表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

モブ~不幸version~

作者: 白井

 クラスの主役。

 そんな風になれたら良いと思う。

 でもなれなかった。


 部活のエース。

 弱小でも、その姿はカッコよかった。

 僕には出来ない。


 勉強。

 平凡だった。


 料理。

 センスがなかった。

 

 容姿。

 地味で目立たない。


 性格。

 根暗。


 僕はモブだ。

 誰かの人生の背景で、顔すら覚えられることのない役どころ。

 特別なものを何にも持っていない。

 けれどそこまで大きなマイナスを抱えているわけでもない。

 ランク付けするのであれば、きっと中の下。

 僕が人よりマシなところがあるとするならば、それをちゃんと自覚しているというただそれだけだろう。きっと。

 漫画やゲームじゃそういうキャラが急にモテたり別の世界で活躍したりもするんだろうけど、僕はそうじゃない。

 そもそも現実じゃそんなことはまず無いわけで。

 

 高校生になったばかりの頃は、中学とは違って凄い人間になれる気がしていた。

 でも実際、歳をとったからって何の努力もせずにいきなり変わることはない。

 だから今日もこうして僕はモブとして生きてる。

 

 誰かの背景。

 どうでもいい人間。

 友人だって、僕が転校するなりしてもそんなに悲しむことはないだろう。

 そもそもなんとなく他につるむ相手がいないから一緒にいるだけだ。

 そう考えると、僕のこれまでの人生ってなんなんだろう。

 みたいなことも考えるけど、それだって大した意味はない。

 明日になったらきっと忘れてるだろう。

 

 まあ、別に人生つまらないとか思ってるわけでもない。

 モブはモブなりのイベントもある。

 例えばそう、最近彼女が出来た。

 バイト先の子で、あんまり可愛くはない。

 

 彼女も言ってしまえばモブキャラだ。

 誰かの背景。

 どうでもいい人間。


 告白したのは僕からで、気安い関係だったから告白したらいけるんじゃないかと思った。

 多分、お互いそんなに恋愛感情はないと思う。

 恋人が欲しいからなんとなく了解してくれたんだと思ってる。

 でも僕は振られたら泣くし、彼女もTwitterとかインスタとかでポエムを垂れ流すに違いない。

 一週間もしたらどうでも良くなってるんだろうけど。 


 僕の人生はありきたりだ。

 本当に、ありふれすぎて何にも語ることなんて無い。

 正直、いつ死んでも別に良いんだろうと思ってた。

 勿論僕は死にたいわけじゃないしそこまで達観もしてないから、あくまで周りにとっての話。

 親くらいは本気で悲しんでくれるかな。


 「しにたく、な……い、な、ぁ」


 ほんと、どうしたもんかね。


 僕の右足が遠くの方に見える。

 身体から血が抜けて、どんどん冷たくなっていくのがわかる。

 血が足りない。意識が飛んでく。

 

 僕を撥ねた車はここにはいない。

 ひき逃げというやつに、僕は当事者として遭遇してしまったらしい。

 僕みたいなモブが遭遇するイベントの中でもとびきり悪いやつだ。

 ここは人気が少ないから、きっと僕が見つかることには死んでいるんだろうな。

 物語とかだと、そこから話が広がるんだろう。

 でもあれだな、僕の立ち位置的にそんな大層な導入にはならないか。

 どうでもいいか。

 

 本当に、全く。

 どうせモブなら幸福なモブになりたかった。

 童貞じゃないだけマシかな?

 死に際に考えることがこれなのは少し笑える。

 あー、血が足りないな。もうだめかな。駄目だね。


 それじゃあね、さようなら。死にたくなんて、なかったよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 悩みの月並みな感じがモブっぽい。 [気になる点] 自分がモブだと自覚する者をモブと呼んでいいのかということ。 [一言] 画面外を知覚して話しかけてくる感じが結構煩わしい。特にそれに関わるオ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