#12 《能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)》
気を失った三人のチンピラを前に、空腹と腰痛でそろそろ立つのも辛くなってきた俺は、手頃な木箱に腰を下ろした。
少し前に俺を手助けしてくれたガキは恐怖が抜けていないのか、路地の隅っこで動かないチンピラを見下ろしながら体を震わせている。
「鉄の盾に……フライパンか」
俺ごときの想像力ではこの二つに関連性はあんまり見出だせそうにないんだが、これはいったい何の能力だ。
それにもう一つ気になるのは、手に持ったフライパンは健在だが、ぶん投げたはずの盾の姿が見えない。
チンピラの顔面にヒットして、その辺に転がってるもんだろうに。
「能力を使えるようになったんだから、そろそろ女神様が話し――うぐっ!?」
俺の独り言を遮ったのは、激しい頭痛。
冗談だろオイ、体中が不調だらけで死にそうだっつってんのに何だこれは! いてぇ、脳が破裂しそうだ!
「……ッ!! ……ッ……ッ!」
悲鳴が声にならないくらい痛い。俺はとにかく地面をのたうち回るしかなかった。
『おぼ、おめでとうございます、マコトさん』
ふいに、先程俺が言おうとした存在、聞き覚えのあるその声が脳内に響く。女神様だ。なんか最初噛んだような気がしたが。
どういう訳か女神様登場と同時に頭痛は消え失せた。
「おめでとうは良いが、出て来るのに痛みを伴うのは二度としないでくれるか?」
『すみません。な、なんだか……調子が悪く』
確かにいつもの冷淡で冷静な口調が崩れてる……と言うかバグが起きてるような感じだが。
『それはそうと、その能力の名……その名は……』
ああ、手から何か出てくる能力にも名前があるらしい。
『《能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)》となります』
「長いし最後のなんだよ! ふざけてんのか!?」
『かっこわら』とか入れる意味がわからんぞ。言いにくいしセンスの欠片もねぇ名前だ。
てか、『武器ガチャ』ってどういう事だ。武器がガチャマシンみたいに出てくるって意味か。それなら盾はまあわかるが、フライパンも武器って扱いになるのか?
『簡単に……その、説明するならば、"貴方が武器と思う物なんでも"を主に手などから召喚し、使役する能力です。創造した武器は貴方から離れれば消滅します』
「な、なんでも!?」
そりゃすげぇ。《超人的な肉体》と合わせたらこれは最強とも言えるのではないか。
『ただし"銃"の系統の物は出せません』
銃の系統? ハンドガンとかショットガンとか、あとロケットランチャーみたいなのもダメなんだろうか。
『こ、この能力……は、特別なもの……です』
「特別? ってかオイどうした。大丈夫か」
何で普通のおっさんが女神様の心配してんだよ。今回は本当に様子がおかしいが、どうしたんだ?
『では、またいつかお会いしましょう。さよなら』
「えっ、ちょ、唐突すぎだ――」
言うまでもないが、その言葉以降に返事は無い。能力についてもっと質問しようと思ったところなのに。
まぁ、あんな得体の知れない存在、深く考えてもしょうがねぇってことか。と俺はまだ怯えているガキの方を向いた。
ガキも俺の視線に気づく。
こっちの話はまだ、始まってもねぇからな。




