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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
最終章 大暴れして、異世界の救世主となれ
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#142 ルーク&ジャイロ vs マコト

「お前らどうするつもりだ?」


 腕を組んで仁王立ちのジャイロ、しゃがんだ体勢から杖を抜きつつ立ち上がるルーク。なんとなく目的はわからなくもないが、聞いてみた。


「「行かせない!」」


 仲悪いはずなのにハモる二人。絶対仲良いだろ、意地張りやがって。

 あいつらの「行かせない」はエバーグリーンのところにってことだろう。俺の考えは筒抜けか。


「おいヒョロてめぇ、さっきからしっかり意味わかってここにいんのか?」


「当然のことを聞かないでください。悔しいことに今回ばかりは僕とあなたの目的は一致しています」


「なら手ぇ組んでみるか。てめぇがオレについてこれるかってのは大きな大きな問題だけどよ」


「望むところです。しかし本当の問題はエバーグリーン氏を追ったら死罪に値すること、そしてマコトさんは重傷ってことですよ?」


 俺の目の前で展開される、若者達の物騒な掛け合い。つまりこいつらの言いたいことって、


「お前らには俺を止める理由がたくさんあるってこったな。一つは『エバーグリーンは俺に"来るな"と伝言を残した』、それから『エバーグリーンを追ったら王に殺される』、最後に『単純に重傷だから放っておきたくない』っていう感じか?」


「「その通り!」」


「だが、俺に止まる気がねぇのも知ってるな?」


「「もちろん!」」


 二人がまたハモったのを見てため息をつこうとした、その瞬間だった。


「う、冷てぇ!?」


 俺の両足を包むように氷塊が現れ、地面にロックされちまった。ルークめ、本気だな?

 そしてジャイロが正面から突っ込んでくる。剣は抜いてないが拳を振りかぶってる。ジャイロめ、本気だな?


「マコトが止まらねぇのは知ってっから、実力行使させてもらうぜ! ちょっと気絶してもらうが悪く思うなよ!」


「今の今まで気絶してたんだよ!」


 俺がそう簡単にやられるタマじゃねぇのも知ってんだろ、ジャイロ。そんなこと考えながら右腕のギプスと頭の包帯を外して捨てる。

 たった今、願い、生み出したのは()()()()。工事現場で『ガガガガガ』って爆音を出す、コンクリートとか破壊できる機械だ。

 それで足を潰さねぇよう素早く氷を破壊し、そのままジャイロの拳をハツリ機で受け止めようと試みる。


 ――ガシャン!


