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四獣の魔聖剣  作者: ゼティゼア
2/5

第一章ノ二 竜の襲来

一つ、『昔話』でもしようか


ある時、ある時代のある場所で


『魔王』が現れた


『魔王』は自分の配下達を使い


人々を襲った


そうして、人類は一度、滅亡しかけた


しかし、ある時、『勇者』が現れた


『勇者』は、襲われた町や村を救い


最後には『魔王』を倒した


『勇者』は『英雄』と称えられた


しかし、『魔王』は世界に自分自身の分身とも言える『卵』を遺した


『卵』は、人知れず


ただ、ただ『そこ』に存在し続けた


ここからが面白いんだ、よく聞いてて――あ


ごめんね、ちょっと用事を思い出しちゃった


このままずっと話していると、ぼくが怒られちゃうや


流石に、怒られるのはイヤだからね


帰ってきたら、また続きを話してあげるから


……フフッ、じゃあね、バイバイ


また、ね?






 目を覚ますと、村の方から赤い光が見え、煙がたっていた。

「お兄ちゃん!やっとおきた!」

 隣には、少しホッとした表情を浮かべている海美がいたが、辺りを見ても、いるハズの二人がいない。

「海美、一体何があった?」

 寝起きのせいか、まだ少しだけボンヤリするが、それを振り払い、海美に質問する。

「わかんない、けど朱羅兄ちゃんと明理姉ちゃんがお兄ちゃんを起こしてからこいって」

「そうか…」

 恐らく、二人とも村の様子を見に行ったのだろう。

 しかし、赤い光と煙が立ち上っていることから火事だとは思うが、ただの火事にしてはやけに大きい。

「とりあえず、早く村に――」

 そう立ち上がったところで、ふと右手首に違和感を感じる。

 見ると、そこには腕輪があった。

「……なるほど、やっぱりあの『夢』はただの夢じゃなかったのか……」

 しかし、少しばかり疑問が残る。それは――

「何故、石なんだ……?」

 『夢』でもらった腕輪は、綺麗な青色だったハズなのだ。だがしかし、今腕についているものは、どこからどう見てもただの石である。

 ただ一つ、埋め込まれた青い宝石のようなものを除いて。

「……うん、流石にとれないな……」

 腕輪から青い宝石のようなものをとろうとするが、その気配は全くない。

「ねえ、お兄ちゃん。それ何?」

 海美が質問をしてくる。

「さあな……俺にもよくわからん。とりあえず――」

 と、走ろうとした足がまた止められる。

 キィィィィン、と腕輪に埋め込まれた青い宝石のようなものをが突如として輝き始める。

「なっ!?」

「ひゃあっ!?」

 そして、その光は一本の光の線となり、あの祠へと繋がった。

「……一体何なんだ?」

「うう……」

 何があるのかと、祠へと足を進める。

 海美はビックリして俺の腕にしがみつき、そのまんまだ。


 光の線と繋がっていたのは、あの錆びまみれの剣だった。

「……?」

 そして、何かに導かれるように剣を手に取る。すると、さっきよりもさらに強い輝きが、剣から放たれる。

「ぐっ……!?」

「ぴゃああああ!?」

 正直、海美の叫び声の方が驚いた。

「く……一体さっきから何が――!?」

 光が消え、目を開けると、そこには綺麗な青色の剣が握られていた。

「本当に何なんだ……?」

 そして、二度剣が輝き出す。

「うっ……」

 もう一度目を開けると、そこにあったはずの剣は消えていた。

「……?消え…た……?」

「あうう……」

 海美の方を向くと、まだ目をつむっていた。おそらく、二回目の剣の輝きからずっと目をつむっていたのだろう。どうりで叫び声が聞こえないと……。

「もう目、開けてていいぞ」

「うう……本当?」

「大丈夫だ」

 ……たぶん。

「ってこうしてる場合じゃなかった!」

 村の事を少し忘れていた……!

