第三十二章 根本的にさよならの心⑧
「なっ!」
驚愕する文哉を穿つ玄の猛撃。
しかし、それだけではない。
大輝は文哉の動きに合わせて、必殺の連携技を発動させる。
『ネフェルティティ・ブレイク!!』
「ーーっ」
それはオンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』で大輝のキャラが使っている必殺の連携技。
大輝の必殺の連携技の発動に、文哉は更なる驚愕の表情を浮かべる。
もはや、玄達と文哉の戦闘は不可逆のものになっていた。
「このままでは一向に、『私達』が準備したーー極大魔術をもとにした大がかりな魔術が使えないな。ならーー」
文哉は誘うようにステージへと視線を投げかけた。その先にいたのはーー
「はあっ……、文哉さんは相変わらず、人使いが荒いですね。舞波昂くん達が行使した大がかりな魔術ーーオンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した極大魔術に対抗した上で、さらに舞波昂くんの魔力の真価を見極めたいなんて……」
「えへへ……、文哉さんのご期待に添えるように頑張りますね~」
口から突いた夕薙の苦言に、頬に手を当てた文月が上機嫌にはにかんだ。
「由良文月、神無月夕薙……」
「大がかりな魔術って、俺達の力に対抗できる力なのかよ!」
「それはもちろん、秘密です~。でも、今から使うからすぐにバレちゃいますね~」
髪を靡かせた文月は、駆け寄ってきた玄と大輝に対してにこやかに宣戦布告する。
「我の極大魔術に対抗できる、大がかりな魔術だと! ふむ、そんなもの、使わせるわけないではないか!」
「……わぷ!?」
猛襲を仕掛けてきた昂の声に、文月は間の抜けた声を上げる。
強靭な魔術の嵐と猛撃が、文月を後方へと吹き飛ばす。
「オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した極大魔術。実に面白いです。僕達も是非、使ってみたいですね」
昂が励起した魔力に、夕薙は不思議な感慨を覚える。
極大魔術の力を目の当たりにすることで、以前、黒峯家の屋敷で戦った時の熱い気持ちが蘇ってくるようだった。
戦いが深まるほど、徐々に形勢は傾いていく。
「とはいえ、この連携、キリがないですね。仕方ありません」
「むっ!」
夕薙が示した着眼点に、昂は訝しげに首を傾げてみせる。
「極大魔術をもとにした大がかりな魔術。ちょっと強引に使っちゃいますね~」
文月は手を掲げる。
極大魔術をもとにした大がかりな魔術を解き放つために。
「なっ!」
玄の父親は阻止しようと動くが、もう遅い。
輝明は改めて、周囲の状況から極大魔術をもとにした大がかりな魔術の現象を解析する。
「透明化の現象は、透視化の固有スキルか、由良文月の魔術をもとにした可能性が高い。大がかりな魔術も、それを応用したものかもしれないな」
「その余裕は認めねぇ」
吹っ切れたような言葉とともに、焔はまっすぐに文月達を見つめた。




