第六十二章 根本的に彼が掲げる矜持⑥
「輝明さん達には、不可能な事も可能に変える力があるのかもしれないな」
改めて、先を見据えた元樹は案ずるような気配を昇らせた。
「あかりちゃん、否、進。偉大なる我は、すべての決着をつける切り札。すごく頼もしい存在なのだ!」
「おい、昂!」
その言葉に思わず触発されたのか、昂は輝明の意思に張り合うように自身の意気込みを語る。
「我の真価が発揮されるのは、そして伝説が始まるのは今この時なのだ!」
昂はそう叫ぶと、刀を強く握りしめた。
そしてそのまま、たん、と音が響くほど強く地面を蹴る。
「……わぷ!?」
次の瞬間、文月が認識したのは宙から刀を振り落とす昂の姿だった。
反射的に、文月は魔術の結界で受け止めようとしーー刀の刀先が結界を通り抜けるのを目の当たりにする。
それはーー昂のキャラが好んで使っていた透視化の固有スキル。
「文月さん!」
何の障害もないように刀が振り下ろされようとしたが、夕薙が割って入ったことで事なきを得る。
だが、昂の猛攻はこれで終わりではない。
戦いが深まるほど、徐々に形勢は傾いていく。
「この連携、キリがないですね。仕方ありません」
「むっ!」
夕薙が示した着眼点に、昂は訝しげに首を傾げてみせる。
「魔術、ちょっと強引に使っちゃいますね~」
文月は手を掲げる。
昂に対抗する魔術を解き放つために。
「そうですね」
そこに夕薙が文哉とも戦線に加わる。
だが、魔術を使いこなせるのは文月達だけではない。
輝明と焔を始めとした阿南家の者達の介入によって、文哉が模索した決着は明確な転機を迎える事となった。
「今度は邪魔させてもらうぜ」
焔が不敵な笑みを張り付かせたまま、魔力を解放する。
それは先程のものとは比べようもない強大な魔力だった。
だが、それを遥かに上回る魔力が焔の隣で迸る。
「今度こそ、全てを覆すだけだ」
「ああ、そうこなくちゃな」
輝明の示した魔力と強き意思に、焔は確固たる決意を込める。
「これはーー」
文哉は自分達の魔力を打ち負かす魔術に驚愕する。
その瞬間、文哉達に向けて、二つの膨大な魔力が迸った。
それは離れた場所にいた阿南家の者達を驚愕させるほどの強大無比な魔力。
そして、猛攻を加えていた昂もまた、輝明達の魔力を感知する。
「むっ! 我は納得いかぬ!」
自身の魔力を上回る強烈な二つの魔力を伝播した昂は両拳を振り上げて憤慨した。
「何故、我の魔力より大きいのだ! 貴様ら、今すぐ我のサポートに回るべきだ! 今すぐ極大魔術をもとにした大がかりな魔術の解除して、偉大なる我の魔力を誇示せねばならぬ!」
全力で抗議した昂が、連なる奇跡の力を一閃とともに放つ。