「海美、早くいくぞ!」

「うん……!」

 そうして、俺と海美は村に向かって走り出した。


「――!!」

 案の定、村は火事だった。だが今驚いているのは違う。火事だった事ではない。

「何で…」

 焼ける村の中心、そこには――

「何で、『竜』がいる!?」

 『竜』――巨大な体、鋭い爪、強靭な顎に牙、そして、一対の大きな翼。それは正しく竜であった。

 この世界の竜は、基本的に人や人々の住む村や集落を自分から襲いには行かない。襲うとしても、せいぜい縄張りを荒らされたときぐらいだ。

「くッ」

 今はそこにあった家に身を隠しているものの、これではどうにもできない。

 何か策を考えていると、何かが物影に身を隠しながら近づいてきた。

「よう、無事だったか」

「ふいー、危なかったー」

「朱羅、明理!」

 こちらに向かってきたのは朱羅と明理の二人だった。

「村の皆は?」

 朱羅に質問をする。

「わかんねえ。逃げてくれてると嬉しいが、最悪――」

「それ以上言うなよ」

 嫌な光景が目に浮かぶ。

「くそっ……!」

「それでー?どうするのー?」

「……今はアイツがどっかに行くのを待つしかない」

 実際、竜に生身で戦いを挑むのは自殺と何も変わらない。

 だが――


 それから、数分後――

「おい、どうすんだ?アイツ、全く動く気配がしないぞ?」

「……今は待て」

 だが、このままではどうにもならない。どうするか――

「…………」

 そんな中、海美は一人、別のことを考えていた。

「海美ちゃん、大丈夫ー?」

 その様子が気になったのか、明理が声をかける。

「はい、大丈夫です……」

「なら、いいんだけどー……」

 しかし、その顔は、明らかに何かを考えていた。


 それから、さらに数分後――

「……危険だが、何処かに逃げよう」

 そこで、青刃が提案する。だが――

「おいおい、逃げるってのはいいぞ?だけどどこに向かうってんだ?」

「ここから西に行けば、たしか町があったはずだ」

「そこに逃げ込むのか……」

「んー……?」

 明理が何か辺りを見ているが、気にせず話を続ける。

「それで、その町についたあとは?」

「知り合いが何人かいるから、そこをあたる」

「あれー……?」

 しかし、さっきから何か嫌な感じがする……

「お前、知り合いなんていたのか」

「昔に何回かその町にいってな、そこでできた」

「なるほどな」

「おーい」

 明理の声に気づかず、朱羅と話を続ける。

「だが、逃げるときに見つかったら?」

「仲良く丸焼きだろうな」

「マジかよ」

「当たり前だろ」

「おーい!」

「うわっ!?」

 急に明理が大声を出す

「何だよ、急に?」

「全然急じゃないよー、さっきから呼んでたよー?」

「ああ、そうだったのか、ごめん」

 気づかなったことに対し謝る。

「それで、何かあったのか?」

「うん、海美ちゃんどこにいったのかなーって。二人は何か知らない?」

 朱羅の質問に明理が答えるが――

「……え?」

 それは、全く予想外のものだった。

 そう言われ、とっさに辺りを見渡すが、海美の姿が見えない。

「おい……あそこにいるの、まさかとは思うが……」

 そう朱羅が言う方に目を向ける。そこには――

「海美……!」

 そこには、ゆっくりと竜に向かって歩いている海美の姿があった。

「おい、助けにいくぞ!」

 そう叫ぶ。

「おい、助けにいくっつっても、どうやって!?」

「幸い、まだあの竜は海美に気づいてない!この間に……!」

「それで全員見つかったらもともこもないだろ!早く助けたいのは分かるが、今は落ち着け!」

「なら俺があの竜を引き付ける!その間に海美をたのむ!」

「はあ!?お前それがどうゆうことか分かって言ってるのかよ!?」

 この世界で竜と対峙する――それは、死を意味する。

 まして、自ら竜に立ち向かうなど、自殺行為だ。

「それでも、助けなくちゃいけないんだよ!」

 諦めたのか、頭をかきながら朱羅が答える。

「あーもう、分かったよ!どうなっても知らねえからな!」

「……ああ!」

 心の中でありがとうと言いつつ、走り出そうとしたところで、言い忘れていた事を言う。

「……海美を、頼むぞ」

「何で死ぬこと前提かな……まあ、必ず助けるから、安心して行ってこい。出来れば生きて帰ってこいよ」

「それは難しいな……」

「まあ、こっちのことは心配いらないよー。たぶん大丈夫だから!」

 明理がそう言ってくれる。……多分のところが少々心配だが……

「……じゃあ、行ってくる」

 そう言って、走り出した。


 きっともう気がついているころだろう。

 きっと凄く心配していることだろう。

 きっと生きてかえれたら、沢山怒られるだろう。

 ……きっと、生きてかえれないだろう。

「でも……ごめんなさい、お兄ちゃん」

 それでも私は、この子を放っておけない。

 せめて少しだけでも、問いかけたい。

 この子は、こんなことをする子じゃない。

 そんな気がする。

 まだあの子はこっちに気づいてない。

 そう思っていたら、ゆっくりと頭がこちらに向き始める。

「お兄ちゃん、ごめんなさい……」

 私は、この子を分かってあげたい!

 竜の顔がこちらを見る――その瞬間、竜の注意がどこかへと逸れる。

 その先にいたものは――

「――お兄ちゃん!?」


「どうだ、このやろう!」

 この辺りで見かけた、俺が持てる一番でかい石をぶつけてやった。それでもほとんどダメージは無いだろう。

 だが、竜の注意はこっちに逸れた!

