさんありがとう!」


 軽く笑って手をヒラヒラさせてるレオンおじさん。ドラゴンもおじさんも、素敵な大人だなぁ。

 マコトと出会ってなかったら、この人達にも会ってなかっただろうな。そう考えると改めてマコトの凄さがわかる。私がマコトのこと大好きだってこともわかる。

 おじさんの言う通りにしよう、と思っていたらドラゴンが小さな声で、


「……すまぬ、プラムよ。あそこに座っている騎士が『閃光のレオン』で間違い無いだろうか」


「せん……こう……? えっと、レオンだよ」


 よくわからないことを聞いてきた。ドラゴンはまた深く息を吐いて、また口を開けた。


「『閃光のレオン』! 儂が魔王に操られている間は抵抗はできなかったのだが、意識だけは残っていたのだ。おぬしには多大なる迷惑を掛けてしまっただろう。本当に、本当に、申し訳無い!」


 やっぱりドラゴンが話すのはよくわからないことだ。言われたおじさんは真剣な顔で、


「もう俺は『閃光』じゃないからレオンでいいよ……正直に言うと、お前には敵でいて欲しかったさ。悪党でいて欲しかった。俺を『閃光』でなくしたのは、お前だと思っていたから」


「……うむ」


「だが、そうじゃなかった。全ては魔王の仕組んだこと。だったらもうお前を責める理由はない。あの時のことはお互い……忘れよう」


「……感謝する。感謝するよ、レオン」


 辛そうな顔をしてたドラゴンの目には、涙が溢れてる。赤い頬を、顎を、人間とおんなじような涙が伝わってく。

 この二人に何があったんだろう。きっと何かがあったんだろうけど、それを今、許し合えたように見える。


 時間が解決してくれることもあるのかな。

 私も、マコトと普通に楽しく話していれば、今の不安感が無くなっていくのかもしれない。


 ドラゴンの治療はもうすぐ終わりそう。

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