第六十九章 根本的に彼女は四人分、生きている⑤
「ならば、我の透視化の固有スキルの連打技を叩き込んでやるのだ! 我が今まで進とともに培ってきた、究極連打なのだーー!!」
「前に言っていたゲーム式連打のようなものだね」
「我のゲームテクニックを見て、吠え面をかくがいい」
昂の意気込みに、陽向は笑みをこぼす。
「究極連打か。僕も、麻白達に教えてもらおうかな」
「我は納得いかぬ!」
陽向が発した言葉に、昂は地団駄を踏んで激怒した。
「黒峯陽向! 前々から思っておったが、なにゆえ、綾花ちゃんを狙っていた貴様が、綾花ちゃんである麻白ちゃんから教えを請おっておるのだ! 麻白ちゃんから手取り足取り、教えてもらえるとはなんと羨ましい!」
憤慨に任せて、昂はひとしきり陽向のことを罵った。
ひたすら考えつく限りの罵詈雑言を口にしまくった。
「だって、僕は麻白とは幼なじみだから」
「我だって、進とは幼なじみに近い関係なのだ!」
昂の必死の訴えに、陽向は挑戦的な笑みを浮かべる。
「やっぱり、今の麻白は面白いね。綾花さんバージョンと進くんバージョン。でも、僕はそれでも『ラグナロック』のチームメンバーになりたいから、昂くんには負けないよ!」
無駄に対抗意思を燃やす昂を見て、陽向は自分の想いを言葉にして曝け出す。
「ねえ、昂くん。僕達は、麻白を取り戻すことは諦めたけど、昂くんの持っている魔術書は諦めていないからね」
「むっ!」
陽向の矜持と決意。
陽向は改めて、意気込んでいる昂に催促した。
「昂くん。今日こそ、君の魔術書は全て、僕がもらうからね。もっとも今、もらえると嬉しいな」
「我の魔術書を、誰にも渡すはずがなかろう!」
陽向の申し出に、昂が拳を突き上げながら地団駄を踏んで喚き散らす。
「我は魔術書を自由自在に読み明かし、なおかつ魔術書を守りたいのだ。その上で、黒峯陽向をゲームで返り討ちにしてくれよう。そして、綾花ちゃんとあかりちゃんと麻白ちゃんを今度こそ、我の恋人にしてみせるのだ!!」
「……おい」
「……あのな。無茶苦茶なことを言うなよ」
無謀無策、向こう見ずなことを次々と挙げていく率直極まりない昂の型破りな思考回路に、拓也と元樹は抗議の視線を送る。
二人の戦いに目を向けた綾花は悲壮感を漂わせる。
「たっくん、元樹くん。舞波くん、大丈夫かな」
「心配するなよ、綾」
「えっ?」
元樹の言葉に、綾花は目をぱちくりと瞬いた。
視線をうろつかせる綾花に、元樹は意図的に笑顔を浮かべて続ける。
「舞波のことだから、劣勢に立たされてもうまいこと立ち回ってくると思うな」
「……うん、そうだよね。こういう時、舞波くんはいつも無類の力を発揮するもの」
「……だから、困るんだ」
ほんわかな笑みを浮かべて思い出したように言う綾花をよそに、拓也は苦々しい顔で吐き捨てるように言った。
だが、すぐに状況を思い出して、拓也は表情を引きしめる。




