#10 ルークの思惑
今回は、新キャラのルーク視点です。
※武器ガチャは次回から登場します。
今、空腹で死にそうになっている(と自分で言っている)マコトさんの元へ、僕は戻ろうとしている。買ったのはパンと、筒に入った温かいスープ。やっぱりよく知らない人にはこのコンビで間に合わせるのが定番かなと思った僕です。
「マコトさんお待たせして――あれ?」
馬車に辿り着いて、布をどかして中を除くも、もぬけの殻。
――また、やってしまった。
マコトさんは僕が全責任を負ったものの一応は不法入国者。それをなんの見張りも付けず放っておいたのは確実に失敗だ。
よく「他人を信じ過ぎる」とか「詰めが甘い」と言われる僕だが、本当にその通り。もっと気をつけなきゃな。
「聞きたい事もあったのに」
小さな木の棒を握りしめて呟く。
もちろん彼が危険な人物であり、僕を良いように利用した可能性も少なくはない。でもそれだったら簡単な話。速攻で彼を見つけて叩きのめす、僕にはそれができるから。
この状況も、そう焦る程のものじゃないんだけど――
マコトさんを助けた理由は、僕の良心が黙ってなかった……というのが一番だけど、実のところもう一つある。
▽ ▽
僕には日課がある。魔術師団の仕事が忙しい時は除くけど。
それは単純、馬車に乗ってずっと遠くの綺麗な草原でお昼寝すること。何でかわからないけど無性にやりたくなるんだ、これが。今日も暇だったからいつもの草原に出掛けた。
王都の目の前にも十分に綺麗な草原はあるけれど、遠くの草原に行きたい。なんだかんだ僕は一人が好きなのかもしれない。
一時間くらい原っぱで寝て、また馬車に乗り込む。問題はその帰り道で起こった。
「杖……? これは……プラムの……?」
森の中で偶然見つけて拾ったのは魔術師が使う杖。と言っても小さめの初心者用。僕は魔力を感知できるし、知ってる人なら誰の魔力かなんとなく判断する事ができるため、持ち主はすぐにわかった。
プラムは簡単に説明すれば、僕の妹分。でも何であいつの杖がここに……? 僕の許可なく外へ……? 近くにいる気配も無いし、心配でしょうがない。
もし壁外で迷子状態なら皆で探さないと、そう思って馬車の速度を上げ、全速力で王都へ向かい、そこで見つけたのが……おかしな服を着た、今にも殺されそうなおじさんだった。
▽ ▽
一刻も早く聞きたかった。きっと外から来たであろうマコトさんに、あいつの所在を知らないかと。
でもやっぱり、苦しんでるマコトさんに聞くのは悪かった。何か食べて回復してくれれば、心置きなく質問するつもりだったのに。
「プラム……無事に王都に戻ってれば良いな……悪いけど、先に僕が自分で招いた不法入国者の件を終わらせるよ」
マコトさんを消す――とか、そういう「終わらせる」じゃない。彼はまだお腹が空いてるだろうし、不思議な格好だからまた騎士団に見つかったら今度こそ殺されてしまいそう。早急に確保しないと。
彼が普通に善人だったなら、その後に国民証を作って渡せたら一番平和かな。
「自分の失敗は、自分で収拾つけないとね」
目を閉じ、誰にともなく呟く。
当ては無いけれど、不安もそこまでは無い。僕は王都を走り始めた。




