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1-俺らは騎士と一緒に生きていた。

「お兄ちゃん、朝! あと、おじいちゃんが変!」


 今日も忌々しい朝がやって来る。そして、頼んでもいないのに妹が起こしに来る。そこまではいい。「おじいちゃんが変」とは何だろうか。少しは気遣えよ、おじいちゃん可哀想だろ。

 あと、「本能寺の変」みたいだなあと思いました、まる。何それ超どうでもいい。


 朝には慣れたし、もう「朝よ来るな」と願うのも中学生くらいでやめた気がする。……今でも時々そう思ったりはするけれども。

 それ以前に今日は日曜日だから妹が起こしに来ることが俺の中では既に処理出来ない。なのできっと俺の頭よりもSiriの方が優秀に違いない。

 だが、Siriをそのためだけに召喚しても今の状況を理解できるはずがないだろう。まぁ、あいつ目が無いしな。

 俺の部屋のカーテンの隙間から入る少しばかりの、だがいつもはそれでも十分爽やかで俺を元気づけるその日光さえも爽やかさを失ったかと思わせるほど異質だったのである。


 要するに、いつも通りではないが大体いつも通りのパジャマ姿で俺を起こしに来た妹の後ろには何やら重そうな西洋っぽい鎧を着た何者かがいた。ちなみに物騒なくらいに光っている剣で武装している。そういえば、日本語って韻を踏んでもただのギャグになるんだね。なんか超むなしい。

 とにかく家に他人なんて呼んだ覚えもない。何なら騎士とかもっと呼んだ覚えがない。……となると、こいつは一体誰だろう? というかそもそも人間だろうか。何か段々怖くなってきたな……


 俺がそんな驚きや疑問を口にする前に、妹の純奈(すみな)が、『殺されちゃうよ!』といった様子で続けようとする。え、殺されちゃうの? 

「おじいちゃんが……何て言うの? 何か変なの!」

「わかった。わかったけど、後ろのは誰だよ」


 俺が勇気を振り絞って訊くと、純奈は、へっ? と間の抜けた声を出してからさっと振り向いてから言った。

「あー、わかんないよね。この人おじいちゃんだよ……多分」


 は? こいつどうしちゃったの? 見る人全員おじいちゃんなの? どんな病気だよ。

 もしくは俺がおかしいのだろうか。一般家庭での「おじいちゃん」とは鋼鉄の鎧に身を固めた物騒な存在だったのだろうか。何それ怖い。

 引いている俺達を見かねたのか、その「おじいちゃん」らしき人物が初めて口を開いた。といっても兜のせいで顔はよく見えないが。

「孫達よ、私は君達の祖父であるからして、決して危害は加えない」


 おお、しゃべった。とりあえず会話は可能っぽいな。少しだけ安心してその古めかしい格好と口調をした自称俺達の祖父に話しかける。

「えっと……?」


 うん、全然話せなかったわ。それはもう、怖い先生に指された時くらいには話せなかった。いや、だって剣持ってるし、何か言ったら斬られるかもしれないし。怖いじゃん。

「なに、恐れる必要はない。先に述べた様に身内なのだからな、斬ったりなどせぬわ」


 その自称俺達の祖父はそう言い終えたが、今度はより深刻そうに重々しい声で続ける。

「そして、なによりも……MPが足りぬ」


 は? この人、今なんて言った? MPってあれだろ、マジックポイントだろ? 魔術とか使えるのだろうか、このお方は。もしかしたら塩分とかの聞き間違いかもしれない。それでもおかしいが、まだマトモである。

 怖いながらに一応聞いてみた。

「な……何が足りないって?」

「MPが足りるか足りないか、それが問題じゃ」

「……」


 恐怖を乗り越えて会話を試みたが、通じてるのかわからん。しかも、『ジュリエット!』とか叫びそうな返事を返してきた。この人もうやだ。僕、ホントのお家に帰りたいよう。

 精神崩壊しそうな俺を見かねたのか、純奈がさっとMPとか言ってる何者かの方を向いて、遠慮っぽく言った。いや、間違えた。何だこいつは……って感じの声だった。

 

「マジックポイントが……足りないの?」

「左様、それが足りなくては私といえども本来の力は発揮できまい。できて王国を一つ取るくらいだろうて」

「そっか……それじゃいけないの?」

「そのくらいでは……周りのプレイヤーに馬鹿にされてしまう。世に名前も残らないに違いない」

「大変だねぇ……」


 今わかったけど、この人頭がぶっとんでる。ゲーム脳ってヤツか。もう七十歳の後半なのにな。最近の流行に敏感すぎるだろ。そのうちイクメンとか言い出しそうだな。


「お兄ちゃん、どうやって病院に連れていこうか?」

「いや、こんな危ない物、ご近所に見せられないだろ。とりあえず、家で保管しようぜ?」

「賛成。お母さん達にも連絡しないとね」


 純奈がそう言いおわると同時に、マジックポイントさんがログインしました。

「『危ない者』だとぉ!? どこだ、出てこいっ! この騎応さまが相手してくれるわぁっ!」


 明らかに最も『危ない者』に近いのはお前だろうという人物が怒鳴りだしたので早速、純奈と作戦を決める。

「でも、こっちが先だな……」

「こりゃあ面倒だねぇ」

「頭が異世界に行ってるからなぁ、現実見せてやりたいよな」


 俺が笑いながらそう言うと、さっきまで怒鳴っていた騎士っぽい祖父がしょぼんとして床に座って震えていた。ちなみにファービーを参考にするとちょうどいい。

 さて、どうしたもんだか……

お読み頂きありがとうございます。

まだ慣れていないもので、ご意見やご感想等ありましたらご遠慮せずお願い致します。

ありがとうございました。

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