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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術禁断編
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第六章 根本的に誰も知らない極大魔術⑥

「……戦う手段があるとはどういうことだ? 先程、舞波昂くんが行使した極大魔術に関連することなのか?」


目まぐるしく変わる状況の苛烈さに耐えかねた文哉が問いを投げかける。

さらに疑問を口にしようとして。


「見るのはそちらか?」


文哉にとって、予想外な彼の声は遅れて聞こえてきた。


「……なっ」


言葉とともに、一瞬で接近してきた玄が間隙を穿つ。

瞬間の隙を突いた玄の一閃に、ターゲットとなった文哉は驚愕する。

振り返ると、いつの間にか玄の手には大剣が現出していた。


「馬鹿な! 何もない場所から、剣が現れたというのか……!」

「玄だけじゃないからな!」

「なっ!」


大輝の前に突如、現れた武器ーー大鉈の存在はただでさえ八方塞がりな状況に泥沼と化す。

文哉は不可解な現象を目の当たりにしたように絶句する。


「大輝、俺達は麻白達と一緒に、黒峯文哉さん達が使おうとしている『極大魔術をもとにした大がかりな魔術』を阻止しよう」

「ああ。今の俺達なら、魔術に対抗できるだろうしな」


驚愕に満ちた文哉の反応を見て、玄と大輝は戦意を高めた。


「先程の現象はなんだ? それを見極める必要がある」


明確な脅威。

それを理解した文哉は思考を走らせる。


「どんな現象が生じているのかは分からないが、私達の思惑を阻止することは君達にはできないはずだ」


魔力を励起した文哉は行く手を阻む玄達をねじ伏せる覚悟を固める。


魔術による激闘。その攻防の最中、玄と大輝は今まで何もできない状況に歯噛みしていた。

しかしーー。


『ラグナロック』は、『クライン・ラビリンス』に匹敵する力を持った、最強と称されているチームである。

オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』の公式サイト上で散々、噂されていたことは、結果的に事実となった。


ゲーム内でも……そして現実でも。


「出来るのならな」


玄は静かな闘志を纏って大剣を手に地を蹴る。


『ーー焔華・鳳凰翔!!』


『ラグナロック』のチームリーダーである玄が、ここぞという時に放った土壇場での必殺の連携技を前にして、文哉は完全に虚を突かれた。


「なっ!」


驚愕する文哉を穿つ玄の猛撃。

しかし、それだけではない。

大輝は文哉の動きに合わせて、必殺の連携技を発動させる。


『ネフェルティティ・ブレイク!!』

「ーーっ」


それはオンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』で大輝のキャラが使っている必殺の連携技。

大輝の必殺の連携技の発動に、文哉は更なる驚愕の表情を浮かべる。

もはや、玄達と文哉の戦闘は不可逆のものになっていた。


「玄と大輝が力を貸してくれて良かった……」

「そうだな」


穏やかな表情で胸を撫で下ろす綾花を見て、拓也も胸に滲みるように安堵の表情を浮かべる。

すると両手を広げ、生き生きとした表情で綾花はさらにこう言う。


「たっくん、元樹くん、舞波くん、ありがとう!」

「ああ」

「うむ、全て極大魔術を行使した我の功績というものだ」


拓也と昂が頷くと、綾花は嬉しそうに顔を輝かせた。

その不意打ちのような日だまりの笑顔に、元樹は思わず見入ってしまい、慌てて今は戦いの最中だと目を逸らす。


「あ、ああ」

「元樹、輝明さん。魔術道具の強化をしてくれてありがとうな」


ごまかすように人差し指で頬を撫でる元樹に、拓也も続けてそう言った。


「あれって、オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』で、玄と大輝のキャラが使っている必殺の連携技だよね。もしかして、昂くんが行使した極大魔術って、オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』の武器や技が使えるようになる魔術なのかな?」


大輝達へと視線を向けた陽向は、思わぬ展開に目を丸くしている。


「おいおい、よそ見していていいのかよ!」

「うわっ!」


その間隙を突くように、接近した焔が暴虐の魔術を駆使してきた。

放たれたその膨大な魔力は陽向を大きく吹き飛ばす。


「……ったく、最高に気分がいいぜ! こうして魔術の本家の者達を出し抜くことができるんだからな!」


それは限られた戦力の綾花達が取れる最善の策。

戦う術を持たない玄達が編み出した秘策だった。

規格外の現象。

置かれた状況を踏まえたカケルと花菜は、玄と大輝とともに極大魔術について想像を膨らませる。

その結果、思いついたのは、オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した魔術だった。

陽向達も、プロゲーマーである魔術の本家の者達も、まさか玄達がゲーム内で使用している技を使ってくるとは思っていなかったはずだ。


「オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した極大魔術ってすごいね。でも、僕達には勝てないよ」

「はあっ? 詭弁じゃねえのか。それが事実だというなら証明してみせろよ!」


真偽を確かめる言葉とは裏腹に、焔は既にそれが可能な相手だということを認知していた。

陽向は今回、時間制限があるとはいえ、そもそもあらゆる攻撃が通じないのだ。


相手は魔術書に媒介している規格外の存在。


時間を稼ぐことができるかどうか。いや、それまで凌いで撤退に持ち込むことすらできるかどうかだ。

しかしーー


「上等だ」


焔は不敵に笑う。

オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』を想定した魔術の効果を受けているのは輝明達も含まれているのだからーー。

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