第三十章 根本的にさよならの心⑥
「ああ! 絶対に、俺達が勝ってみせる!」
連携を繋げる相手はあかりーー進。
進は車椅子を動かして、最速の必殺の連携技を放つ。
「なっ!?」
「うわあっ!」
『ーーアースブレイカー!!』
言葉とともに、車椅子を動かした進が間隙を穿つ。
瞬間の隙を突いたあかりの必殺の連携技。
固有スキルによって強化されたその必殺の連携技は、玄の父親と陽向の不意を突き、吹き飛ばす。
「三崎カケルくん……高野花菜さん……」
矢継ぎ早の展開。
それも出来れば対峙したくなかった相手を目の当たりにして、上半身を起こした玄の父親は明らかに顔をしかめた。
「何故、何度も私の前に立ちはだかってくるんだ……」
理解に最も程遠く。玄の父親の眸はまっすぐにカケル達を捉えてから拒絶を紡いだ。
「簡単なこと……」
「黒峯麻白さんの力になりたかったからです!」
カケルは花菜のその気概に促されて、自分のするべきことを理解する。
カケルは目を伏せて、目の前の相手に神経を集中する。
もう一度、戦いへと意識を向ける。
だが、これは逃げる為の戦いではない。
自分の過去に向き合う為の戦いだ。
そしてーー。
「私達の相手はあなただけじゃない。私達に立ちふさがる者達は全員、私達が倒す」
淡々と言葉を紡ぐ戦姫の名を冠した少女ーー花菜は、髪をかきあげて決定的な事実を口にした。
「私は黒峯麻白のためにーー輝明のために動く。だから、この場にいる相手の中で、もっとも黒峯麻白に危害を加える可能性があるあなた達は私達の相手」
「その相手の一人が、私ということか?」
玄の父親の言葉に、花菜は一瞬、息を呑んだように見えた。
無表情に走った、わずかな揺らぎ。
そして、無言の時間をたゆたわせた後で、花菜はゆっくりと視線を落とした。
「…‥…‥そう、思ってもらっていい」
花菜がそうつぶやくと同時に、花菜のキャラは大鎌を振りかざしてきた。
大鎌による嵐のごとき斬撃に、魔術の知識の防壁を張り巡らせていた玄の父親は辟易する。
「彼女達が……阿南家の者達が、この場に来たのは厄介だな……」
隠しようのない動揺を抑えるように、玄の父親は短く息を吐いた。
これで魔術の分家である阿南家は、玄の父親達と完全に敵対したことになる。
そしてーー。
「綾を完全に麻白にする魔術。それを無理やり行えば、綾や上岡の心だけではなく、麻白の心そのものが麻白ではなくなる危険性がある……」
元樹が反射的に視線を向けた先には、苦悩する玄の父親を見て心を痛める輝明の母親の姿があった。
「黒峯蓮馬がこれから行うことを止められるのはきっと、三崎カケルだけ……。そんな予感がします」
その輝明の母親の反応が、先程の元樹の言動を裏付けていた。




