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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
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第三十六章 根本的に阿南家が選ぶ道標④

昂の家から帰宅した後、拓也達は改めて輝明の家に行く段取りを進める。

阿南家の屋敷に行く当日、拓也は綾花達と連絡を取って落ち合う時間を決めた。

だがーー


「……ここか」


輝明の家の前に立った拓也は自分でも分かるほど、狼狽を顔に漂わせる。

その理由は至極単純なことだった。

拓也達が赴いた輝明の家はまさに毒気を抜かれるほどの壮麗な屋敷だったからだ。


「輝明さん達が暮らしている屋敷は相変わらずすごいな」

「魔術の家系の人達は住んでいる場所も、使える施設も想定外だよな」


冗談のような広さの屋敷を前にして、拓也だけではなく、元樹も目を大きく見開き、驚きをあらわにする。

だが、拓也達はそれを遥かに凌ぐ現象を間近で目の当たりにしていた。


「おまえは一体、何がしたいんだ?」


拓也はわなわなと拳を強く握りしめながら率直な疑問を投げかける。


「ううっ~」


その背後で、綾花は身を縮めながらも僅かに不安そうにーーだけど、それに触れたいという想いを眸に堪えていた。

拓也は不満そうに額に手を当てると薄くため息をつく。


「何故、そんな格好でここにいる?」


拓也の呼びかけに、その人物ーー昂はこの上なく不敵な笑みを浮かべながら答えた。


「前に告げたであろう! 我が必ず、綾花ちゃん達をーー麻白ちゃんを黒峯蓮馬達や魔術の本家の者達の魔の手から護ってみせると!」

「……そういうことじゃない」


居丈高な態度で大口を叩く昂に対して、拓也は毅然とした態度で言い直した。


「何故、また、そんな格好で阿南家の屋敷の前にいるんだ!」


拓也の目の前で腕を組んでいる昂はいつもの私服や黒いコート姿ではなく、何故かペンギンの着ぐるみを被っていた。


「決まっているではないか! 我の影武者達が再び、反乱を起こした原因が分からずじまいだったのでな。我の居場所を特定させないためのカモフラージュというものだ! それに久しぶりに綾花ちゃんの好きなペンギンの格好をしたかったからな!」


昂は自身の主張を強調するように、綾花に向かって無造作に片手を伸ばす。

昂の物言いは相変わらず、尊大不遜な態度が際立っている。


「つまり、おまえは阿南家の屋敷に入っても、その姿でいるつもりなのか?」

「もちろんだ!」


拓也の懸念材料に、昂はますます誇らしげに胸を張った。

昂はまるで己を奮い立たせるように自身の弁を継げる。


「このペンギンの姿でならば、魔術の本家の者達や警察の目を欺くことなど容易いであろう! なおかつ、阿南家の者達も我の存在に疑懼(ぎく)の念を抱くことはなかろう!」

「別のことで、頭を悩ませる可能性は高いけれどな」


昂はペンギンの着ぐるみを身に纏ったまま、拳を振り上げてやる気を(みなぎ)らせる。

拓也が口にした忠告など、昂はどこ吹く風だ。


「そんなことよりも綾花ちゃん。あの時の件を解決に導くためにも、あの阿南輝明という者達と合流して阿南家の者達に会うべきだ!」

「やけにやる気だな?」


混迷を極めた昂の発言に、拓也は唖然とした顔で聞き返す。


「なにしろ我の魔術を披露して、我の存在そのものを華々しく誇示しなくてはならぬからな!」


昂の気迫を込めた訴え。

それは彼にとっての揺るぎない決意の表れであった。


「予想以上に、あの時の元樹の言葉が効果覿面だったんだな」

「……ああ。舞波がまた、阿南家の人達との対面を反故しないように注意しないといけないな」


拓也と元樹は敢えて、昂のやる気を重く受け止める。

それは玄の父親達の動向と同様に、気がかりが残る案件だった。


玄の父親が経済界への影響力がかなり強い人物であるように、輝明の父親もまた総務大臣ーー政治界への影響力がかなり強い人物だった。

魔術を使うーーその過程に存在した大きな問題。

それは玄の父親と同様に、総務大臣である輝明の父親の手によって秘匿することが出来た。

そうでなければ、輝明達がこのような平穏に満ちた生活を送れるはずもない。


「事前に伝えた輝明さんと焔さんはともかく、阿南家の人達も俺達の訪問に既に勘づいているだろうな。恐らく、屋敷への露払いは行っていると思う。とにかく焔さんから聞いた場所に向かおう」

「とにかく、偉大なる我は黒峯蓮馬達と魔術の本家の者達の思い通りにはならないのだ!」


しかし、元樹の躊躇いなど露とも知らず、昂は傲岸不遜な態度で自身の主張を訴える。


「我は何が何でも、我の存在を誇示してみせるのだ! そのためには綾花ちゃん達の協力が必要不可欠なのだーー!!」

「……あのな」

「それだと綾に危険が及ぶだろう」


そう応えながらも、拓也と元樹は次の手を決めかねていた。

陽向の魔術、玄の父親の魔術の知識という特異性だけではなく、昂の目線を欺いて昂の分身体達を操ってきた存在も侮ることはできないと感じていたからだ。

輝明達がいる阿南家は綾花達の味方として救いを差し伸べてくれるのか、それとも敵として対峙するのか、それすらも掴めない。

魔術の家系のことを知った今もことごとく、判断材料が少なかった。


「たっくん、元樹くん、舞波くん、すごいね」


焔に聞いた場所にたどり着いた綾花は感慨深げに視線を巡らせる。


「ああ。屋敷の裏も圧巻だな」


拓也の目の前に広がった阿南家の屋敷は驚きを通り越して感銘を受けた。

綾花達が阿南家の者達に輝明と焔の協力を請うために訪れたのはまさに壮麗な屋敷だった。

豪華絢爛のような美しさを備えていた。

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