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黄色のミモザ  作者: 小林 るこん
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はじまり

 カブトムシの戦いみたいだったな。

帰りの電車で揺られながら1日と30分前の情景を思い返す。

あなたに抱かれていた私は1番綺麗で、1番惨めな女だったんだ。前髪でメイクの落ちた顔面を隠すけど、都内から離れている、平日のましてやお昼の電車なんて乗客が乗ってるのが珍しいぐらいだ。隠す必要などない。だけど、ほんの少しのプライドがそれを制する。抱かれていたのは、相当前の時間だけれど、ほんの30分前は同じソファーベッドで20分ごとに起きながらそのたびに体勢を変えて、髪を撫でながら、両手で抱きしめてくれていたんだ。あなたの性格を理解して、言葉を一言も交わしていないけれど、この時間だけは、誰と勘違いされていようとも、私だけのあなたなんだって思えていたことが今、電車に揺られている私とのギャップを感じずにはいられない。あなたは私以外の人を考えているとしても私は、帰り道も、学校にいるときも、バイト先に行くときも、家に帰るときも、あなたを思っている。誰よりも。


 15:30。地元ではない町と、汚くない町でバイトを始めようと、夜中に勢いで応募したバイト先の、面接時間よりも30分前についてしまった。いつもは通学で通る駅だが一回も下りたことがない。右も左もわからず、マップを使って店までの道のりを確認しようとしたが、画面にひびの入っているおんぼろスマホだとなかなか位置情報を取得してくれない。ずっと連れ添ってきたスマホだったからこんなこともあろうかと早めに着く電車に乗ったことは正解だったみたいだ。電柱を見ながら歩いていけば20分ぐらいで着くだろう。それにしても、調理師免許を持っているだけで「焼き鳥屋」に応募したけれど、焼き鳥は食べたこともないし、肉に対しての知識もゼロに等しい。パン作りにしか興味がなかったのにどうして焼き鳥屋になんか。しかもお酒だって知りもしないのに。

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