第十五章 根本的に星の向こう側には⑦
「叔父さん」
「陽向くん、大丈夫だ」
陽向にそう応えながらも、玄の父親は次の手を決めかねていた。
昂と輝明達の魔術という特異性だけではなく、オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した極大魔術の力を巧みに使いこなしてくるカケル達も侮ることはできないと感じていたからだ。
だが、その声は静かに場を支配した。
「見るのはそちらだけか?」
「えっ……?」
輝明が発した瞬間的な言葉に、陽向は弾かれたように顔を上げる。
『竜牙無双斬!!』
最短で繰り出された輝明の必殺の連携技。
そしてーー。
「ゲームと魔術の概念なんて関係ない。全てを覆すだけだ!」
「魔術とゲームの技の併用。……へえー、面白いじゃねぇか」
輝明と焔は会話を交わすことで、次なる連携を察し合う。
「オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』の武器や技が使えるようになる魔術か」
「未知の魔術が使える輝明くんが、オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』の武器や技を使えるのは手強いね」
二人の立ち回りに、玄の父親と陽向は次第に追い詰められていく。
そこにいるのは、ただのプレイヤーではない。
どんな状況からでも決して負けない最強の剣豪。
綾花達が羨望の眼差しで見た『チェイン・リンケージ』のモーションランキングシステム内で二位のプレイヤー。
そして、魔術の分家、阿南家の当主の息子だった。
「魔術とゲームの技の併用だと! ふむ、それは我にもできるではないか!」
「……わぷ!?」
猛襲を仕掛けてきた昂の声に、文月は間の抜けた声を上げる。
強靭な魔術の嵐と猛撃が文月を後方へと吹き飛ばす。
「オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した極大魔術。実に面白いです。僕達も使ってみたいですね」
昂が励起した魔力に、夕薙は不思議な感慨を覚える。
極大魔術の力を目の当たりにすることで、以前、黒峯家の屋敷で戦った時の熱い気持ちが蘇ってくるようだった。
戦いが深まるほど、徐々に形勢は傾いていく。
「『オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した極大魔術』。想像以上に厄介極まりないな」
この場で何が起ころうとしているのか。
どのタイミングで、『極大魔術をもとにした大がかりな魔術』を使えばいいのか。
文哉は這い寄る魔術の気配に耳をそばだてていた。
「だが、戦う手段を得たとはいえ、私達の思惑を阻止することは君達にはできないはずだ」
魔力を励起した文哉は行く手を阻む玄達をねじ伏せる覚悟を固める。
「出来るのならな」
玄は静かな闘志を纏って大剣を手に地を蹴る。




