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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
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第ニ十七章 根本的に魔術の本家の妄執③

「今から思う存分、我の魔術の凄さを知らしめてやるのだ!」

「……舞波昂くんが未来の支配者とはどういうことだ」


事情を察すると同時に、文哉は今まで昂が語った内容を改めて洗い直す。


舞波昂くんが語る未来の支配者。

その意味を知れば、この世界の(ことわり)を解く鍵になるはずだ。


文哉は薄く目を細める。

まさに点と点が繋がったとばかりにーー。


「舞波昂くん、未来の支配者とはどういう意味だ?」

「むっ! ど、どういう意味だ、だとーー!!」


文哉の懸念に、昂は拒絶するように両手を前に突き出す。


「そ、そんなもの、我がすごいだけーー否、我が言うはずがなかろう」


昂のたどたどしい答え方に、拓也は呆れた声でつぶやいた。


「何でそうなるんだ……」

「舞波はどんな状況に追い込まれても変わらないな」


どこまでも前向きな昂の発想に、拓也と元樹は思わず辟易する。


「舞波昂くん、想像以上に難解な思考の持ち主で未知数の力の持ち主のようだな」


状況は思っていたよりも複雑で混線しているのだと文哉は頭を抱えた。

どれが真実で、どれが虚実なのか。

昂の行動理念に解を示してくれる人がこの場に一人でも居てくれれば、と文哉はそう願わずにはいられなかった。


「未来の支配者……?」

「……すまない。気にしないでほしい」


輝明の率直な疑問に、1年C組の担任は困ったように苦笑する。


「畢竟するに、真実ではないんだな」


輝明は何とも言いがたい眼差しで、狼狽する昂を見つめていた。


「とりあえず、その気迫だけは認める」

「むっ、偉大なる我より偉そうな発言は認めないのだ!」


輝明の率直な意見に、昂が不本意とばかりに自身の矜持を貫いた。


「輝明だから、それでいいんだよ!」


昂の遺憾なる反感に、焔は抑えようとしても抑えることのできない情動を示す。


「舞波昂くん。君に宿る魔力の根源、いずれ全貌を明らかにしてもらおうか」


文哉は今まで調べ尽くした昂が関わる魔術の騒動を想起する。

いずれ全貌が明らかになるのを加速させるように。


魔術の本家の者達は良い。

何者にも汚されない純粋な色だから。


魔術の分家の者達もまあ良い。

彼らのことを快く思っていない者達もいるが、それでも自身が求める純粋な色に近い。


だが、魔術の家系と関わりのない者が魔術を行使するのは最早、自身が求める純粋な色から程遠い。

故に、それを踏み荒らす輩には嫌悪感を覚える。

何も知らぬ汚れなき魔術の本流。

あの汚れなき色を手折ろうとするなど以ての外だ。

しかし、此度と似たような出来事に直面した時、文哉はまた同じ選択ーー昂を探ろうとするだろう。


嫌悪感を覚えつつも、その存在意義に興味を惹かれる者。

未来の支配者と名乗った舞波昂ーー。


嫌悪感を覚える相手に、興味を示している。

一見すると脈絡が見えない。

誰かにそれを問われたら、文哉が返答に窮する存在ーーそれが昂だ。

だが、それでも文哉は昂の魔力の源を知りたかった。

世界はやがて魔力に地を覆われる日々を迎え、魔術とともに過ごすことが増えていく。

だからこそ、文哉は昂の魔術の根元を解明したいと切に願う。

今は叶わぬ願いでも、いずれ解き明かしたい標榜だった。


「黒峯蓮馬達も去ったことだ。舞波昂くん、またいずれ会おう」


文哉は綾花達の位置を特定するとそう切り出した。


「むっ、貴様まで勝ち逃げするつもりなのか! 逃がさないのだーー!!」


昂がすかさず、渾身の魔術が放とうとした。

だが、その前に文哉は言を紡ぎ、魔術を展開する。

それは『魔術』というよりも一種の『芸術』だった。

互いの魔術は正面から激突し、そして大爆発が発生した。

周囲が巻き込まれるのも構わず、破壊の限りを尽くす魔術の嵐。


「随分、派手に騒ぐものだ……」


介錯のない昂の魔術の威力に、文哉は辟易する。


「相変わらず、文哉さんの魔術は綺麗ですね~」


文哉の華麗な魔術。

その魔術を目の当たりにした文月は声を華やかせた。


攻撃の手数を減らす必要がありそうですね。


魔術の嵐に吹き飛ばされつつも、夕薙は急がない。

端然と着こなす衣服を乱すこともなく、誘発された魔術に足取りを迷わせる事もなく、冷静沈着に距離を保っている。

昂の予備動作にあわせるように浮かび上がらせた焔に魔力を充填し、至近に照準を合わせる。


文哉さんが告げたとおり、随分、派手に騒いでいますね。


昂が発揮した底知れぬ才能と実力に、夕薙は歓喜とともに胸を打ち震わせる。


「面白い子ですね、舞波昂くん。また、手合わせする時が楽しみです」


昂の強い気概に、夕薙は不思議な感慨を覚える。

二人の激突を目の当たりにすることで以前、文月に挑んだ時の熱い気持ちが蘇ってくるようだった。


「次は貴様の番なのだーー!!」


意表をついた昂の魔術の連打。

だが、夕薙は既に魔術を放つ準備を整えていた。


「その手には乗りませんよ」

「むっ!」


宙に浮かんだ魔力の焔は、果たして幾つか。

その瞬間、夕薙が放った華麗な魔術と昂が不意討ちを込めて放った魔術がぶつかり合う。

屋敷全体を揺らす衝撃が、二人の魔術の激しさを物語っている。

その爆風が掻き消される前にーー


「なっ……」


何の脈絡もなく、綾花達の目前の光景が切り替わった。

先程まで黒峯家の屋敷にいたはずが、綾花達はいつの間にか、昂の家の前へと立っていたのだった。

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