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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
356/446

第七十七章 根本的に君との終わりは見えなくてもいい⑤

昂は臨戦態勢を解くこともなく、玄の父親との戦闘を踏襲する。

昂が巨大化の魔術を使おうとしたその時、あかりの姿が目に止まった。


『おおっ、あかりちゃんではないか!』


昂はあかりのーー進の姿を目の当たりにすると、ぱあっと顔を華やかせた。


『あかりちゃんにはーー進には我の声が聞こえるのだな! ならば、話は早い。この魔術の力を立証するためにも、今から我が大きくなってみせるのだ!!』


率直極まりない昂はどこまでも無謀無策、向こう見ずなことを次々と挙げていく。


『あかりちゃん、見るのだ! これが大きくなった我ーー』

「あのな、昂!」


居丈高な態度で今、まさに実行に移そうとしていた昂を、進は視線を巡らせながら必死に引き留めた。


『あかりちゃんに頼まれても、こればかりは譲れないのだーー!! 我は意地でも巨大化を成し遂げてみせる!!』

「おい、昂! ステージで暴れるなよ!」


ところ構わず当たり散らす昂の姿を想像して、進が困り顔でたしなめる。

そんな中、予想以上の昂の巨大化の魔術への執着心を目の当たりにして、玄の父親は眉根を寄せた。


『昂くんの行動には一貫性がないな』


昂は先程まで玄の父親達との戦いにこだわっていたというのに、今はすっかり巨大化の魔術を実行することに目を向けている。

自身の欲求に従い、すぐに目移りしてしまう昂。

相変わらずの昂の行動理念に、玄の父親は額に手を当てて呆れたように肩をすくめた。


『もし、このまま巨大化の魔術を行使したら、『エキシビションマッチ戦』どころではなくなるかもしれないな』


想像するに難くない事実を前にして、玄の父親は困ったように表情を雲らせる。


『しかし、何故、上岡進くんには昂くんの声が聞こえるんだ』


玄の父親が不可解そうに疑念を呈したところで、輝明は率直な疑問を口にした。


「あかり、何かあったのか?」

「実はーー」


車椅子を動かした進は輝明に事の次第を説明する。

それを聞いた輝明は表情を明確に波立たせた。


「巨大化の魔術、か。どのくらいの目安で大きくなるんだ?」

「うーん、それは分からないな……」

「際限なく巨大化する。それは会場内に収まりきれなくなるほど、巨大化する腹つもりじゃないのか?」


戸惑いながらもそう返す進だったが、輝明もまた疑問を返す。


「昂のことだから、そうだと思うな」


当然の懸念を抱いた進に対して、輝明は率直な意見を口にした。


「なら、その思い込みを利用すればいい」

「ーーっ」


挑発的な言葉なのに、少しも笑っていない。

進の隠しようのない驚愕に、輝明は短く息を吐いた。


「向こうも、僕達と同じ懸念を抱いているはずだ。なら、それに興じて透明化を解除すればいい」


その声は静かに場を支配した。

進達を取り巻く周囲の空気が変わる。


「罠を打ち破るとっておきをやる。魔術の知識の使い手達が巨大化の魔術に目を向けている間、僕達は透明化を解除するために、徹底的に動いていけばいい」

「ああ、そうだな」


静かな言葉に込められた有無を言わせぬ強い意思。

輝明の凛とした声に呼応するように、進は決意を新たにした。

巨大化の魔術を行使して透明化を解除する。

あまりにも突拍子のない、昂の型破りな作戦。

だが、この状況に置いて有効な手段の一つのようにも思えた。

それを成し得るために、進は前持って抱いていた推測を口にする。


「もしかしたら透明化を解除する方法は、昂の存在感を強めたり、同じ魔術を使うとかかもしれないな」

「同じ魔術か」


進が示した推論に、輝明は観客席にいる文哉の姿を目で追った。

以前、昂が様々な思惑で駆使した魔術の数々は同じ魔術で解除されるものが多かった。

今回も同様に透明化の魔術をもう一度、使ったら解除されるかもしれない。

そこで1年C組の担任と汐が駆け寄ってきた。


「舞波がここにいるのか?」

『ーーおおっ、先生ではないか! 先生も刮目するべきだ! 我はここにいるのだ!』

「ああ。先生、実は……って、おい、昂!」


昂の感極まった歓喜が、進達に1年C組の担任と汐の到来を伝える。

それと同時に、昂の不意を突くような魔術が容赦なく行使された。






ステージで繰り広げられている戦いは今、どうなっているのか。

そして、文哉達の虚を突き、透明化を解除するための方法を見極めるにはどうしたらいいのか。


まずは舞波の居場所を突き止めよう。


元樹が拓也達に提案したのは、あくまでもなりふり構わない直接的な手段だった。

しかし、それは想像していた以上に難解で厄介極まりない状況に追い込まれただけだということを、拓也は痛感させられていた。


「舞波が……巨大化したのか……」


綾花とともに会場内を立ち回っていた拓也は、あかりーー進からの伝達で、それを嫌というほど実感することになった。


『我は、我の存在を知らしめるのだ!』


玄の父親達の目の前には巨大化した昂。

際限なく巨大化した結果、昂は天井を突き破っていた。

ただ、不幸中の幸いか、透明化の影響は維持されていたため、大会会場の破損には至らなかった。

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