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能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)  作者: 通りすがりの医師
第四章 転移者と接触せよ
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#108 彼の名は、ツトム

「あの門をくぐったら、サンライト王国ってことですか?」


「そうだ」


 門まであと百メートルってとこか。本来なら入れる人は『国民証持ってる国民』もしくは『権力者の許可を貰った人』だっけ。

 まさか俺が権力者なワケねぇし、どうなることやら。


「あ、マコトさん……僕、名前が思い出せそうです! 確か、ツ……『ツ』から始まります!」


 ……ツ?


「じゃあ……『吊り革』? 『ツンドラ』?」


「いや、たぶん全然違います……」


「冗談だよ、本気でそんなこと言うワケねぇだろ。ツってありがちなのは……『ツトム』とか……」


「それ、それです! ツトムです!」


 なんだ、適当に言ったら当たっちまった。こいつの名前は『ツトム』か。仲良くしてぇなぁ。


「そうだ。さっき魔法とか言ってましたけど……マコトさんもそういうことできたりするんですか?」


「いや魔法はできん。だが、それに近いことはできなくもない」


 百聞は一見にしかず。そんな言葉を思い出し、俺は剣を生み出してみた。至って普通のありがちな剣だ。


「えっ!? それは……」


「魔法じゃなくて、能力だ。日本からの転移者として女神様から貰ったんだが……お前は、女神様とか知らねぇか?」


「い、いや、知りません。貰った能力って、一つなんですか?」


 ……確かに能力はこれだけじゃねぇ。もう一つあるが、



「やけに的確な質問だな、ツトム」


「え?」



 さっきから何かおかしい。見た目からしてもただの学生だろうに冷静すぎる。


 ヒロは『女神』と確かに言ってた。タカオも日本でないことや能力名をわかってた、つまりあいつらは女神様からある程度説明を受けてるんだ。


 だがツトムは違う。

 突然この世界に来て、なぜか今までと違って女神様からの説明も無く、まず最初に『他の転移者』を気にするか? その後も王国のこととか聞かず『俺の能力』なんかに興味湧かせてる場合か?


 ――いや、そういう人間だっているだろう。しかし根拠はもう一つある。それは、



「さっきからお前に触れると……やけに()()()()()()んだが、お前何者だよ?」


「……イライラ? そうですか。まぁ仕方の無いことかも、しれませんね……」


「どうしてだよ」



 悲しげに顔を伏せるツトム。直後に彼はゆっくりと顔を上げ、言う。



「僕だって同じ気持ちだからだ、マコト・エイロネイアー」



 その瞬間、歯を剥いた凶悪な笑顔を浮かべたツトムは突然、両手から紫色の球体を生み出す。その色や、おどろおどろしい雰囲気……あれは、


「闇の魔法……!!」


 ブラッドと戦った時もあちこちで見かけた紫色のオーラ、『闇属性の魔法』だ。あの球体から漂ってくるパワーは、ブラッドの時とは段違いだが。


 ――クソ。

 ツトムの野郎、悪人面でもはや別人だ。


 それに俺は『マコト・エイロネイアー』とは自己紹介してねぇ。『マコト』としか言ってない。なのに名字を知ってるってのはどういうことだ……!?

 ただ一つわかるのは、ツトムは俺を騙したってこと。何にせよ魔法を使ってるんだから、異世界初心者だなんてあり得ねぇ。



「よく気づいたね、僕があんたや、あんたのお仲間達にとって()であることに……」


「敵!? いやそこまではわかってねぇよ! 質問に答えろ、お前はいったい何者なんだ!? さっきまでのは全部演技だってのか!?」


「フフ、フフフ……」



 俺の焦りようがそんなに面白いのか嘲笑するツトムだが、少し呼吸を整えたあいつは、


「その通り。記憶喪失の演技はなかなか面白かったよ。有用な情報を提供してくれて感謝する、マコト・エイロネイアー」


 確かに色々と喋っちまった……こいつが敵なら、マズいな。触るたびイライラしたのを気のせいだと処理してたからな。

 ――待てよ? 敵ってなんだ? 俺や仲間にとっての敵って、何者だよ? ただのサイコパスにも見えねぇし、あの膨大な闇の魔力は、いったい……


「フフフ、まぁ混乱はしているだろうな。僕の正体が何なのか」


 全然わからない。俺がイライラした理由も、こいつが俺達の敵だってのも……点と点が繋がらない。


 が、ツトムの放った次の言葉で、俺にとっては全てが繋がった。




「僕の名は、ツトム・エンプティ。この世界に君臨する……いわゆる『魔王』さ!」




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