第二十一章 根本的に真実の行方⑤
「汐、後は頼む!」
「うん、ダーリン」
綾花達の護衛を汐に任せると、1年C組の担任、岩木銀河は大会会場の床を蹴った。
そして、警備員達の前まで移動する。
その見え透いた挙動に、警備員達の反応が完全に遅れたーーその時だった。
銀河は警備員達に素早く接敵すると、多彩な技を駆使して次々と警備員達を倒していく。
次の瞬間、美里の目に映ったのは床に倒れ伏す警備員達の姿と、冷然と立つ銀河の背中だった。
「汐、魔術の影響でここから出られない。だが、阿南家の方々の力を借りれば、ここから出られるはずだ。瀬生と井上を連れて一度、安全な場所まで移動しよう」
「ダーリンの頼みなら、仕方ないっていうか」
きっぱりと告げられた言葉に、汐は恥じらうように頬を赤く染める。
「待ちなさい……っ!」
美里が倒れている警備員達を避けて怯んでいるその隙に、銀河と汐は、綾花と拓也に連れ添って観戦席へと駆け出した。
「……井上達は何とかなりそうだな」
その間にあかりはーー進は車椅子を動かしながら輝明と視線を合わせた。
「阿南、俺はみんなと一緒に黒峯蓮馬さんの魔術の対処に回るな」
「ああ、頼む」
ツインテールを揺らした進の呼びかけに、輝明は目を伏せて自身が使役する自動人形に目を向ける。
これは麻白を護るためだけの戦いではない。
魔術の妨害に屈せず、未来に羽ばたくための戦いだ。
「分身体を同時に出して、技を出せたらいいんだけど。なかなかコントロールが難しいんだよな」
進は、玄の父親がいる方向を向かって車椅子を動かしていく。
魔術の知識にどう対抗すれば、いいんだろう。
思考は堂々巡りで、一向に一つの意見に纏まってくれない。
その時、凛とした声が混乱の極致に陥っていた進を制する。
「どんな状況からでも諦めないのが、おまえ達、『ラ・ピュセル』の強さだろう。僕達も一緒に手伝ってやる」
「……ああ。阿南、ありがとうな」
輝明の激励に応えるように、進はこの上なく、嬉しそうな笑みを浮かべた。
「あかりちゃん、否、進。偉大なる我もすごく頼もしい存在なのだ!」
「おい、昂!」
昂は思わず触発されたのか、輝明の意思に張り合うように自身の意気込みを語る。
「我の真価が発揮されるのは、今この時なのだ!」
昂はそう叫ぶと、自らの武器を現出させる。
昂の手に現れたのは刀。
昂はそのまま、たん、と音が響くほど強く地面を蹴る。
「……わぷ!?」
次の瞬間、文月が認識したのは宙から刀を振り落とす昂の姿だった。
反射的に、文月は魔術の結界で受け止めようとしーー刀の刀先が結界を通り抜けるのを目の当たりにする。




