第四十九章 根本的に涙が止まらない①
「僕達は、前のような関係に戻れるのかな……」
「その思考ごと、全てを覆すことができたらな」
哀切を込めた疑問に対して、輝明はその答えを持っていた。
求めていたからこそ、輝明の解は眩しく思える。
「僕達、『クライン・ラビリンス』が、最強のチームだと言われている所以はなんだ?」
「それはーー」
「絶対的な強さと、それを補えるだけの個々の役目」
陽向が答えを発する前に、断定する形で結んだ輝明の決意。
やがて来るであろう、今後の生き方との直面。
自分の未来への選択。
魔術の分家、阿南家の家主の息子は大切な仲間とともに紡いだ絆の証を道標としていた。
「変わろうとすれば、どんな問題も覆すことができる」
「どんな問題も……?」
「そんなはずはない。断じて違う」
玄の父親は拳を握りしめて、陽向のつぶやきを打ち消すように告げた。
「君達がどんなに言い繕っても、事実は変わらない。変わらないんだ……」
守る殻が曖昧になった意識に、あの日の悪夢がにじり寄ってくる気配を感じる。
思い出したくない。
あの事故のことは。
恐怖のあまり、玄の父親は拳を震わせる。
ーーその時だった。
沁みいるような声が聞こえてきたのは……。
「変わります! 俺達が諦めない限り!」
まるで悪夢から救い上げるように。
暗闇の中に差し込んできた一筋の光みたいに、カケルはまっすぐに玄の父親を見つめていた。
「三崎カケルくん。何故、何度も私の前に立ちはだかるんだ……」
理解に最も程遠く。玄の父親の眸はまっすぐにカケルを捉えてから拒絶を紡いだ。
「簡単なこと……」
「黒峯麻白さんを救いたかったからです!」
カケルは花菜のその気概に促されて、自分のするべきことを理解する。
カケルは目を伏せて、目の前の相手に神経を集中する。
もう一度、戦いへと意識を向ける。
だが、これは逃げる為の戦いではない。
自分の過去に向き合う為の戦いだ。
「そんなこと、できるはずがない! 君の父親が麻白の命を奪ったんだ! 君は憎む相手で、麻白を救う存在ではない!」
カケルの決意の言葉を打ち消すように、玄の父親はきっぱりとそう言い放った。
だが……。
「それでも……あなたを止めてみせます! 俺はもう逃げるわけにはいかないから!」
「…………っ」
カケルのまっすぐな瞳に、玄の父親は思わず動揺する。
「お願いします! もう、一人で抱え込まないでください! 俺達は、あなた達と向き合う覚悟はできています!」
カケルは決意の眼差しで、玄の父親を見据えた。




