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86 後始末


「ということで。今日のところは、俺たちはそろそろ帰るとするよ? なかなか有意義な話ができたことだし……次に来るときも突然だと思うけど、問題ないよな?」


 したり顔で笑うカルマに、グランチェスタは不敵な笑みを返す。


「ああ、勿論だとも。カミナギ殿……いつでも歓迎させて貰う」


「こいつは返して貰うからな?」


 カルマの手にはいつの間にか、二本の剣と短剣が握られていた――十字の形をした細身の剣をクリスタに手渡す。


「じゃあ、そういうことで……」


 唐突に転移魔法が発動して――カルマたちの姿はオストレア聖堂から消失した。


※ ※ ※ ※


 カルマが転移した先は――ビクトリア大聖堂。キースの書斎だった。


「とりあえず終わったけど……キースさん? 色々と俺が勝手に決めちゃって、悪かったな」


 カルマは苦笑しながら煙草に火を付ける。


「いや、カルマ君……君が何をしたのか、大よそのところは察しているつもりだよ」


 そう言うとキースは、正面からカルマを見た。


「君はグランチェスタを完全に屈服させた――だから彼を枢機卿の地位から追いやるよりも、思い通りに操る方が我々のためになる。君はそう考えたのだろう?」


「何だよ――全部バレてるのか?」


 カルマは悪びれずに応えた。


「グランチェスタに対して、キースさんは色々と思うところがあるのは解るよ。だから――」


「いや、良いんだ。カルマ君、君には本当に感謝しているよ!」


 カルマの言葉を遮って、キースは深々と頭を下げた。


「本当にありがとう……度重なる君の助力のおかげで、我々は救われた!」


「……あのさあ。そういうの止めてくれないか?」


 カルマはバツの悪そうな感じで頬を掻く。


「カミナギでも、困ることはあるのね?」


 クリスタはクスクスと笑うと――カルマに顔を近づけて、まじまじと見た。


「私だって……本当に感謝しているのよ? カミナギ――」


「……コホンッ!」


 キースがわざとらしい咳払いをすると――


「キースお爺様は何か勘違いしているみたいだけど――」


 そう言いながらクリスタが頬を染めて視線を逸らしたから――この話には一ミリも信憑性もなかった。


「まあ……問題ないなら、それで良いんだけどさ?」


 カルマは屈託のない笑顔を浮かべる。


「だったら、そろそろ俺はラグナバルに帰ろうかな? アクシアが待っているだろうからね」


「そうよね……全部問題が解決したんだから。約束通りにアクシアはすぐに解放するわよ――」


 クリスタは少し考えてから――ニッコリと笑う。


「ううん、何でもない。このことは、アクシアに直接言うわよ」


 クリスタが納得しているのが解ったから、カルマはそれ以上突っ込まなかった。


「そういうことで……キースさん? また遊びに来るからさ。とりあえず今日は帰るよ」


「ああ……カルマ君。本当に――」


 キースが言い終わる前に、カルマとクリスタは再び転移した。


※ ※ ※ ※


 それからエリオネスティ公爵の屋敷に戻ると、カルマは『力場(フォースフィールド)』で閉じ込めていた修道士たちをグランチェスタの元に送り届ける。


「こいつらの処分は任せるけど――上手くやれよな?」


 そして最後にオスカーとレジィを回収すると――カルマはラグナバルのオスカーの宿屋の部屋に転移した。


 この部屋から王都に転移してから、僅か一日ほどの時間だったが――余りにも多くの出来事が起きた。

 オスカーは隣にいるレジィを眺めながら感慨に耽るが――


「……悪いな、オスカー? そういうのは後回しにしてくれよ?」


 カルマは意地の悪い顔で笑う。


「おまえも、アクシアを開放したいって言ってたよな?」


「ああ、それは勿論だ! 早くアクシアを解放してくれ!」


 オスカーの生真面目な台詞に――カルマはしれっと爽やかな笑みを返す。


「だったらさ? レジィのことは任せるから後はよろしく――」


 カルマは六度目の転移をした――。


※ ※ ※ ※


 今度の行き先は、グリミア聖堂のクリスタの寝室だった。


「私の部屋にも――いつから『転移門』を設置していたのよ?」


 ジト目で見るクリスタに――カルマは何食わぬ顔で言う。


「そんなことよりも――早速アクシアのところに行こうか?」


「ちょっと待って――その前に、やることがあるのよ」


 それからクリスタは、彼女を心配して待っていた部下たちにアクシアを開放することを説明した。


「カミナギ殿は私たちの危機を救ってくれた功労者であり――私は彼との約束を果たすために、アクシアを開放する。もし、何かあれば……私が全ての責任を取るわ」


 毅然と言い放つクリスタを――止められる者などいなかった。


「よう、アクシア……結構待たせたよな?」


「……カルマ!!!」


 地下室までやってきたカルマに――アクシアは一切躊躇することなく抱きついた。

 ぎゅーとカルマを抱きしめて――上目遣いに漆黒の瞳を見つめる。


「我は……カルマの期待に応えられただろうか? 精一杯、やるべきことはやったと思ってはおるが……其方の想いに応えられたかどうかは……」


「アクシア……おまえも大げさだよな? でも、おまえが本気だってことは――俺も解っているからさ?」


「……カルマ!!!」


 窒息しそうなほど強く抱きしめられても――カルマは文句を言わなかった。


「えっと……アクシア? 私も居るってことは、解っているわよね?」


 クリスタは場違いな思いを感じながら――呆れた顔をする。


「ああ……勿論だ。だから解っているなら遠慮しろと言えば良いのか?」


 不機嫌なアクシアに――クリスタは苦笑する。


「そうね……解っているわよ。カミナギ? 私は外にいるから、何かあったら声を掛て」


「ああ、クリスタさん。悪いな……」


 二人の間に流れる共通認識を――アクシアは見逃さなかった。


「……カミナギ? ……クリスタさん? カルマよ、これはどういうことだ?」


 ジト目で見るアクシアに――カルマは屈託のない笑みを浮かべる。


「俺とクリスタさんが取引をしたのは、アクシアも知っているよな――だから、そう言うことだよ?」


「……カルマよ? 全然説明になっていないと思うが?」


 不服そうなアクシアに――カルマはしたり顔で笑う。


「この世界でおまえだけが俺の共犯者だ――それは今でも変わっていないよ」


「そうであったな……」


 アクシアは深く頷いて、じっとカルマを見つめる。

 

「クリスタ――おまえでは我とカルマの間に入ることは出来ぬ」


 自信たっぷりなアクシアに――クリスタは不敵な笑みを返した。


「そんなの解っているわよ……今のところはね?」


「うむ……良かろう。気構えだけは認めてやるが……本気の我の力を思い知らせてやるわ!!!」


 アクシアは牙を剥き出しにして、豪快に笑った。


 ここまで読んで頂きましてありがとうございます。

 物語はまだまだ続きますので、気に入って頂けたら、ブックマークをお願いします。


 感想や評価、レビューもお待ちしておりますが、最新話の下からしか登録できないんですよね……


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