ボールすくい
祭り。提灯の光がどこまでも続いている。ボールすくいに多くの子どもが集まっていた。
「一人一回までだよ~」
店主のだみ声が聞こえる。
「え~なんで~」
抗議する子どもたちを親が諭す。
「我慢しなさい。もう家にたくさんあるんだから」
ぷりぷりしながら子どもたちはポイを受け取った。ゆっくりと水に沈め、ボールを追いかける。燃えるような赤色。黒い小さなボール。茶色や白色のマーブル模様。金色に輝くボールもある。
「あ~破れちゃった~。もう一回やりたい!」
仕方ないな~、と言いながら店主はもう一つポイを渡した。親は申し訳なさそうに会釈を返す。
「やったー」
そう言う子どもの手にはすでにたくさんのボールが入った箱が握られていた。早速ポイでボールを掬い始めた。
「あ! ずるい! それぼくが取ろうとしてたのに」
ポイの先には青と緑と白で綺麗なマーブル模様になっている小さなボールが浮かんでいた。それを二人の子どもが狙っていた。
「早い者勝ちだもん。そんなに欲しけりゃこっちをくれてやるよ」
そういって取り出したのは灰色にぽつぽつと黒のまだら模様がついたパッとしないボールだった。
ちょうどその頃、地球では大パニックが起こっていた。
「おい、あの大きな丸い板は何!?」
「知らないね。新種のUFOじゃないか?」
「ちょっと見てよ! 二枚目が近づいてるわよ」
「なあ、月が動いてないか?」
かくして、地球と月は、三つの頭を持った子どもと、体中に目がある子どもとの間で交換されたのだった。
(了)