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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
最終章 大暴れして、異世界の救世主となれ
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#136 【魔王ツトムの過去⑨】運命の瞬間

ツトム視点です。

時系列が#1に追いつき、遂にあの男が始動します。




〜時は飛び、マコトが目覚める当日〜




 魔物創造を始めてから一週間くらい経ったか。

 僕は順調に魔物を増やし、世界に放っていた。いつか本格的に世界を滅ぼす段階に移行するだろうが、その時が楽しみだ。


 そして今僕は女神の体と視界を乗っ取り、『神界』にていつものように調査を進めていた。

 屈強な魔王軍を作るべく、『転移者ファイル』を調べて異世界転移の仕組みを暴くことが目的。

 現在一番上に置いてある紙には『ヒロ・ペイン』という名前とこいつの顔写真が載っているが、どうしたらこいつを転移させられるのかがまだ明確にわからない。

 女神にそれを聞くには一度操作を解かなければならない。もし反撃されたら次は無いだろう、危険だ。だから自力で調査を続けている。


 ――面倒なことに、ドラゴンの時とは違って「異世界転移させろ」と女神に命令しても反応が無いからこうなってしまった。

 神としての特殊な能力はどうやら『命令放置』するだけでは行使できないようだ。



 カチッ――



 ん? 一瞬、上の空で動かしていた僕の手が何かに触れ、妙な音がした。この辺りにあるのはリモコンくらい……リモコン? 一見するとテレビ用だが、確かここにはおかしなモニターがあったような――



『ここどこだ』



 モニターの存在をようやく思い出した僕の耳に飛び込んでくる、人間の音声。神界に誰かいるのかと思ったが違う。

 振り返れば、やはりモニターの電源が入っていてそこに一人の男が映っている。四十歳くらいでサラリーマン風の服装だ。今の声もこいつだろうか。

 画面の右上には『マコト・エイロネイアー』と表示されていた。転移者じゃないか、それにこの名前は見覚えがある。僕の次の転移者候補――まさかとは思うがこの男、女神が抵抗した時に転移させられた日本人じゃないよな。奴を見ているといやに()()()()()()()んだが……ドラゴンがしくじったなんて信じたくはないな。



『何も覚えてねぇ……俺って、誰だ』



 ……何だって? 記憶喪失になっているのか。

 僕もヨリヒトもアヤメも、元の世界での自分を覚えたまま転移している。新たなパターンだが――可能性としては、鎖を刺されて不安定な女神が転移させた結果というのなら充分あり得るか。



『……うわ何だあれ、城か?』



 マコトが何かに気づいてその一点を見つめて呟いている。その直後、水たまりを覗き込んだりして自分の容姿を気にしているみたいだ。本当に自分のことを覚えてないらしい。

 僕はモニターを凝視すると、城と……そして高く白い壁の存在が確認できる。あそこはどう見てもサンライト王国じゃないか。ドラゴンはこの近くにいたはずなのに、やはり失敗したんだな。


 この状況、どう収集をつけるべきか……面倒だな。



『そうだ、財布とかあるよな』



 ん? 財布? そうか身分証を見つけるつもりだな、これは阻止するべきかもな。この先マコトをどう始末するとしても、混乱してもらっていた方が好都合に違いないんだ。

 一週間の内に何度も女神の体を操作している、そろそろ特殊能力の一つや二つ使えたっていいだろう。女神の手をモニターに向け、身分証が消えるように念じる――



『何もねぇ!?』



 どうやら成功したらしい。財布の中に金はあるが、身分証がどこにも無いから。

 財布を一度地面に叩きつけるマコトだが、すぐにそれを拾い上げる。小心者なのかこいつ。


 そうだ。ついでに携帯電話やら家の鍵やらも取り上げておこう。僕はまた同じように念じ、やはり成功したのかあちこちのポケットを確認し始めるマコトの手にはサングラスくらいしか握られない。

 ついに奴は頭を抱え、



『ああ、クソ、最悪だ……何なんだこの状況。俺はどうすれば良いんだよ……』



 それはこっちの台詞だよ、おっさん。あんたをどう扱ったら良いのやらさっぱりだ。

 もういい。こんなくだらない男に付き合ってられる程に僕は暇ではないんだ、この辺は女神に命令して放置しておけばいいだろう。


 ――僕は女神の視界ジャックを辞め、帝国の玉座に意識が戻ってくる。そして女神に伝わるよう鎖を可視化させて口を近づけ、


「女神、あんたはマコト・エイロネイアーへの説明義務があるだろう。怪しまれない為、それは実行しろ。だが奴に()()()()……目的だとか、そういうのは話すな。辻褄が合わないところも誤魔化せ」


 鎖から『同意』のような意思表示が伝わってきた。これで大丈夫……いや、もし女神が僕を倒す為にやったのなら能力も……


「能力の詳細も細かくは伝えるな。適当でいい。あと、もし『武器ガチャ』が当たっていたら……『銃の系統の武器は出せない』と伝えておけ」


 『同意』が返ってくる。恐らくこれで問題は無くなった。今日は魔物創造の方に力を入れよう、転移の件はまた明日だ。


 ――僕がマコト・エイロネイアーに構うのを辞めたのは『面倒だから』ってだけじゃない。もう一つの理由がある。

 日本人が、しかも突然異世界にやって来て記憶喪失で目的も知らされない日本人が……何か大きな行動を起こせるはずが無い。起こそうとしないに決まってる。

 僕は特別だからそんなことは無かったが、な。


 どうせ粛々と、異世界スローライフとかなんとかを送るだけだ。僕の邪魔になるような大暴れを、あの男がするとは思えない。

 残念だったな女神。マコトを転移させたのは、()()()()()『運命の導き』と呼んでもいいだろう。

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