 案の定、簡単に破壊されちまった。しかし飛んできたジャイロのパンチを躱して腕を掴み、力を受け流しながらルークの方へぶん投げてやった。衝突する二人。


「ぐへぅっ!」


「うわっ……ちょっとちょっと、飛んで来ないでくださいよ脳筋くん!」


「いでっ!」


 覆い被さってきたジャイロを無慈悲にも蹴飛ばしたルークは、すっくと立ち上がってまたもや杖を振るう。

 俺の周囲の地面からいくつか氷の棒が現れたと思ったら、一瞬にして『氷の鳥かご』に閉じ込められちまった。


「大人しくしてくださいよマコトさん、エバーグリーン氏がそんなに簡単に負けるとは到底思えません。あなたは彼の強さをよく知っているでしょう! 傷も痛むでしょう!?」


「強くたって限界はあんだろ。意地張って一人で戦地に出向いたって、敵は同情してくれねぇんだ!」


 俺は『とにかく重い物』を願って冷蔵庫を生み出し、両手で投げると氷の柵が一撃で粉砕された。一発屋みたいな役割を終えた冷蔵庫が消滅する。

 冷静に追い討ちの準備に入ったルークだが、横から彼に迫る影が一つ。剣を振るうジャイロだ。


「てめぇこの野郎! 手ぇ組んだオレを早々に足蹴にするとはどういうことだヒョロ青髪!? あァ!?」


「ぬわっ!? どういうことも何も、あなたが無計画に突っ込んで戦況を複雑にしたからですよ!」


 氷の棘を地面から生やして剣に対抗するルーク。何だこいつら、全然チームワークなってねぇな。


「ってかオレ知ってるぞ、お前マゼンタさんとこ行って抗議してたろ!」


「ええ、盛大に叱られましたとも……あなただってそれより前に門番と揉めてたじゃないですか、お父さんを追うつもりでしたよね!?」


「見てたのか!?」


 おい、マジで何の話してんだかサッパリだぜ。ここでうだうだやってる時間がもったいねぇ、俺は先に進むぞ。

 猛ダッシュして、ジャイロに向かってスライディング。見事に命中し赤髪がスッ転ぶ。


「いてっ! お、おい何する気だ!」


 仰向けで怒鳴るジャイロの両足を掴み、脇に抱え、ぐるぐる回し始める。そう、


「ジャイアントスイング!!」


「ぐゥ、目が、目が回るぅ!」


 ある程度勢いをつけて、そしてあるポイントで両足から手を離す。砲弾のごとく飛んでいくジャイロ。


「〈アイス・シールド〉……ぐあっ!?」


「どあぁっ!」


 ルークの前に浮かび上がった氷の盾を容易く破壊して、ジャイロとルークが再び衝突。二人仲良く地面に転がった。が、


「くっ、〈ウォーター・バレット〉!!」


「ぶへあぁッ!?」


 ルークが飛ばしたものすごい勢いの水の弾丸が、俺にアッパーカットを決めてきやがった。おかげで俺まで地面に倒れるハメに。

 顎を摩りながら起き上がる俺の目に、近寄ってくるジャイロの姿が写る。あいつもあいつで鼻血を拭いてるが。


「やっと大人しくなりそうだな。おら、さっさと診療所戻れよマコト」


「やなこった! 死罪だか死刑だかプライドだか意地だか知らねぇが、ぜーんぶ覚悟で俺はエバーグリーンを追うんだよ!」


 俺の腕を掴もうとするジャイロに向かって今度は鉢ごと()()()()を生み出す。普通のハエトリグサより大きくて、ちょっとパッ◯ンフラワー感がある。

 俺が両手で抱える植物がジャイロに牙みたいな何かを振りかざし、何度も噛み付こうとする。しかし、


「あぶね、あぶねぇ! この!」


 それを全部避けたジャイロは燃える大剣で植物と鉢を一刀両断にしてくる。それまでの間に体勢は立て直せたが危ねぇよ、殺す気か。


「ってかジャイロ、ルーク」


「あ?」

「何です?」


「……俺も、お前らも。隠し事ばっかりじゃねぇか?」


「「……まぁ」」



▽▼▼▽



 ――俺ら三人、ダチであり仲間だ。色々と紆余曲折はあっても互いを信頼しているべきだ。

 そんな信念を掲げて俺が提案したのはたった一つ。


「腹を割って話そうぜ……まず、時間的にエバーグリーンはもう帝国に到着してるのか?」


「もう一時間と数十分になります。到着どころか、恐らくもう既に魔王軍と交戦……決着までついているかもしれませんね」


「間に合いはしないか……」


 今から急行したって、もう遅いのかな。ルークの推測では馬で帝国まで一時間弱は掛かりそうだと。

 まぁそれは一旦置いといて、今俺が知りてぇのはジャイロとルークの本音のとこだ。まずはジャイロに問うてみると、


「実はオレ、親父から『今度の魔王は先代魔王よりも強い』って聞いててさ……やっぱり心配になって追いかけようと思ったんだ。そしたら門番やってた後輩に止められた。『あの国王ならあなたでも容赦なく殺してしまうかもしれない』ってよ」


 やっぱ心配だったんじゃねぇか。それにしてもバルガ王も頑固というか……エバーグリーンと双璧をなすって感じの意固地コンビだよな。

 この流れにルークが続く。


「僕はそのやり取りを見た後、マゼンタ団長に『死罪なんておかしい』と話しました。団長が帝国に行こうとしてるのは()()()()ので。でも一喝されて僕は引き下がりまして――」


