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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
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第九十六章 根本的に夜明けにさよならを⑧

「くそっ……。魔術の本家の者に目をつけられるような事をしやがって。何が極大魔術だよ……」

「むっ、決まっているではないか。極大魔術を用いて、我の魔力の素晴らしさを語り尽くす必要性があるからだ!」


焔の発言に対して、玄の父親達に協力している阿南家の者は不満を漏らす。

だが、自身に言われたと勘違いした昂は傲岸不遜な態度で率直な意見を述べる。


「素晴らしさ……本当にそうなのか?」


拓也が抱いた疑問に応えるように、元樹は推測を確信に変えた。


「いや、舞波のことだから出任せを言っている可能性が高いな」


確信を込めて静かに告げられた元樹の問いは、玄の父親達に協力している阿南家の者へと向けられる。


「な、何なんだ……こいつは? 何で突然、会話に入ってくるんだ? 全ての元凶はおまえだろう」


昂は勇住邁進の精神。

危うく昂のペースに流されそうになるが、声を上げて踏みとどまる。

それでも彼は想像の斜め上をいく昂の答えに驚愕していた。


「黒峯家の人達でも、阿南家の人達でも舞波の突飛な行動を読むのは相当難しいだろうな」


元樹は戸惑いを振り払うように、玄の父親達に協力している阿南家の者の動向に注視した。


阿南家の一人が、玄の父親達に協力している。


しかしーー少なくとも元樹達にとっては驚愕であるその光景に、輝明と焔は然したる興味を示さなかった。


「僕達も、極大魔術のとっておきをやる。どんな極大魔術が存在するのかは、想像を膨らませるしかないな。魔術の知識の使い手達。僕達より先手を取ったことを後悔させてやる」


意思を固めた輝明はその顔に確かな決意の色を乗せた。

そして、自身が描く想いを幻視する。


「輝明、絶対に勝てよ。輝明は俺が唯一、認めた仕えるべき主君なんだからよ。極大魔術のぶつかり合いで、あいつらに押し負けたら話にならないぜ!」


焔は心中で主君である輝明に忠誠を誓いながらも、その表情は凶悪に笑っていた。


「全てを覆すんだろう? なら、輝明、俺にーー世界にその全てを見せてみろよ。てめえはなんせ、俺が唯一、認めた主君、『アポカリウスの王』なんだからよ」


焔は不敵に笑う。

自身が掲げた理想を成すその日を夢見てーー。

輝明の力が開花すれば、魔術の分家である阿南家の存在を、他の魔術の家系にーー世間に認めさせることが出来るかもしれない。


たとえ、魔術による大きな戦いの火蓋が切って落とされたとしてもーー。


心が凍りつくような感触のまま、焔はその推測が現実に変わることを確信していた。

極大魔術同士がぶつかり合う。

まるで長き、永き封印から解き放たれたように、焔は両手を広げて天井を仰いだ。

主従関係を結んでいる二人が交わした誓い。

その宣誓はまもなく芽吹かせる事になるだろう。


「魔術の本家の奴らの虚を突くのは俺達、阿南家の役目だ! 誰にも邪魔はさせねえ!」


最早、焔は寸毫として迷わなかった。

玄の父親達に協力している阿南家の者がいるとしても、魔術の本家の者達と改めて、向き合う覚悟を決める。


「魔術の本家の者が、阿南家の者が、俺達を妨害してきたとしても関係ねえ! 俺は阿南家の存在を、魔術の本家の者ども、他の魔術の家系の者どもにーー世間に認めさせたいんだ……!」


理想を心に、けれど歩む道は実力が十分に伴っていないと進めない。

全てを成し遂げるためには、己の掌は余りにも小さ過ぎるのだと知っている。

だからこそ、焔は期待を込めた眼差しで主君である輝明を見つめた。

魔術の本家の者達。

舞波昂に関わっていけば、これからも対峙していくはずだ。

そんな大層な者達、俺達で蹴散らしてやるぜ。これは俺達なりの魔術の本家の者達に対する意地だ。


憎まれ役なら買って出てやるぜ。

……なにしろ、輝明の魔力は、あの黒峯蓮馬と黒峯陽向なんかよりも上なんだからよ。


焔は先程、輝明の力の加護によって、綾花に生じた奇跡を思い起こして歓喜する。

まるで焔の竜が長き、永き封印から解き放たれたようにーー。

焔は確固たる意思とともに両手を広げて空を仰いだ。






輝明と焔が決意を新たにしていた頃ーー。


「むっ! それは解せぬぞ!!」


昂は両拳を突き上げながら地団駄を踏んでわめき散らしていた。


「黒峯陽向が『時間を停止する魔術』という極大魔術というものを使うためには、我の魔術書を消滅させる必要があるではないか! 極大魔術を使うための代償が、我の魔術書という事実は許し難い行為なのだ!」


憤慨に任せて、昂はひとしきり陽向のことを罵った。ひたすら考えつく限りの罵詈雑言を口にし続ける。


「……おのれ、黒峯蓮馬と黒峯陽向め。我の魔術書を消滅させた元凶は断じて許せぬ。意気込んでいられるのも今のうちなのだ」

「舞波昂くん、何か企んでいそうですね~」


昂と文月による、何度目かの交錯。

戦況は文月へと有利に傾いていた。

それでも腕を組んでほくそ笑んでいる昂を見て、文月は楽しそうに微笑んだ。

次話から「魔術禁断編」に入ります。

どうかよろしくお願いします。

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