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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術禁断編
376/446

第一章 根本的に誰も知らない極大魔術①

「これが『時間を停止する』極大魔術……」


文哉は玄の父親達が用いた極大魔術に驚愕する。

それでも永遠に枯れることのない想いを込めて。

文哉は自身の矜持を貫いた。


「大がかりな魔術か。黒峯蓮馬、それは私も準備している」

「……文哉。まさか、私達と同じ極大魔術を使うつもりなのか……!」


玄の父親が先程から感じていた言い知れないその予感は、今はもはや確信に近い。


「いや、違うな。『私達』が準備したのはーー極大魔術をもとにした大がかりな魔術だ」


文哉は誘うようにステージへと視線を投げかけた。その先にいたのはーー


「はあっ……、文哉さんは相変わらず、人使いが荒いですね。黒峯蓮馬さん達が行使した大がかりな魔術ーー『時間を停止させる』極大魔術に対抗した上で、さらに舞波昂くんの魔力の真価を見極めたいなんて……」

「えへへ……、文哉さんのご期待に添えるように頑張りますね~」


口から突いた夕薙の苦言に、頬に手を当てた文月が上機嫌にはにかんだ。


「由良文月、神無月夕薙……」

「大がかりな魔術って、やっぱり極大魔術なのかよ!」

「それはもちろん、秘密です~。でも、これから使うからすぐにバレちゃいますね~」


髪を(なび)かせた文月は、駆け寄ってきた玄と大輝に対してにこやかに宣戦布告する。


「由良文月は、カウンター式の地形効果を変動させる魔術を使う侮れない実力の持ち主だ」


輝明は玄達と文月達の対峙を垣間見ながら鋭く目を細めた。


「神無月夕薙は、地形変化による魔術によって相手を翻弄する。だが、由良文月の魔術は、相手からの魔術の発動によって効果を発揮するものだ」


輝明は改めて、周囲の状況から、先程まで昂を翻弄した魔術の現象を解析する。


「透明化の現象は、由良文月の魔術をもとにした可能性が高い。これから使う大がかりな魔術も、それを応用したものかもしれないな」

「その余裕は認めねぇ。今度は容赦なく、極大魔術を使うぜ」


吹っ切れたような言葉とともに、焔はまっすぐに文月達を見つめた。


文月が用いている固有スキル、『星と月のソナタ』。

それは舞台の改変とともに、対戦相手の位置を自由に変更できる固有スキルだった。

さらに変更した舞台には、対戦相手のみに施せる見えない壁を設置することができる。

先程、昂の動きを阻害したように、魔術でも同様の現象を引き起こせるのだろう。

文月と夕薙が行使する魔術は、オンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』で二人が使用する固有スキルに酷似している。

それは以前、元樹が推測したどおり、魔術の使い手達は自身が操る魔術を固有スキルに生かしている事に繋がっていた。


「陽向の魔術と魔術書の媒介。この二つがなくては、『時間を停止させる』極大魔術は使うことはできなかった。でも、実際は阿南家の人の力が必要だったんだよな。なら、今の俺達なら、極大魔術を使うことができるはずだ」


車椅子を動かしたあかりはーー進は言葉とともに、輝明達のもとへと移動した。


「俺には、どんな極大魔術が存在するのかは分からない。でも、『時間を停止させる』極大魔術が存在したんだよな。なら、他にも規格外な極大魔術が存在するはずだ」


置かれた状況から、進は推測を口にする。


「絶対にこの状況を打破してみせる!」


ツインテールを揺らした進のその気概に促されて、カケルは自分のするべき事を理解する。


俺は黒峯麻白さんのためにできることをしたいーー。


たとえ僅かな助力だとしても、カケルは麻白のために足掻きたい。

立ち止まって、後ろを向いて、『これまで』を積み重ねて。

でも、それは全部『これから』のためだから。停滞することとは絶対に違うからーー。


「輝明」


輝明を見つめるカケルの瞳には複雑な感情が渦巻いていた。


「頼む。俺達も協力させてほしい。黒峯麻白さんの力になりたいんだ」

「ああ、分かった」


カケルがそう告げた理由を慎重に見定めて、輝明は敢えて軽く言葉を返す。


「……規格外な現象。おまえ達なら、どんな現象を思い浮かぶか?」


瞬間的な輝明の言葉に、花菜は一瞬、表情を緩ませたように見えた。

無表情に走った、わずかな揺らぎ。

その揺らぎが、輝明の戦意を感じ取って。

そして、無言の時間をたゆたわせた後で、花菜はゆっくりと頷いた。


「……分かった。規格外の現象、考えてみる」


それとなく、視線をそらした花菜は、まるで照れているかのようにうつむいてみせる。


「規格外の現象か」

「どんな現象……ある……?」

「……難しいな」

「さすがに、いろいろとありすぎるだろう」


置かれた状況を踏まえたカケルと花菜は、玄と大輝とともに極大魔術について想像を膨らませる。

やがて、その上で纏まった考えーー現象を輝明に伝えた。

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