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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
最終章 大暴れして、異世界の救世主となれ
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#130 【魔王ツトムの過去③】斬られた玉座

引き続きツトムの過去編です。

「ガフッ……きっと、皇帝陛下なら知っている……家族がいるんだ、頼むから命だけは……」


「皇帝か。情報提供、感謝する。だが死ね」


 僕は生み出したハンドガンで血だらけの帝国兵の頭を撃ち抜いた。銃声が響き、それは銃の存在しないこの世界では聞いたこともない音だろう、他の兵士も困惑しながら走ってくる。

 そいつらニ、三人の眉間や胸なんかを軽く撃ち抜いてハンドガンを捨て、僕は皇帝がいるだろう城へと歩いた。

 この国の兵士は基本的に装備が貧弱だ。頑張ったって素手の僕にすら敵わないさ、ザコどもが。


 要塞のような城へ着くが、当然のごとく正面扉の前には警備がいる。まぁ僕には(アリ)みたいなものだが。

 ロケットランチャーを生み出して巨大な扉を撃つ。大爆発が起き、扉のついでに警備兵も吹き飛んでいった。ほらな、蟻だろう。



▽  ▽



 石造りの要塞に侵入し、その薄暗い廊下を進む。剣を構えた軽装の兵士に何度か出くわすが、一発攻撃を避けてから鳩尾に拳を入れてやるとどいつもこいつも蹲ったり気絶したり。

 『足元にも及ばない』。こんな言葉を使う機会が、元の世界であり得ただろうか。


 しばらく兵を蹴散らしながら進んでいると、気づけば最奥――玉座に座る皇帝がいる部屋に出た。他にも二人、豪奢な服装の若い男女がいるが。


「な、何だねチミは!? まさかここまで兵士を倒しながらやって来たとは言うまい――」


「ここまで兵士を倒しながらやって来た」


「って言うんかい! ……わ、わ、私は皇帝のビルだ! そこにいるのは私の息子つまり皇子と、その妻。つまり私の義理の娘で皇女だ、よ、よろしくなっ! ――さぁ殺せっ!」


 用があるのは皇帝だけなのに、何故わざわざそこの皇子と皇女を紹介するのかと苛ついていたが……左右両側から僕を槍で殺そうとする兵士が見えた、しょうもない時間稼ぎ作戦だ。

 右から来る奴の首を掴み、左の奴に叩きつけるように投げる。二人とも音沙汰無しだ。


「え、えぇ!? ……あはは〜、あなた様はお強くあられるのですなぁ、な、何か御用でもおありなのでしょ――」


「用を先に聞けよ。ゴミ虫が」


 僕はハンドガンを生み出して、ぼーっと突っ立っていた皇子の頭をぶち抜いた。脳汁やら血やらが辺りに散らばる。

 フ、素人なのに銃の使い方がわかるなんて贅沢な能力だ。これはハマる。


「キャ――ッ!!」


「叫んでる場合か皇女様? 次はあんたがこうなる番だってのに呑気なものだ――」


「な……なんて事を……貴様の要求は何なのかね!? 頼むから彼女には手を出さないでくれ!」


 旦那の突然の死――それに目を見開くだけの皇女を庇うように、玉座から立ち上がったビル皇帝が聞いてくる。

 僕のは要求というか質問だ。


「魔王は? この近くにいるんじゃないのか。答えないとこの女が死ぬぞ」


 皇女に銃を向けながら問う。

 女神は『近くへ転移させる』と言っていた。曖昧だがこの近くに魔王がいるのは間違いないってことだ。


「しっ、知っているのか……!? そうだ、この玉座を動かせば地下への階段があり……最深部の扉の向こうに封印されている」


「じゃあそこを退()け。それから扉の鍵があるだろう、それも渡してもらおう」


「……きき、貴様が何を望んでいようとも、それはできないっ! すまない許してくれぇ!」


 やっと従順になったと思っていたのに、急に僕に反抗してきやがって。『できない』だと?


「十年前に……エバーグリーン・ホフマンという名の騎士と、か、固く固く約束をしたんだっ! 私はかつて魔王と手を組み世界を支配しようとした。その報いとして!」


 約束……くだらない。

 誰かと約束をしたとして、それがしっかり果たされる確証など無い。人間が今まで結んできた約束の中で果たされたのは、全体の何割だろうか。そんなレベルだ。


「あんたには失望したよ、皇帝」


 僕は皇女に近づいて銃で頭を殴った。撃ちはせず、鈍器として使った。殴られた箇所を押さえながら倒れる皇女に、僕は絶えず蹴りを入れていく。

 最初は『さっさと殺してやりたい』と思ったが、蹴る回数が増えるにつれ不思議と何も感じなくなった。


「い……いたい……うぅ……」


 動けない程に体が痣だらけになった皇女。僕はその頭に、ついに銃を突きつける。


「やめろっ! わかったわかった、鍵は渡すからどうかお許しを、どうか、お許しをぉ!」


 下を向く僕の視界に入るよう、ビル皇帝はどこからか取り出した鍵を投げ込んできた。土下座をしている。


「鍵を、感謝する。だが彼女は助からない」


「やめろォォォ!!!」


 皇帝の悲痛な叫びは、一つの発砲音で掻き消える。そこには変わり果てた皇女が転がるのみだった。

 汗ばむ手で力強く目元を押さえた皇帝は、弱々しく玉座に腰を下ろす。


「おい」


「……な……なんだ?」


「とぼけるな、地下への入り口はそこだろう。さっき『退け』とも言ったはずだ」


 ハンドガンの引き金を二度引き、邪魔な皇帝の右脚、そして腹を撃つ。苦痛に悶えたために王冠が頭から落ちた。

 それでもまだ座り込むあの男に嫌悪感を覚えた僕は銃を捨て、ありがちな剣を生み出し、そして、


「ゆるじでくれ、エバーグ――」


 泣き叫ぶ声も聞かずに刃を斜めに振り下ろす。玉座ごとはねられた皇帝の首が、赤い絨毯を転がってさらに赤く染める。


「僕の目的は魔王だけなのに……その邪魔をするあんたらが悪いんだぞ、少しは反省しろ」


 待ちに待った瞬間が、すぐそこに。僕は玉座をずらして長い階段を降り、埃を被った重い扉の鍵を開けたのだった。

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