第十章 根本的に星の向こう側には② ⭐
『ラグナロック』は、『クライン・ラビリンス』に匹敵する力を持った、最強と称されているチームである。
オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』の公式サイト上で散々、噂されていたことは、結果的に事実となった。
ゲーム内でも……そして現実でも。
「出来るのならな」
玄は静かな闘志を纏って大剣を手に地を蹴る。
『ーー焔華・鳳凰翔!!』
『ラグナロック』のチームリーダーである玄が、ここぞという時に放った土壇場での必殺の連携技を前にして、文哉は完全に虚を突かれた。
「なっ!」
驚愕する文哉を穿つ玄の猛撃。
しかし、それだけではない。
大輝は文哉の動きに合わせて、必殺の連携技を発動させる。
『ネフェルティティ・ブレイク!!』
「ーーっ」
それはオンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』で大輝のキャラが使っている必殺の連携技。
大輝の必殺の連携技の発動に、文哉は更なる驚愕の表情を浮かべる。
もはや、玄達と文哉の戦闘は不可逆のものになっていた。
「……っ。魔術を連続で使う暇がないほどの連携攻撃。オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した極大魔術。これほど脅威なものとはな」
身体を起こした文哉はその答えを求めるように意識を高める。
「黒峯玄くん、浅野大輝くん。彼らのゲーム内の技は、実に興味深いものだった。それを現実で披露してくるのか」
文哉が咄嗟に口にした事実がどうしようもなくそれを証明した。
「黒峯蓮馬がこれからどう動いていくのか。もはや、魔術の力押しで対抗しても無駄なことは理解しているはずだが……。もしくは別の魔術を用いるつもりか……」
文哉が呟くその声音は、誰にも聞こえぬように魔術を伴う歌声となった。
それは彼にとって、一つの決意の表れであった。
「どちらにしても、要は黒峯麻白か」
文哉は綾花達へと視線を向ける。
「麻白達のもとには行かせない」
「ここで食い止めるからな!」
だが、そんな文哉の前に立ち塞がったのは玄と大輝だった。
「私の魔術を前にしても怯まないとは……。黒峯玄くん、浅野大輝くん、君達の力は素晴らしい」
昂達のように魔術を行使するわけではない。
元樹のように魔術道具を持っているわけではない。
だが、ゲーム内の技を忠実に再現して、文哉を翻弄してくる存在。
文哉は玄達の意思の強さに感嘆の吐息を零す。
「な、何だよ、それ?」
大輝は思わず、唇を噛みしめると、やり場のない苛立ちを少しでも発散させるために拳を強く握りしめる。
「怯むわけないだろう! 俺達には戦う手段がある。『極大魔術をもとにした大がかりな魔術』なんて使わせないからな」
如何に不明瞭な発言でも、大輝にとって答えはそれだけで事足りた。
黒峯蓮馬さんと黒峯文哉さんはまだ、オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した極大魔術に対処できていない。
問題はプロゲーマーである由良文月さんと神無月夕薙さんだな。
そんな状況の中、元樹は戦局を変える突破口を開くために模索する。
だが、その思考を掻き消す声が会場内に響き渡った。
「我は納得いかぬ!」
先日の黒峯家の屋敷の騒動と透明化された屈辱ーーその刹那を思い返して。
昂は地団駄を踏んでわめき散らしていた。
「我が必ず、綾花ちゃん達をーー麻白ちゃんを黒峯蓮馬達や魔術の本家の者達の魔の手から護ってみせるのだ! それなのに何故だーー! 何故、こんなことになっているのだ!!」
昂は頭を抱えて、虚を突かれたように絶叫していた。
まさに昂の心中は穏やかではない状況だった。
何故なら、先程から想定外な事態が起こっていたからだ。
「ひいっ! 綾花ちゃん、あかりちゃん、助けてほしいのだーー!!」
昂は悲痛な叫びとともに、魔術で彼らの動きを止めようとする。
しかし、彼らはそれを難なく避けると、ある一点の目的意識を掲げた。
「「「我らは舞波昂を捕まえて、極大魔術の維持を妨害しなくてはならぬ!!」」」
彼らーー昂の分身体達は同じ挙動で一斉に唱和する。
全ての昂の分身体達が昂めがけて一糸不乱に押しかけようとしていた。
「おのれ~。何故、また我の分身体達が勝手に現れて動き回っているのだ! 綾花ちゃん、あかりちゃん、今すぐ我を助けてほしいのだーー!!」
昂は防衛に撤しながらも、綾花達に何とかして助けを求めようとする。
助けを求められた綾花とあかりーー進は思わぬ現象を前にして困惑を示した。
「ふわわっ!」
「大変だ、井上、布施。大勢の昂が一斉にこちらに迫ってきている!」
「なっ!」
「これは!」
綾花達の視線を追った先には、まるで悪夢のような光景が広がっていた。
「「「舞波昂を捕らえるべきだ!! ついでに魔術書を手に入れるべきだ!!」」」
「我の魔術書はたとえ、我の分身体であっても渡さぬ!!」
昂の分身体達が総出で本物の昂に突撃してくるという怪奇な現象。
いつの間にか昂と昂の分身体達が魔術書を賭けて激しい攻防戦を繰り広げていた。
そこで、はたと一番気にしなくてはいけないはずの重大事に、拓也と元樹は思い当たる。




