第四十四章 根本的に現実に向き合う時④
だからこそ、昂の行動には一貫性がない。
自身の欲求に従い、すぐに目移りしてしまう。
「我は、我のやり方でリベンジを果たしてみせるのだ!」
その滾る感情は、カケルに決め手を取られたことを根に持って暴れるための熱量へと変わった。
「リベンジ? 新たな魔術を産み出せる存在は、魔術の知識の使い手に相当の恨みがあるみたいだな」
「……へえー、面白いじゃねぇか」
昂の無謀無策な特攻への解釈。
核心を突く輝明の理念に、焔はそれだけで納得したように表情に笑みを刻む。
「あかりちゃん、否、進。偉大なる我もすごく頼もしい存在なのだ!」
「おい、昂!」
昂は思わず触発されたのか、カケルの意思に張り合うようにあかりにーー進に自身の意気込みを語る。
「我の真価が発揮されるのは、今この時なのだ!」
昂はそのまま、たん、と音が響くほど強く地面を蹴る。
「……っ!?」
次の瞬間、玄の父親が認識したのは宙から刀を振り落とす昂の姿だった。
反射的に、玄の父親は避けようとしーー刀の刀先が結界を通り抜けるのを目の当たりにする。
それはーー昂のキャラが好んで使っていた透視化の固有スキル。
「叔父さん!」
陽向の悲鳴をよそに、何の障害もないように刀が振り下ろされて、玄の父親は吹き飛ばされた。
「素晴らしい、素晴らしいぞ、我の固有スキルによる猛攻は!」
期せずして始まった昂の語り口。
玄の父親は躊躇いの色を滲ませたまま、身ぶり手振りで当たり散らす昂を見つめる。
「まさに、我は魔術の本家の者達をも翻弄する偉大なる未来の支配者、そして綾花ちゃん達を黒峯蓮馬と黒峯陽向の魔の手から颯爽と救う救世主ではないか!」
「舞波の行動を読むのは、黒峯蓮馬さんでも厳しいだろうな」
昂の熱意がこもった発意に、元樹は少なからず、驚異の念を抱いていた。
そして、戸惑いを振り払うように、カケルの動向に注視する。
「三崎カケルくん……」
矢継ぎ早の展開。
それも出来れば対峙したくなかった相手を目の当たりにして、上半身を起こした玄の父親は明らかに顔をしかめた。
「何故、何度も私の前に立ちはだかるんだ……」
理解に最も程遠く。玄の父親の眸はまっすぐにカケルを捉えてから拒絶を紡いだ。
「簡単なこと……」
「黒峯麻白さんを救いたかったからです!」
カケルは花菜のその気概に促されて、自分のするべきことを理解する。
カケルは目を伏せて、目の前の相手に神経を集中する。
もう一度、戦いへと意識を向ける。
だが、これは逃げる為の戦いではない。
自分の過去に向き合う為の戦いだ。




