第三十四章 根本的に彼の確固たる強さ②
「まさに我は魔術の本家の者達をも翻弄する偉大なる未来の支配者、そして綾花ちゃん達を黒峯蓮馬と黒峯陽向の魔の手から颯爽と救う救世主ではないか!」
「……舞波はどんな状況でも相変わらずだな」
「……ああ」
昂の熱意がこもった発意に、拓也と元樹は少なからず、驚異の念を抱いていた。
「舞波の行動を読むのは、由良文月さんでも厳しいだろうな」
元樹は戸惑いを振り払うように、文月の動向に注視する。
「あのあの、いつから不意討ちを仕掛けようとしたんですか?」
「むっ、決まっているではないか。貴様が我の魔術を封じた時だ!」
文月の慌てぶりに、昂は傲岸不遜な態度で率直な意見を述べる。
「本当にそうなのか?」
拓也が抱いた疑問に応えるように、元樹は推測を確信に変えた。
「いや、舞波のことだから、出たとこ勝負だった可能性が高いな」
確信を込めて静かに告げられた元樹の問いは、驚愕する文月へと向けられていた。
「舞波昂くん、もう、不意討ちしちゃうの早すぎですよ~。私、これでも必死に周囲に目を向けていましたもん」
「面白い子ですね、舞波昂くん。魔術を封じられても、すぐに対抗してくるとは。あの文哉さんが興味を持つはずです」
どこか抜けている文月の賛美に続いて、夕薙からの真摯な称賛。
昂はそれを見越した上で徹頭徹尾、自分自身のためだけに行動を起こす。
「決まっているであろう。偉大なる我の実力なら、貴様らに不意討ちを仕掛けたり、貴様らの魔術の封印を打ち破ることなど朝飯前だ!」
「なっ!」
「えっ? 昂くん、魔術の封印を打ち破ることができるの?」
意気揚々に語る昂の発言に、玄の父親と陽向は反応する。
図らずとも、ブラフをかける昂。
だが、当の本人は虚実をない交ぜにし、ハッタリを噛ませながら語り続けていた。
「黒峯蓮馬と黒峯陽向! 今から思う存分、我の凄さを知らしめてやるのだ!」
事情を察すると同時に、玄の父親は薄く目を細める。
まさに点と点が繋がったとばかりにーー。
「昂くん、魔術の封印を打ち破る手段を見出だしたとはどういうことだ?」
「むっ! ど、どういうことだ、だとーー!!」
玄の父親の懸念に、昂は拒絶するように両手を前に突き出す。
「わ、我もそんなもの知らーー否、我が言うはずがなかろう」
昂のたどたどしい答え方に、拓也は呆れた声でつぶやいた。
「何でそうなるんだ……」
「舞波は、どんな状況に追い込まれても変わらないな」
どこまでも前向きな昂の発想に、拓也と元樹は思わず辟易する。




