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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
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第ニ十八章 根本的に魔術の本家の妄執④

昂が持ちかけた黒峯家の屋敷への奇襲作戦。

それは型破りな作戦でもあり、限られた戦力の綾花達が取れる最善の策だった。

しかし、それは魔術の本家の者達の手によって、いとも簡単に幕を下ろされた。


「我は納得いかぬ!」


先程までの黒峯家の屋敷の騒動ーーその刹那を思い返して。

昂は地団駄を踏んでわめき散らしていた。

何故なら魔術の本家の者達と激闘を繰り広げていたのに一方的に自宅へと強制送還されたからだ。

しかもーー想定外な置き土産とともにーー。


「何故だーー! 何故、こんなことになっているのだ!!」


昂は頭を抱えて、虚を突かれたように絶叫していた。

まさに、昂の心中は穏やかではない状況だった。

視界に映るのは見慣れた自分の家だ。

都市部から外れた場所に立つ一軒家。

昂の家の前では、昂にとって想定外な事態が起こっていた。


「ひいっ! 綾花ちゃん、助けてほしいのだーー!!」


昂は悲痛な叫びとともに、魔術で彼らの動きを止めようとする。

しかし、彼らはそれを難なく避けると、ある一点の目的意識を掲げた。


「「「我らは『舞波昂という存在』を徹底的に調べ尽くすべきだ!!」」」


彼らーー昂の分身体達は同じ挙動で一斉に唱和する。

全ての昂の分身体達が昂めがけて一糸不乱に押しかけようとしていた。


「おのれ~。何故、我の分身体達が勝手に現れて動き回っているのだ! 綾花ちゃん、今すぐ助けてほしいのだーー!!」


昂は防衛に撤しながらも、綾花に何とかして助けを求めようとする。

助けを求められた綾花は思わぬ現象に心底困惑したように言った。


「大変だ、井上、布施。大勢の昂が一斉にこちらに迫ってきている!」

「なっ!」

「これは!」


綾花の視線を追った先には、まるで悪夢のような光景が広がっていた。


「「「舞波昂の家を家宅捜索するべきだ!! ついでに魔術書を手に入れるべきだ!!」」」

「我の魔術書はたとえ、我の分身体であっても渡さぬ!!」


昂の分身体達が総出で本物の昂に突撃してくるという怪奇な現象。

いつの間にか昂と昂の分身体達が魔術書を賭けて激しい攻防戦を繰り広げていた。

そこで、はたと一番気にしなくてはいけないはずの重大事に、拓也と元樹は思い当たる。


「こ、これって、まさか」

「……ああ。恐らく舞波の分身体達が暴走しているんだろうな」


鬼気迫る昂の集団を前にして、事態を把握した拓也と元樹は呆気に取られてしまう。


「ただ、今回、舞波は複数の分身体を編み出す魔術を使っていなかった。突如、舞波の分身体達が現れたのは、魔術の本家の人達が昂の今後の動向を探るための置き土産かもしれないな」


その揺らぎない魔術の本家の者達の意思に応えるように、元樹は状況を照らし合わせながら応える。


「置き土産……?」

「舞波を黒峯家の会合に招いた人か、もしくは神無月夕薙さんを始めとした魔術の本家の人達が最後に仕掛けてきたんだろうな」


拓也の躊躇いに応えるように、元樹は今までの謎を紐解いて推論を口にした。


「そんなことはどうでもいい! いつの間にか、我の影武者達が一致団結しているではないか!」

「……おい。自分で分身体を消すことは出来ないのか」


不愉快そうに顔を歪めて高らかに訴える昂に、拓也はうんざりとした顔で冷めた視線を向ける。


「ふむ……。何故か今回も我の影武者達を消すことが出来なかったのだ……」

「以前、舞波の魔術が暴走した時と同じように、舞波が自身の分身体を消すことが出来なかったのか。どんな魔術を使って、舞波に自身の分身体を消すことが出来ないようにしているんだろうな」


昂の悲哀を込めた訴え。

元樹は敢えて、昂の意見を重く受け止める。

昂の分身体達が突如、現れた現象といい、気がかりが残る案件だ。

拓也と元樹は顔を見合せると、これまでの情報を整理していく。


「何度見ても不思議な魔術だな」


元樹が反射的に視線を向けた先には、困惑の色を示す輝明の姿があった。


「舞波昂という魔術の使い手と黒峯家が管理していた魔術書によって生じた現象か。分身体を複数、増やすという魔術。その魔術に手を加えることができるのは、魔術書を管理していた黒峯家の者かもしれないな」

「……へえー、面白い手品じゃねぇか」


昂の型破りな魔術を利用した者への解釈。

核心を突く輝明の理念に、焔はそれだけで納得したように表情に笑みを刻む。


主従関係を結んでいる輝明と焔。


それぞれ、個性も指標も考え方も違っていたが、その剽悍さは昂の及ぶところではないように拓也には思えた。

しかし、肝心の昂はそれらのことを全く気にせずに話をひたすら捲し立てまくった。


「「「我らは舞波昂の妨害に屈せずに、舞波昂の家を家宅捜索をするのだ!!」」」

「おのれ~! 我の影武者達が勝手に現れただけではなく、暴挙に出ようとしているではないか!」


昂は憤懣やる方ないといった様子で、昂の分身体達との抗戦を続ける。


「……魔術の本家の人達も、強引な手段を使ってくるな」

「はあ……。舞波の魔術の効果を解かないといけないな」


傍若無人な昂の分身体達の有り様に、拓也と元樹は辟易した。

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