第十六章 根本的に星の向こう側には⑧
『ーー焔華・鳳凰翔!!』
『ラグナロック』のチームリーダーである玄が、ここぞという時に放った土壇場での必殺の連携技を前にして、文哉は完全に虚を突かれた。
「なっ!」
驚愕する文哉を穿つ玄の猛撃。
しかし、それだけではない。
大輝は文哉の動きに合わせて、必殺の連携技を発動させる。
『ネフェルティティ・ブレイク!!』
「ーーっ」
それはオンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』で大輝のキャラが使っている必殺の連携技。
大輝の必殺の連携技の発動に、文哉は更なる驚愕の表情を浮かべる。
形勢は拓也達に傾いていた。
焔はさらに確証を強めるために、手の中の希望に全てを込める。
「それにしても来るのが遅いのは相変わらずだな。……ったく、阿南家の奴らは煩わしいこと、この上ねぇな」
「なっ!」
焔の突飛な発言に、玄の父親は虚を突かれる。
何故なら、焔の視線を追った先には、異質とも呼べる者達が姿を現していたからだ。
「……ったく、最高に気分がいいぜ! こうして魔術の本家の者達を出し抜くことができるんだからな!」
それは新たな力を得た綾花達が取れる最善の策。
そして、新たな助勢の到来の報せだった。
「黒峯蓮馬、お久しぶりですね」
「まさか、阿南家の当主である君までがこの場に赴いたというのか……?」
玄の父親は毅然と立つ輝明の母親と対面する。
「なるほど。君達がここに来るまで、この場にいる魔術の本家の者達が誰一人として気づかなかったのは君の力によるものか」
玄の父親は感嘆の吐息を零す。
会場内に張られている魔術の結界と同量の魔力を放出して通り抜ける。
魔術に行使する者達であれば周知の事実であるが、魔術を使えない綾花達には馴染みがない。
だが、会場内への侵入が成功する確率は高く、実際、有効であった。
久方ぶりの再会。
玄の父親と輝明の母親の胸を打つのは、あの日の光景だった。
「あなたが娘をーー麻白を生き返そうとしていることは、独りよがいの片思いと一緒よ」
そう言ったのは玄の父親の旧知の仲で、彼と同じ魔術に関わる家系の人間ーー輝明の母親だった。
「一番、変わるべきはあなたよ……」
輝明の母親を一瞥した玄の父親は、ゆっくりと笑みを作り上げてからーー表情を消した。
「それでも、私は麻白に戻ってきてほしいんだ……」
玄の父親は悔悛の表情を浮かべながら、輝明の母親に訴える。
それは魔術に纏わる話。
玄の父親が、麻白を生き返そうとしていた頃の話ーー。
息子とともに目の前で娘を失った玄の父親は、文字どおり我を忘れ、なりふり構わず、様々な手段を試みた。
科学的方法、蘇生、反魂、そして魔術。
やがて、玄の父親は、あかりが昂の魔術で生き返ったということを突き止める。




