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流れ星
「ねえねえ、今夜は南の空で小規模な流星群があるって」
テレビを見ていた坊やが嬉しそうに声を上げる。その声に釣られて、父親であるエヌ氏とその妻の顔もほころんだ。
「じゃあ、今日はお昼寝して、夜は星空を見なくちゃね」
妻が諭す。ぐずる坊やを寝かしつけ、妻が戻ってきた。
「やっぱり子どもって良いわね」
エヌ氏は感慨深くうなずいた。
「そうだな、このまま大きくなってほしい」
その夜、エヌ氏一家は三人そろって屋上へ出た。
「あ、一個流れたよ」
坊やが目を輝かせて叫ぶ。
「急いで願い事を言わなくちゃ」
そう言って妻は唱え始めた。
「坊やが罪を犯しませんように……」
刑罰の代わりに、犯罪者を宇宙へ打ち上げ、特殊な技術で人工的に流れ星にする、という制度が始まって数十年後の、ある夜のことだった。
(了)