#112 謝罪
地下牢を出て、その辺の騎士に外扉の修理を頼んで、その後俺とエバーグリーンは騎士団の領地でお茶しようって流れに。
ま、おっさん二人してとんでもない目に遭ったからな。休もう。
「で、その〜……エバーグリーン? 今、領地にあんたの息子さんいるか……?」
「普通にいるが、何故『ジャイロ』と呼ばない?」
「いや色々あったんだよ。だから話したいことがある」
全ての表現が曖昧だってことは俺だってわかってるが、別にエバーグリーンには関係の無い話だ。俺とジャイロの問題。
▽▼▼▽
「応接室を使おう。前にも来たことがあるだろう……む、その時は確か君に茶すら出さなかったな。申し訳無かった」
「もうどうでもいいぜ、そんな昔話は。先に行っててくれ。あ、泥棒とかはしねぇよ? ジャイロに会うだけだ」
快く頷いたエバーグリーンは建物の中へ。応接室とやらでお茶とか用意して待っててくれるんだろう。
とりあえず怒号というか、叫び声というか……とにかく男達の気合いが聞こえる方へ向かう。広場では男達が思うままに訓練を行っていた。その中心地に目的のあいつがいた。
「よう、ジャイロ」
「ハァ、ハァ……ん!? なんだマコトかよ! 突然話しかけるから焦ったぞ!」
半裸で、周りが見えなくなるくらい剣の素振りに熱中していたジャイロ。振ってるのはいつもの大剣だ。よくもまぁ何百回もブンブンと……
二人で広場の端の方に移動し、俺から話し始める。
「ごめん! 本当、あの時はすまなかった!」
「あ? おいおい、何の話だよ! オレ全然わかってねぇんだけども!?」
「ほらヒロと戦った時だよ。俺が動ければ、お前は肩とか首とか斬られずに済んだかもしれねぇから……」
ジャイロの首の横には未だガーゼみたいな物が貼ってあって痛々しい。良くはなっても、まだ完全に治ってはいねぇらしい。
話をようやく理解したのかジャイロは目を少し泳がせて後頭部をボリボリ掻く。
「あれか。あれは、あんたのせいじゃないだろ……オレの力不足だったろ。だから別に恨んでねぇし、あんたとは今でも友達みたいな関係だと思ってる」
泣かせるじゃねぇか。泣かないけど。
「それ聞いて安心したよ。これ以上言葉を足すのは余計になるよな。じゃ、ちょっと親父さんと約束してるから……」
「なっ、親父と!?」
「おう」
どうしてそんなに驚く。ただ父親の話が出るだけで驚く要素がお前にはあるのか。
「たぶん親父さんからいつか説明受けると思うが、ちょっと大変なことになってきたぞ」
「なんか、あんたも死にかけて大変だったとか聞いて心配したが……それとは別か?」
「別とも言いきれねぇ。まぁ詳しい話は親父とすることだな。じゃ、訓練とか頑張れよ!」
「わ、わかった。じゃあなマコト!」
――その後、ただ単に応接室でエバーグリーンとティータイムを愉しみ、俺はすぐ帰った。




