第十七章 根本的に真実の行方①
「死んだはずの雅山あかりを、昂くんの魔術で生き返させることができたのか……」
その報告を受けた玄の父親は、昂の魔術に着目する。
「魔術なら、麻白も生き返させることができるはずだ」
そこから、玄の父親は麻白を生き返させる手段として、魔術を主眼に据えた。
その経緯で、総合病院に訪れた玄の父親は車椅子に乗ったあかりを目撃してーー愕然とする。
死んだはずのあかりが、昂の魔術により生存している姿ーー。
その事実を目の当たりにした瞬間、玄の父親はそれまでため込んでいた、途方のない感情の本流に襲われた。
彼女のように、麻白にも戻ってきてほしい。
玄の父親はより一層、麻白を生き返させるために奔走する。
玄達の前に現れた頃には、玄の父親は既に心身が限界に達していた。
「玄、大輝くん、協力してくれないか?」
「協力?」
「どのような手段を用いても、私は麻白を生き返させたいんだ。既に、私は麻白を生き返させる方法を知り得ている」
玄達の驚愕に応えるように、玄の父親は嗜虐的に笑みを浮かべる。
確信を込めて静かに告げられた玄の父親の言葉は、この上なく玄達の胸を打った。
麻白を生き返させたいーー。
玄の父親のその願いは、まさに玄と大輝の願いそのものでもあったからだ。
麻白を生き返させる方法。
その一環として、自身が使える魔術の知識を用いる。
だが、麻白を生き返させるためには、それだけでは足りなかった。
だからこそ、玄の父親は同じ魔術に関わる家系で旧知の仲である輝明の母親のもとを訪れた。
「無理よ。あなたの娘を、魔術で生き返させることなんて。あなたの魔術の知識を用いても……」
「私の魔術の知識を用いれば、それは可能になるはずだ」
明らかな思考の飛躍があるのに、不自然な確信。
口元には笑みすら浮かべる玄の父親を見て、輝明の母親は不安を交じらせる。
だが、そのことに意識を割いている余裕はなかった。
玄の父親が輝明の母親に対して、大きな白いリボンを差し出してきたからだ。
麻白が、玄からもらった白いリボン。
それは後に、綾花が麻白として生きることになる要因ーー麻白の記憶操作が施されたリボンだった。
「むっ、何者なのだ! 突如、現れた、この偉そうな者は!」
輝明の母親を見た昂が、不本意とばかりに足を止める。
「おまえ、一度、会っているだろう」
「ああ」
そんな昂の反応を見て、元樹と拓也は呆れたようにため息をついた。
阿南家に行った時に、昂は輝明の母親と出会っている。
だが、魔術を誇示することに夢中で、周りが見えていなかった。
「……なっ!」
「まだ、時間が止まっているはずだよな?」
時が止まっているはずなのに、輝明の母親達がこの場を訪れているーー。
予め、魔術の話を聞いていたとはいえ、花菜とカケルは動揺の色が隠せなかった。
しかし、それは輝明も同様だった。




