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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
339/446

第六十章 根本的に明日の話をしよう④

入場したプロゲーマー達に降り注ぐ声援は鳴り止まない。


「さあ、私達を楽しませてくださいね~」


応援してくれる観客達に、楽しいと感じてもらうために。

そして、ギリギリのバトルを楽しみ切るために。

文月の穏やかな声と笑顔が、まるで花のように咲く。


「由良文月さん、神無月夕薙さん……。魔術の本家の人達が本当にプロゲーマーなんだな」


その光景を見つめていた拓也が不安を吐露する。

事実を予め知っていたとはいえ、実際に目の当たりにすると重く感じた。


「プロゲーマー全員を制覇するのは厳しいだろうな」


拓也はドームのモニター画面に表示されている『エキシビションマッチ戦』の先鋒から大将までの組み合わせ表を見やる。

『エキシビションマッチ戦』の舞台で戦うプロゲーマー。

そのうちの一人の名前を見た瞬間、綾花は息を呑んだ。


倉持(くらもち)のどかさん……。倉持さんのお姉さん……」

「綾花、知っているのか?」

「うん……。進として何度か会ったことがあるの……」


拓也の抱いた疑問に呼応するように、綾花は眸に不安の色を滲ませる。


倉持ほのか。

進のクラスメイトだった少女で、今も行方不明になった進を探している。

進は以前、ほのかの紹介でプロゲーマーであるのどかに会ったことがあった。

もっとも今回の『エキシビションマッチ戦』に出場してくるとは思わなかったのだがーー。


進と麻白の心を宿してから魔術による争奪戦、という極大まで広がった問題。

文字どおり、怒涛の日々を送っていた綾花は躊躇うように息をつく。


「元樹。そういえば、『エキシビションマッチ戦』は四対四の引き分けだった場合はどうなるんだ?」

「その場合は、大将戦の勝敗で決まるみたいだな」


ふと湧いた拓也の疑問に、元樹は厳かな口調で応えた。


「大将戦の勝敗か。つまり、輝明さん達がプロゲーマー達に勝利するためには大将である由良文月さんに勝つ必要があるんだな」

「ああ。でも、上岡はーー雅山は『エキシビションマッチ戦』を制覇するつもりみたいだな」


『エキシビションマッチ戦』でプロゲーマー全員を制覇するのは困難極まりない。

だが、元樹はやる気を漲らせている進ーーあかりの姿を見て表情を和らげた。

見れば、もうまもなく先鋒戦のバトルが始まろうとしている。

激しい対戦を予感させる中、熱狂の渦に包まれた会場内で存分に不満を垂れている者がいた。


「我は納得いかぬ!」


先日の黒峯家の屋敷の騒動と反省文の提出ーーその刹那を思い返して。

昂は地団駄を踏んでわめき散らしていた。


「我が必ず、綾花ちゃん達をーー麻白ちゃんを黒峯蓮馬達や魔術の本家の者達の魔の手から護ってみせるのだ! それなのに何故だーー! 何故、こんなことになっているのだ!!」


昂は頭を抱えて、虚を突かれたように絶叫していた。

まさに昂の心中は穏やかではない状況だった。

何故なら、昂が会場内に入ってから想定外な事態が起こっていたからだ。


「ひいっ! 綾花ちゃん、助けてほしいのだーー!!」


昂は悲痛な叫びとともに、魔術で彼らの動きを止めようとする。

しかし、彼らはそれを難なく避けると、ある一点の目的意識を掲げた。


「「「我らは『舞波昂という存在』を徹底的に調べ尽くすべきだ!!」」」


彼らーー昂の分身体達は同じ挙動で一斉に唱和する。

全ての昂の分身体達が昂めがけて一糸不乱に押しかけようとしていた。


「おのれ~。何故、また我の分身体達が勝手に現れて動き回っているのだ! 綾花ちゃん、今すぐ助けてほしいのだーー!!」


昂は防衛に撤しながらも、綾花に何とかして助けを求めようとする。

助けを求められた綾花は思わぬ現象を前にして困惑を示した。


「ふわわっ。た、たっくん、元樹くん、どうしよう?」


予想外の光景を目撃した綾花は躊躇うようにつぶやいた。


「なっ!」

「これは!」


綾花の視線を追った先には、まるで悪夢のような光景が広がっている。

あまりにも想定外なことが起こると人は唖然としてしまうものだが、綾花達はまさに自分の目を疑った。

そこには綾花達にとって、あまりにも想定を超えた現象が広がっていたからだ。


「「「舞波昂の妨害に徹するべきだ!! ついでに魔術書を手に入れるべきだ!!」」」

「我の魔術書はたとえ、我の分身体であっても渡さぬ!!」


昂の分身体達が総出で本物の昂に突撃してくるという怪奇な現象。

いつの間にか昂と昂の分身体達が魔術書を賭けて激しい攻防戦を繰り広げていた。

そこで、はたと一番気にしなくてはいけないはずの重大事に拓也と元樹は思い当たる。


「こ、これって、まさか」

「……ああ。恐らく舞波の分身体達が暴走しているんだろうな」


鬼気迫る昂の集団を前にして、事態を把握した拓也と元樹は呆気に取られてしまう。


「どうやら早速、仕掛けてきたみたいだな」


元樹は警戒するように視線を周囲へと走らせた。

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