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勇者一行は俺1人  作者: 河流
6/37

ステータス:レベルアップ

#06


 オオカミの群れは俺とローザを中心に円形に取り囲む。

 当然、逃げ場などない。

 ローズをかばう戦い方では俺からは攻めることができない。

 俺は剣を構え、オオカミの攻撃に備える。


 オオカミたちは少しづつ、着実に、俺とローザににじり寄る。

 緊迫した状態に、最初に綻びがでたのはローザだった。

 ローザは不意に腰が抜け、その場に膝をついてしまう。


「ローザっ?!」


 俺は反射的にローザの無事を確認するため、オオカミから目をそらす。

 ここぞといわんばかりに、オオカミたちは一斉に牙を剝いて襲い掛かって来る。


「・・・しまった!」


 俺は剣を構えなおすと、飛びかかって来るオオカミに剣を突き立てる。

 毛皮を押しのけて肉を貫く嫌な感触が両手から全身に伝わる。

 貫かれたオオカミは悲痛な叫びをあげながらもがき苦しむ。


「ローザ、頭を低くしろ!」


 俺は突き刺さったオオカミごと剣を背後から襲い掛かるオオカミの群れへと薙ぎ払う。

 剣に刺さっていたオオカミはローザの頭上で剣から抜け落ちると、傷口から血を吹き出させながら、向かってくるオオカミの群れにぶつかる。


「アル君、右!」


 ローザは俺の死角から襲い掛かるオオカミにいち早く気付くと、俺に知らせる。

 俺は剣を逆手に持ちかえ、振り向きざまに、オオカミの口に剣を差し込む。

 剣はオオカミの頭部を貫き、一瞬のうちにオオカミを絶命させる。


「ナイスだ、ローザ!」


 オオカミの口に刺さった状態で剣を順手に持ち直すと、オオカミの頭部ごと、次に襲ってくるオオカミを一刀のうちに両断する。

 全身に返り血を浴びて佇む俺に、オオカミの群れは恐怖を感じたのか、勢いは完全に止まり、後退するものも出始める。


 俺は自分の袖で、剣に付いた血油を拭うと、再び剣を構える。

 完全に委縮した様子のオオカミの群れに、俺は一歩前進して見る。

 俺が一歩前に出ると、オオカミの群れは驚いたように小さく飛びあがって、後退する。


「勝負ありだな。・・・いけよ」


 俺が剣を降ろすと、オオカミたちは一斉に森へと駆け出していった。

 しかし、逃げ出すオオカミの群れの中で、流れに逆らい、俺を睨み続けるオオカミが一頭いた。


「お前、最初に出会ったオオカミだな?」


 オオカミは俺の言葉を理解しているような素振りを見せ、応えるように短く唸る。

 獲物の力量を見誤り、相当の被害を出したこのオオカミは他のオオカミと違い、後に退くことはできないのだろう。

 俺はそのオオカミのただならぬ殺気に、再び剣を構える。

 オオカミもそれを見て、上半身を低く、下半身を高く持ち上げるような格好で威嚇する。

 向かい合った2人は西部劇のガンマンのようにお互いに構えた状態から微動だにしない。


 何を合図に動いたのか、それは分からない。

 しかし、俺とオオカミは同時に動く。

 速く、しなやかに伸びるオオカミの前腕が僅差で先手を取る

 真っすぐ眼前に向かってくるオオカミの鉤爪に、俺は剣を振るのを止め、身をそらし避けてしまう。

 初動はオオカミの勝利だった。

 蓄積された疲労とオオカミの殺気に気圧されて剣を振る手が鈍ったようだ。

オオカミを挟んで向かい合う形になったローザが、俺の顔を見て小さく悲鳴を上げる。


「アル君!血が・・・」


 青い顔をして自らの頬に手を当てるローザを見て、俺は初めて傷を負った事に気付く。

 完璧には避けられなかったらしい、深く切れているようだが、不思議と痛みは無い。

 頬を流れる血を肩で拭う。


「心配するな、かすり傷だ」


 俺は腰を深く落とすと、再び剣を構える。

 オオカミは爪に付いた血を舐めると、俺をあざ笑うかのように数回、小さく吠える。

 俺は深く息を吸うと、剣を地面に突き立て、待ちの姿勢に入る。


「挑発のつもりか?いいか、挑発っていうのはこうやるんだよ」


 俺は剣から手を放し、オオカミへと歩み寄る。


「アレックス様、何を!?」


「ローザ、来るなっ!!」


 俺に駆け寄ろうとするローザを怒鳴り、制止させる。

 俺はさらに前へと出るため数歩進む。

 すると、オオカミの間合いに入ったのか、オオカミは弾けるように低く飛びかかる。

 俺は飛び退いて、足首を狙ったオオカミの噛みつきをかわす。


「残念、外れだ!じゃあな!!」


 俺は踵を返してオオカミに背を向けると、一目散に逃げ出す。

 オオカミは態勢を整えると、無防備な背中を晒す俺を追いかける。

 オオカミは高く飛び上がると、爪牙を剥き出し、俺の背中を引き裂こうとする。


「そう来てくれると・・・思ったよ!」


 俺は走るのを止め、地面に突き刺した剣を掴むと、力任せに剣を振る。

 剣は土や小石を飛ばしながら、地面から離れる。


?!・・・キャインッ!


危険を察知したのか、身を捩って回避しようとするオオカミだが、翼でも生えない限り空中では身動きが取れない。 

迫りくる白刃の剣に正面から切り伏せられ、オオカミは撃墜される。


「ハァハァ・・・俺の勝ちだな」


 息も絶え絶えな瀕死の状態で、なお戦おうと牙を剝くオオカミの首を切り飛ばす。

 首を失ったオオカミの胴体は静かにその場に崩れ落ちる。

 俺もまた、その様子を見届けると、その場に力なく座り込む。

 その時、ステータスバーが出現する。


【アレックス・ブルーブラッド 経験値を獲得】


【勇者 Lv.1 → Lv.2】


 勇者のレベルアップを示すステータスバーが現れる。

 経験値はジョブに反映されるらしい。


【ニンジャ Lv.1 → Lv.2】

【踊り子 Lv.1 → Lv.2】

【狩人 Lv.1 → Lv.2】


 勇者の文字の下に、立て続けに3つのジョブが現れる。

 俺が使ったことのあるジョブだ。

 ニンジャと狩人に関してはオオカミを倒しはしなかったが、活躍が評価されたという事だろうか。


【魔法使い Lv.1 → Lv.2】

【剣士 Lv.1 → Lv.2】

【僧侶 Lv.1 → Lv.2】

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使っていないはずのジョブも次々とレベルが上がっていく。

 立て続けに表れるレベルアップの表記に俺は死闘の疲れなど忘れて、その光景に心奪われてしまう。


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