第三十三章 根本的に彼の確固たる強さ①
「むっ!」
昂は不可解な現象に目を見開いた。
魔術が使えない。
極大魔術をもとにした大がかりな魔術。
それは文月が操る魔術をもとにしたものだった。
『星と月のソナタ』。
この魔術が発現した場合、昂や輝明達は魔術の発動ができない。
元樹の魔術道具の発動さえも封じられてしまう厄介な代物だった。
それを大がかりなものにしたことで、この場にいる昂達全員に効果が及ぶ魔術になっていた。
極大魔術をもとにした大がかりな魔術はかなり厄介だな。
そんな不利な状況の中、元樹は戦局を変える突破口を開くために模索する。
だが、その思考を掻き消す声が会場内に響き渡った。
「我は納得いかぬ 何故、先程、我の魔術が発動しなかったのだ!」
昂は地団駄を踏んでわめき散らしていた。
理由は、文月の魔術によって、自身の魔術を封じられてしまったからである。
昂は陽向に対して、猛撃と魔術による攻撃を転じていた。
しかし、文月の魔術で魔術の発動を封じられてしまった影響で、逆に陽向から手痛い反撃を食らってしまったのだ。
「なるほどな」
昂と連携していた元樹は、状況を改善するために思考を走らせる。
魔術の本家の者達である由良文月の魔術をもとにした、極大魔術をもとにした大がかりな魔術。
昂達を翻弄するほどの効果。
加えて、文月達だけはこの魔術の効果が及ばない。
元樹のその疑問は論理を促進し、思考を加速させる。
そうして、導き出された結論は元樹が今の今まで考えもしない形をとった。
「魔術そのものが封じられるというのなら、こちらが魔術を発動させなかったら意味がないよな」
「なっ!」
「……っ」
予想外な真実を突き付けられて、拓也と綾花が目を見開く。
「確かに、そうですね~」
確かめるような問いをぶつけた元樹に対して、文月は不意を打たれたような顔をした後、すぐに平静を装った。
「でも、魔術なしで、私達に対抗するのは厳しいと思いますよ」
「我はそんなことはどうでもいいのだ!」
「……わぷ!?」
奇襲を仕掛けてきた第三者の声に、ようやく状況に気づいた文月は間の抜けた声を上げる。
強靭な猛撃の嵐が文月を後方へと吹き飛ばす。
「我の魔術を封じた罪は重いと知るべきだ!」
奇襲を仕掛けてきた存在ーーそれは戦意に満ち溢れた昂だった。
「素晴らしい、素晴らしいぞ、我の透視化の固有スキルによる猛攻は!」
期せずして始まった昂の語り口。
文月は躊躇いの色を滲ませたまま、身ぶり手振りで当たり散らす昂を見つめる。




