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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
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第八十六章 根本的にこの想いがこの姿とともに消えてなくなるまで⑥

「玄、大輝!」

「ああ」

「よし、場所の特定なら任せろ!」


ツインテールを揺らしたあかりのーー進の呼びかけに、玄と大輝は申し合わせたように駆け寄る。

進は玄達と合流すると意識を集中して、昂の声が聞こえる位置を共有した。


「父さんがここにいるのか」

「どこにも姿が見当たらないなんて、不思議な感じがするよな」


進が示した情報を頼りに、玄と大輝は玄の父親がいる場所を見当つけていた。


「輝明、あかり……」

「何かあったのか……?」


花菜とカケルも、輝明と車椅子を必死に動かしていたあかりーー進の様子から状況が変化していることを感じ取っていた。


「ああ」


輝明自身はそれで説明責任を果たしたと言わんばかりの表情をしていたが、花菜もカケルも視線をそらしていなかった。

二人のリアクションに、あかりが――進が輝明の代わりに戸惑いの眸を湛えて応える。


「ようやく、場所が分かったんだ」


進の悲痛な想いに呼応するように、輝明は肯定した。


「ああ。魔術の知識の使い手の場所が判明した。すぐにでも、あかりとともに透明化を打ち破るとっておきをやるしかないな」

「輝明。この状況で、俺達にもできることはあるのか?」


カケルの疑問は、輝明からすれば愚問だった。


「どうして何もできないと思った?」

「……透明化が不可解な事象だったから」

「うるさい!」


苛立ちの混じった輝明の声にも、花菜は淡々と表情一つ変えずに続ける。


「それでも、絶対に阻止してみせる」


それとなく、視線をそらした花菜は、まるで照れているかのように俯いた。


「気になるのなら、動向を見守ればいい。……透明化を打ち破った後なら、相手も動きが制限されるはずだからな」

「……動向か」

「……意表を突いてみせる」


断定する形で結んだ輝明の言葉に、鬼気迫るものを感じ取ったカケルと花菜は動向を見守る。


「まずは黒峯蓮馬さんが使った魔術の知識による透明化の魔術を元にした魔術道具の強化、頼むな」

「はい」


元樹の隣には桜色の髪の少女ーー輝明が使役する自動人形(オートマタ)が佇んでいる。


「同じ魔術か。魔術の知識による透明化の解除も、魔術道具の強化バージョンなら効果があるかもしれないな」


元樹が反射的に視線を向けた先には、対峙する昂と陽向の姿があった。


「黒峯蓮馬と黒峯陽向。今度こそ、我の凄さを知らしめてやるのだ!」


臨戦態勢となった昂は陽向へと視線を注ぐ。


「昂くん、随分、やる気に満ち溢れているね」


陽向は滑らせる視線の果てには焔と夕薙が交戦している。


「こういう時、お互いに極大魔術を使えたら楽しそうだね。でも、輝明くんも焔くんも、僕達に力を貸してくれなさそうからね」


陽向は牢乎たる志を持って告げた。


「僕と昂くんがもし、この場で極大魔術を使えるようになったら、極大魔術同士の撃ち合いも実現するかもしれないね」


陽向が口にした仮定ーーそれは名状しがたい惨状の呼び水になりかねない。


「輝明さんと焔さんは今回、俺達に力を貸してくれている。輝明さんと焔さんの力を借りれば、恐らく舞波は極大魔術を行使することができるはずだ」


元樹は輝明達を見据えて確固たる意思を示す。


「……とはいえ、舞波がそんな危険な魔術を行使したら、大変なことになりそうだな」

「ああ、大惨事になりそうだな」


陽向が口にした思わぬ直言に、拓也と元樹は戦々恐々とした。


「むっ! それは解せぬぞ!!」


昂は両拳を突き上げながら地団駄を踏んでわめき散らしていた。


「黒峯陽向が『時間を停止する魔術』という極大魔術というものを使うために、我の魔術書が消滅させられたではないか! 極大魔術を使うための代償が、我の魔術書という事実は許し難い行為なのだ!」


憤慨に任せて、昂はひとしきり陽向のことを罵った。ひたすら考えつく限りの罵詈雑言を口にし続ける。


「……おのれ、黒峯蓮馬と黒峯陽向め。我の魔術書を消滅させた元凶は断じて許せぬ。意気込んでいられるのも今のうちなのだ」

「昂くん、何か企んでいそうだね」


昂と陽向による、何度目かの交錯。

戦況は陽向へと有利に傾いていた。

それでも腕を組んでほくそ笑んでいる昂を見て、陽向は警戒するようにつぶやいた。


「完全復活した我に不可能はない」


昂の自信に満ちた態度に、陽向は違和感を感じ、警戒を強める。


「昂くんは不可能だらけのような気がするけれど?」

「貴様に話す必要はない」


疑惑の視線を送る陽向に、昂は腰に手を当てると得意げに言う。


「何度聞かれようと、偉大なる我も極大魔術というものを、是非とも使ってみたいということは口を裂けても言わないのだ!」

「……そうなんだね」


これ見よがしに昂が憮然とした態度で言うのを聞いて、陽向は苦虫を噛み潰した表情を浮かべた。

実際に昂がそんな強大な魔術を行使したら、大変な状況に陥っていただろう。

少なくとも、大会会場は灰塵に帰していたはずだ。

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