#114 ランクアップの瞬間?
魔王ツトムと戦って、エバーグリーンと話して、ジャイロへの罪悪感も拭い去って、翌日。
とりあえず一体だけだったが森でオーガを討伐した俺には、ランクアップが待っている。
「おはよう! 今日はどっか行くの?」
「ギルドに行くぜ。ちょっとした自分へのご褒美……みたいな意味を含ませてな」
起きたばっかりで寝癖のついてるプラムに応答。ランクとかそんなに興味ねぇけど、気分転換には悪くないと思ってる。
魔王のことを知ってるのは俺、エバーグリーン、あとはエバーグリーンからジャイロやウェンディ辺りが聞いてるかなってぐらいだ。知らないプラムが呑気に見えるが、話すにはまだ早い。
「じゃあ私も行くー!」
別に危険とかねぇから、ご勝手にどうぞって感じだな。
▽▼▼▽
プラムと二人でギルドに到着し、出迎えてくれたのはいつもの受付嬢だった。
「あっ、マコトさんお久しぶりです。ランクアップの依頼は完了しましたか?」
「完了だ。時間かかっちまったしまだ森にオーガ少なくねぇし、ギルドや依頼主には迷惑かけたな」
「とんでもございません!」
オーガは『オーラで殴る技』の練習として、依頼に関係なく今後も狩りまくるつもりではあるが。
会話の意味がわからずついてこれないプラムが隣にいたから、
「この依頼を完了したらランクアップできますよ〜って依頼を受けてたんだプラム。やっと報告に来れたんだよ」
「なんだ、今日は魔物と戦いに来たんじゃないんだ……マコトのランクなんてどうでもいー」
「お前な……」
さっき一応『自分へのご褒美』って言ったろクソガキ。なんでご褒美が魔物と殺し合うことなんだ。
「……まぁ、とにかくオーガ討伐したんで……EからDになるんだっけ? ランクアップを頼む」
「え? いや、その前に……」
どうしたんだ言葉に詰まってるような受付嬢は、俺のことを『信じられないわこいつ』って感じの目で見てくる。
なんだ? 顔にゴミでも付いて――
「オーガ討伐の、証拠を見せていただきませんと……」
「……あっ」
そうだったぁぁぁ!!! やべ、完全にやらかした恥ずかしいわコレ! ランク上がるっつってんのに今更なんてミスしてんだよ俺は!
「え、忘れたの? マコト、まさか証拠忘れたの〜!? あははははっ、だっさ〜!」
「うるせぇんだよ! お前こらクソガキ!」
痛いところ、キツツキレベルで突いてくるプラム。俺は容赦なく『くすぐり』という必殺技を実行する。
「ギャー! あははは、息できな、息できないぃ〜! ちょ、ほんとやめ、あぁははは!」
プラムはギルドの真ん中でのたうち回る。だがさすがは美少女、周りからの目は老若男女問わず温かい。
「……よし、終わり。どうだ受付嬢、今のショーの代金として俺をランクアップするとか」
「癒やされましたけどダメです! 諦めて証拠を持ってきてくださいね!」
「ちくしょぉぉ!」
――けっきょくその日の内に、俺は八つ当たりでオーガを五体くらいぶっ飛ばして角をゲット。
Eからようやくランクアップして、俺は『Dランク冒険者』となったんだ。
これで四章は終わりです。
五章はとにかくハイテンポにストーリーを進めて、次の六章が最終章となる予定です。




