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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
358/446

第七十九章 根本的に君との終わりは見えなくてもいい⑦

『こうなったら魔術の本家の者達の妨害に屈せず、何が何でも我の存在を猛烈にアピールするべきだ!』


昂はあくまでも自身の考えを正当化する。

そして、それを妨害しようと試みる魔術の本家の者達に対しては徹底抗戦の構えを取る姿勢を見せた。


しかし、何故、未来の支配者たる我が透明化などと、このような不当な扱いを受けねばならぬのだ。


昂は身から出た錆だという指摘が上がりそうな思考を走らせる。


『……だが、我の真価が発揮されるのは今、この時なのだ!』


それだけで昂が胸に灯した決意が、揺るぎない覚悟によって導き出されたものであることが伝わってくる。


「昂。俺達はどんな状況にも負けないからな」

「ここに舞波がいるんだな」

「はい、恐らく……」


あかりにーー進に導かれて、元樹と桜色の髪の少女ーー輝明が使役する自動人形(オートマタ)が颯爽と昂のもとに迫っていたからだ。


「……それにしても、昂の声は会場全体に響き渡っているのに姿は見えないなんて、なんか変な感じだよな」


進は声がする方向を探って車椅子を動かしていく。

そして、改めて不可解なこの現象を疑問に思う。


「どうして俺だけ、昂の声が聞こえるんだろう」


進はその喜怒哀楽に富む巨大な昂の様子を想像しながら、困惑した表情で天井を見上げていた。


「強化された魔術道具で、舞波が元に戻ることを願うしかないな」


その頃、魔術道具を握りしめた元樹は一縷の望みをかける。


「強化された魔術道具で巨大化が元に戻ることが立証されれば、透明化も元に戻すことが可能なはずだ」


輝明は元樹達のその気概に促されて、自分のするべきことを理解する。

輝明は目を伏せて、自身が使役する自動人形(オートマタ)に神経を集中した。

そしてもう一度、魔術道具を強化することへと意識を向ける。

だが、これは昂の巨大化と透明化を解除するためだけの戦いではない。

魔術の妨害に屈せず、『エキシビションマッチ戦』を勝ち進むための戦いだ。

そんな輝明達の様子を、文哉は値踏みするように見ていた。


「魔術道具の強化か。阿南家の者達は極大魔術を使えるようにするような力を持っているはずだ。それを見極める必要がある」


明確な脅威。

それを理解した文哉は思考を走らせる。


「時を止める極大魔術。彼らはあの黒峯蓮馬と黒峯陽向だけではできないことを成し遂げてみせた存在だ」


文哉は黒峯家の会合の際に、玄の父親からその事実を聞き及んでいた。

だからこそ、阿南家の未知の力を知っている。

破天荒な昂と同様に、決して甘くみてはいけない相手だということを。


「今すぐ、舞波の巨大化を元に戻してくれないか!」


元樹は咄嗟に魔術道具をかざすと、決意を込めた声でそう告げた。


魔術道具の強化か……。


輝明は改めて、その言葉の意味を問い直す。


この状況を覆すためにできることか。


元樹が求める魔術道具の強化を行うために、輝明は自身が使役する自動人形(オートマタ)に神経を集中する。

身体を打つ魔力の流れが熱を引かせ、周囲を包む乱戦の音は彼の心を鎮めていく。

輝明の想いに同調するかのように、桜色の髪の少女は元樹の隣に並び立った。


「黒峯家、由良家、神無月家。魔術の本家であっても関係ない」


魔術の本家の者達に抱く、綾花達の心の迷い。

そこを突くように、輝明の真剣な表情が一瞬で(みなぎ)る闘志に変わる。


「僕達は、僕達の役目を果たす。それだけだ」


そう告げる輝明の口調に、綾花達が抱いていたような逡巡や不安の揺れはない。


「役目を果たす……」


それに応えるように、桜色の髪の少女は元樹がかざした魔術道具に向かって手を伸ばす。


『むっ……』


すると、極限まで巨大化していた昂はみるみるうちに小さくなっていく。

やがて、魔術道具の放った光が消えると、昂は元の大きさに戻っていた。

陽向は視線を巡らせて、奮闘する元樹達に忠告する。


「うーん。ねえ、元樹くん。今の状況は麻白が本当の意味で麻白になる魔術を使う絶好のチャンスーー」

「だろうな」


語尾を奪い取ったのは、いつの間にか急接近していた1年C組の担任だった。


「うわっ……!」


1年C組の担任による拳打。

攻撃手段が魔術でないため、跳ね返すことが出来ない陽向は次第に翻弄されてしまう。


「布施、阿南、ここは任せろ!」

「ダーリン、こちらは任せて!」


元樹達が足元をすくわれないように、1年C組の担任と汐はサポートに回る。

互いの虚を突くような一撃はないものの、1年C組の担任と汐が前衛に立つことで、元樹達は魔術の直撃という危険を回避していた。


「……昂くんの先生達は、やっぱり手強いね。何だか戦いにくくなってきた」


魔術の攻撃準備に陽向が入ったその瞬間、1年C組の担任と汐が同時に突貫する。

1年C組の担任は陽向の間合いに跳び込むと、即座に鋭い蹴りを叩き込む。


「……っ。この攻撃、まともに受けたら、すごく痛そうだね」

「効いていないのか……!」


怒涛の連打。

その最後の蹴りを間一髪で難を逃れた陽向は、多彩な1年C組の担任と汐の攻撃方法に称賛の吐息を漏らす。

玄の父親は魔術の知識を用いて、陽向の魂を魔術書に媒介して顕在化させている。

今回は顕在する際の時間制限があるとはいえ、体力も魔力も尽きる気配がないーー。


「なっ!」

「……厄介だな」


今の陽向は少なくとも、拓也と元樹が畏怖に値する敵ではあった。

躊躇していては危険だと即断させる魔力を秘めている。

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