第六十章 根本的に彼が掲げる矜持④
「今から思う存分、我の凄さを知らしめてやるのだ! むむむむむっ……!!」
昂は刀を構えると、文哉達の魔術に対抗するだけではなく、圧倒するための力を放とうとする。
「一気呵成に畳み掛けるつもりか。へえー、容赦しねぇやり方でいいじゃないか」
戦う意欲を見せる昂。
夕薙と再び、激しい攻防を繰り広げていた焔はそれだけで納得したように表情に笑みを刻む。
「……先程まで舞波はあれほど、周囲を圧倒していたのに、今はすっかり暴走しているな」
相変わらずの昂の行動理念に、元樹は額に手を当てて呆れたように肩をすくめる。
この場に起きていることを認識している者達は、魔術の家系の者と関係者達だった。
それ故に、昂の魔力の大きさを認知する。
昂の思惑どおりに、周囲の者達は極度に取り乱していた。
「極大魔術をもとにした大がかりな魔術の解除。相手も、それを防ごうとしてくるはずだ」
「……なら、それを止めてみせる」
「……意表を突いてみせる」
断定する形で結んだ輝明の言葉に、鬼気迫るものを感じ取ったカケルと花菜は動向を見守る。
「まずは舞波の透視化の固有スキルの強化、頼むな」
「はい」
元樹の隣には桜色の髪の少女ーー輝明が使役する自動人形が佇んでいる。
「輝明さんの加護があった綾は、心を弱くされても対処できた。なら、この状況を変える力も、輝明さんにはあるのかもしれない」
綾花を完全に麻白にすることができる魔術書。
その魔術の効果を、元樹は前に起きた現象で否応なしに目の当たりした。
だが、今回、綾花には輝明の力の加護があった。
あの時と同じように、今回も何らかの奇跡を起こす一助となるかもしれない。
そう踏まえて、元樹は間隙を縫って、昂のもとへとたどり着く。
「今すぐ、舞波の透視化の固有スキルを強化してくれないか!」
元樹は決意を込めた声でそう告げた。
「強化……」
それに応えるように、輝明は自身が使役する自動人形に神経を集中する。
桜色の髪の少女は呼応するように、昂に向かって手を伸ばす。
その瞬間、昂の姿はまばゆい光に包まれる。
「おおっ……ついに我の真の力が発揮できるようになったのだ!」
唐突な声。
元樹達が望んで、文哉達が想像だにしていなかったことが現実に起きた。
昂が持つ刀は、光が伝播していく度に徐々に輝きを増していく。
「今の舞波昂くんはかなり危険だな」
「そうですね~」
文哉が示した着眼点に、文月は頬に手を当てて同意する。