「頼むぞ、朱羅、明理!」

 竜の気配を背に感じつつ、また走り出す。


「海美ちゃん、落ち着いてー!」

「でも、お兄ちゃんが!」

「あいつは大丈夫だ!それよりも俺たちは、海美のことをあいつから任されたんだよ!」

 竜を、青刃を追いかけようとする海美を止める。

「それに……あの子のこと、まだなんもわかってあげれてない……」

 そして、海美の目から涙がながれる。

 それを見て、二人は苦しくなる。

 それでも助けようとするが、その時。

 強い風が吹く。

 風が向かってきた方向に目を向ける。そこには――

「間に合わなかった……!」

「これはさすがにヤバイよー……?」

 あの、『竜』がいた。


 痛い。

 暗い視界に赤い液体が映る。

 ……血だ。それも、俺自身の。

 あの後すぐに、竜の腕によって吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。

「カハッ……」

 口から血が吹き出る。

 死ぬ……のかな……

 ああ、暗いのに、やけに視界が良いな……

 遠くに竜と、朱羅、明理、そして海美が見えた。

 間に合わなかった……か……

 ごめん……皆……


「マジかよ……!」

 終わった――

 そう思っていると、隣から大声が放たれた。

「教えて!」

 ……海美だ。

「教えて……なんで、あなたはそんなことをするの?あなたはきっと、こんなことをする子じゃなかった!」

「海美ちゃん……?」

 明理が呆然としている。

「お願い、教えて……答えて……何があなたをそうさせたの?」

 そして――

「グォオン……」

 竜が答える。

 それは、朱羅と明理には何と言ったのか、わからなかった。だが、海美は――

「え…………?」

 一人、驚いていた。

「グ……ゴアアア!!」

 そして、竜が突如暴れだす。

「ねえ、答えて!どうすればいいの?わたしはあなたを――」

「グオアアアア!!」

 しかし、海美の言葉は届かず、竜は暴れ続ける。

 そして、その巨大な口が、牙が――海美へと向かった。


 竜が海美を喰らおうとしている姿が見える。だが、身体はピクリとも動かない。

 動けよ……助けなくちゃいけないんだ。後で死んでもいい。だから、動けよ……

 視界が一層暗くなる。

 何で動かないんだよ……頼むから動いてくれ……

 意識が消え行く。

 助けなくちゃいけないんだ……絶対に……


 ドクン


 視界の色が変わる。

 周りは青色に染まり、騒いでいた木々もピタリと静まる。そして――


『…………』


 そこには、見知らぬ男が立っていた。


誰だ……?


『うん?あれ、もしかして見えちゃってる?』

 気の抜けた声で喋りかけてくる。


お前は誰なんだよ……


『はあ、まー僕が気になるのは分かるけど。君、今自分がどういった状況にあるのか理解しているかい?』


は……?


『今君死にかけてるけど。大丈夫?』

 その男は、さらっととんでもないことを告げた。


俺が……死ぬ……?


『まあ、あれをまともにくらってまだ意識があること自体不思議だけど……』


なあ……じゃあ……俺はもう死ぬのか……?


『うん。まあ、君に限らずあそこの子達もね。ただし、このままだと、ね』

 意味深な感じの顔と声で言う。


このままだとっていうのは、どうゆう意味だ……?


『君も助かるしあの子達も助けられる道はたったひとつ。《青龍》と完全に契約を結ぶことだ』


契約……?そういえば、アイツそんなこと言ってたな……


『今はまだ仮契約の状態で、完全な契約を結んではいない』

 つまり、そうすれば海美も皆も助けられると言うことだ。


……どうやったら完全に契約を結べる……?


『そう急ぐもんじゃないよ。よく考えることだ。下手をすれば、ここで大人しく死んでいた方が良かった何て思うこともありえなくない。完全に契約を結んでしまえば、君はもう――剣の呪縛からは逃れられなくなる』

 急に真面目な声になって、警告してくる。


剣の……呪縛……?


『そう。君はあの祠で剣を手にしたはずだ。あの剣は人が言うところの《聖剣》だ。でも……それと同時に《魔剣》でもある。悪を払う力があるが……それと同時に、呪われる。戦いの渦に巻き込まれることになる。どれだけ平穏無事に暮らそうとしても、必ず戦わなければいけなくなる』


長いんだよ……とゆうか、その剣はどこにあるんだよ?俺がさわった途端に消えたが……?


『それなら、君の中にある。出そうと思えば何時でも出てくるハズさ』


そうか、ならいい加減に契約を結ぶ方法を教えてくれ……


『君は、話を聞いていたかい?一度完全に契約を結んでしまえば、運命から逃げられなくなると――』


それでもいいんだ……


『……本当に、いいのかい?』


やるだけやって、打てる手が尽きて……それで死んでいくなら本望だよ……でも、今はまだ打てる手があるんだろ……?だったら俺はそれに賭ける……!!


『……はあ、やっぱり、《あの人》に似てるね……』

 呆れた様な顔をして言う。


それで、どうやったら契約を結べる?


『簡単だよ。守りたいって、助けたいって、救いたいって。そう強く願うだけでいい』


へえ……簡単だな……


『でしょ?』


……ありがとな


『フフッ。おっと、そろそろ時間だ。ごめんね、もういかなくちゃいけないや』


……そうか


『……最後に一つ、いいかい?』


……なんだ?


『《今の魔王》のことを、たのんだよ』


……ああ、任せろ


 そうして、男は何処かへと消えた。

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