「ちょちょちょ、待てルーク。マゼンタは帝国に行くのか? 死罪になるんじゃねぇか? しかもお前どうして知ってんだ」


「十年前も今回も、僕は団長とエバーグリーン氏の密談を盗み聞きしてました。魔王を封印するために魔術師が必要なんだそうです。だから国王様も認めてるって……」


「盗み聞き。なるほど、だからお前ムーンスメル帝国のこと知ってる感じの発言してたんだな」


「あ、覚えてますよ。マコトさんが僕に転移者ってこと教えてくれた時でしたよね。『ロデオ』で魔王の説明をしていた時は、マコトさんを混乱させると思ってあえて言わなかったんですけど、あの告白の時はもう大丈夫かなって」


 実際その通り。転移者告白をした時には、とっくにエバーグリーンから帝国の話を聞いちまってた。そこまでは予見してねぇだろうけど、さすが有能。


「おい待てよ、転移者って何だよ!? マコトのことか!? しかも告白って、おいおい! お前らそういう関係だったのか!?」


「そういう『告白』じゃねぇよ!」


 忘れてた。未だにジャイロには話してなかった、一番肝心なヤツだと言ってもいいくらいなのに。


「脳筋くん、マコトさんは女神様によって異世界から転移してきたんですよ。あのおかしな魔法や丈夫な体はその時に授かった『能力』なんだそうです」


「あ、あぁ? 全然理解できねぇんだが……」


「実際ジャイロ、お前が運んだミネルって女神様なんだぜ? 女神様とその使いのドラゴンは今までずっと魔王に操られてたんだ」


「え、あれ女神だったのか!? オレ女神運んじゃってたのか!?」


 フツーに女神様を背負ってたな、お前。『聖なる背中』になっちまってんじゃねぇかな。

 冗談はさておいて問題は魔王軍だ。魔王ツトム・エンプティ、ヒロ・ペイン、タカオ・ディザイア。こいつらは全員転移者だと二人に伝えた。


「なるほどね、あのとんでもねぇ速度もその『能力』ってやつなのか……」


「魔王にももう会ってたんですか! しかも転移者だなんて……悲しすぎますよ」


「そうなんだよ。魔王ツトムは年齢こそお前らより若い。見た目はただのクソガキなんだが、あいつは俺と同じ二つの能力に加えて転移者を操る鎖の能力、そして魔王としての闇属性の魔法も扱える。だから先代魔王より圧倒的に強いはずなんだ。頷けるんだ。しかもあいつが望んでるのは殺戮・破壊・滅亡だ!」


 壁外を移動中に女神様やドラゴンからある程度ツトムの所業を聞いてきた。《操作の鎖(ブルーチェーン)》は超厄介な能力だ。俺もあの時エバーグリーンが守ってくれなかったら危険だった。

 ジャイロもルークも俺の気持ちをわかってくれたらしく、


「……親父を助けに行きたいって想い。マコトのそれが人一倍強いのは、そういうことだったのかよ」


「すみませんでした。僕らも揉めたり怒られたりして、混乱していたんです。どうにかして今からでも帝国へ――」


 その時だ、途端に辺りが暗くなった。夕方だとか夜だとか、そんなチンケな暗さじゃねぇ。

 これは、



「闇だ……」



 三人揃って空を見上げ、絶句した。

 信じられないくらい分厚い、黒いんだか紫なんだかよくわからん不気味な雲が、サンライト王国だけじゃなく空全体を覆っている。


 そして、街中に突如として()()()()が現れる。


「オオオオオオォォ!!!」


 一体のオーガ。魔物のオーガだ。

 それを筆頭に続々と魔物が誕生していく。スライム、ゴブリン、スケルトン、オーク、リザードマン、ガーゴイル、更にオーガ。一体ずつなんかじゃない。

 とんでもない量。魔物のオンパレードだった。



「……どうなってる? まさかツトムか? じ、じゃあ、エバーグリーンは……まさか……?」



 サンライト王国内で好き勝手に暴れ始める魔物達。住民の悲鳴も上がり始める。

 そんな中だってのに、たった一人の男の安否がなんとなくわかってしまった俺は……手の震えが止まらなかった。

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