#99 転移者の今後
揺れるタンカの上で寝ちまった俺。起きたらもう次の日の朝で、そこは診療所のベッドだった。
「あ、起きた!? 良かった、怖かったよぉ〜!! このまま目を覚まさなかったらどうしようって思って……」
「おはよう、とりあえず落ち着けよプラム。信じられないなら隅々まで見やがれ。ほら、生きてるだろ? どうだ?」
隣には寂しがりモード全開のプラム。
日本の入院服と同じような服を着てる俺は、腰を回して腕を動かし、おどけてやった。
「もー! 必死で〈ヒール〉って練習した回復魔法もかけてたし……私は真面目なんだよ!?」
「そりゃ感謝し――いでっ!」
頬をつねられた。なんで? 心配させないための配慮なのに、なんか理不尽じゃねぇか?
こんな感じのやり取りを繰り広げてると、プラムの反対側の方面から兜を脱いだアーノルドがやってくる。素顔を見るのはこれが二回目だっけ。
「ふぁ〜あ……朝から元気っすねぇ、マコトさんも……えっと、ナントカちゃんも」
「プ・ラ・厶!!」
「あっ……あぁ、ごめんね、ごめんプラムちゃん」
「マコトだけにしか用が無いのはわかるけど、今の私、気が立ってるからね!? 騎士のナントカさん!」
「ア、アーノルドです……騎士の」
ご機嫌斜めなプラムに適当な言葉を投げかけるとこうなるのか。ちょっと八つ当たりチックではある。
にしても、アーノルドのヤツも名前とか聞こうとしないし成長しねぇなぁ。今のが少しは刺激になってりゃいいが。
▽▼▼▽
「で、ヒロ・ペインはどうなったんだよ?」
俺の名前を出せば信じてくれる〜みたいなこと抜かしてやがったアーノルドだが、俺の名前なんかそこまで影響力あんのか? どこまで有名人なのかわからんぞ。
「まぁ色々と話し合いましたけど、結局は地下牢行きってことになったっすね。あんな俺と同い年くらいの奴が本当に良い情報なんて持ってんですか?」
「じゃあ死んではいねぇんだな。情報はなんつーか……可能性があるってだけで持ってるとは限らん。とりあえず拘束しとかないとマズイんだよ、あいつは」
どこか安心してる俺がいる。あんなサイコパスに同情――やっぱ同郷だからってことなのかな。
「それって、マコトを傷だらけにした人と同じ人でしょ? ジャイロとかも斬られてたように見えたし。捕まえとくだけで大丈夫なの?」
そうか、プラムは一瞬だけ乱入してきたんだっけ。そりゃジャイロやレオンの傷もしっかり見てるわな。新たなトラウマにならなきゃいいが。
「ん〜、確かにそれと同じ人なんだが……ワケあってな」
言い訳なんかできねぇ。ちょっと同情しちまったっていう、軽くて薄い意味しかねぇんだから。
「ところでマコトさん、一晩ですごい元気そうですけども……退院はいつなんですか?」
「明日だとよ。この診療所には前もお世話になったんだが、俺の顔を見た看護師が呆れた顔してたぜ。『とんでもない生命力だ』ってな!」
「なはは!」と笑いながら言ってみた誰得エピソード。質問してきた何も知らんアーノルドは驚いた顔で、プラムはその時の看護師と同じような顔してた。
おいおい、生命力が高くて何が悪い?




