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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術禁断編
378/446

第三章 根本的に誰も知らない極大魔術③

魔術禁断編が最終章になります。

どうかよろしくお願いいたします。

「えっ……? 味方に ……うわっ!」


滑るように迫る爆炎。

閃光と共に駆け抜ける衝撃波。

想定内の魔術ーー加速の魔術を受けて、1年C組の担任は一気に踏み込む。

陽向がそれを確認した瞬間、いつの間にか1年C組の担任の蹴り足が陽向を捉えていた。


「……っ」


それでも陽向は、1年C組の担任の次撃を寸前でいなした。

1年C組の担任も怯まずに蹴りと拳のコンビネーションで攻め続けるが、陽向はそれを魔術の防壁で見切り、凌ぎ切る。


「これなら……っ!」

「むっ、我は決して負けぬ!」


1年C組の担任の連携の切れ間を的確に捉え、彼を打ち倒そうとした瞬間、閃光が両者の間に割って入ってきた。

汐のサポートを受けた昂が、陽向の動きを制したのだ。


「昂くんの先生達は、やっぱり手強いね」


陽向は次第に、昂による渾身の魔術、1年C組の担任と汐のコンビネーションに翻弄されていく。

時折、無理を強いる昂を休ませながら、1年C組の担任と汐は攻め続ける。


「相変わらず、昂くんは何を仕出かすのか分からないな……」


昂が行使した介錯のない魔術に、魔術の知識の防壁を張り巡らせていた玄の父親は辟易する。


あまりにも突拍子のない、昂の型破りな作戦が採用された結果。

魔術書の代わりに、強化された魔術道具を代替え品にして極大魔術を行使することになった。

極大魔術を使う準備が整った昂を目の当たりにして。


「昂くん達がこれから使う極大魔術。警戒しておく必要があるかもしれないな」


胸から溢れる気持ちをそのままに。

それは玄の父親が零した確かな想いの吐露であった。





ここは本来、『エキシビションマッチ戦』の授賞式が行われるはずだった会場。

しかし、今は魔術による戦いの場に成り代わっていた。


無辜なる世界から隔離され、秘匿されていたはずの魔術は今や多くの者達の目に晒されていたーー。


いずれ、魔術という存在が当たり前のものになるかもしれない。


言い知れないその予感は、もはや確信に近い。

昂が魔術を使う際に生じる危機は目に見えて増加していた。


魔術の家系ではないのに魔術を行使する存在、舞波昂。

破天荒な彼は世間から秘匿されていた魔術を使って、様々な問題を生じさせていた。


「舞波昂くんの魔力の源を突き止めて、彼の暴走を食い止めれば、魔術の存在はこのまま秘匿されるはずだと思っていた。だが、もはや手遅れかもしれないな。即急に大がかりな魔術を使う必要がある」


文哉は事実を噛みしめるように、拓也達に確固たる決意を示した。


「大がかりな魔術……」


それを聞いた拓也は複雑な心境を抱く。


「どういうことだ……?」

「大がかりな魔術って、どんな魔術なのかよ!」

「それはもちろん、秘密です~。でも、この場で使うことになるから、すぐにバレちゃいますね~」


髪を(なび)かせた文月は、駆け寄ってきた玄と大輝に対してにこやかに宣戦布告する。


「大がかりな魔術か」


輝明は玄達と文月達の対峙を垣間見ながら鋭く目を細めた。


「由良文月と神無月夕薙は、僕達の出方を待っている節がある。僕達の極大魔術の効果を見極めてから、大がかりな魔術を用いるかもしれないな」


輝明は改めて、周囲の状況から、先程まで昂を翻弄した魔術の現象を解析する。


「透明化の現象は、由良文月の魔術をもとにした可能性が高い。これから使う大がかりな魔術も、それをさらに応用したものかもしれないな」

「その余裕は認めねぇ。今度は容赦なく、この場で極大魔術を使わせてもらうぜ」


吹っ切れたような言葉とともに、焔はまっすぐに文月達を見つめた。


「魔術の本家の人達が使う大がかりな魔術……気になるな。でも、舞波は既に極大魔術を行使することができる状態だ」


元樹は昂を見据えて確固たる意思を示す。


「我は意地でも極大魔術を行使するのだーー!! そして、綾花ちゃんも、我の魔術書も渡さないのだーー!!」

「……騒がしい方ですね」


夕薙は魔術の焔を行使して、魔力を(たぎ)らせる昂へ叩きつけようとする。

それは一つだけ放たれていれば、昂を打ち倒すものだっただろう。

だが、魔術を使いこなせるのは昂だけではない。


「なっ……!」


突如、至近距離に現れた元樹。

魔術道具を用いた元樹が地面を蹴って、夕薙との距離を詰めてきたのだ。

思わぬ事態に、夕薙の動きに鈍りが生じる。

僅かではあるが、それが隙になる。

その隙を見逃すこともなく、元樹は声を張った。


「舞波、今だ!」

「むっ、分かっているのだ!」

「元樹くん、いつの間に……!」


予想外の行動を前にして戸惑う陽向とは裏腹に、元樹は冷静に昂へと視線を向ける。

まるで何かを待ち望んでいるように、昂の持っている魔術道具が明滅した。


「今こそ、我の極大魔術を食らうべきだ!」


昂は魔術道具を天に掲げる。

そして……元樹の言葉に応えるように、裂帛の気合いを込めて極大魔術を行使した。

玄達が勘案した現象をもとにした魔術を解き放つために。

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