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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
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第十五章 根本的に会合の出席者達⑦

由良文月さんの魔術はかなり厄介だな。


そんな不利な状況の中、元樹は戦局を変える突破口を開くために模索する。

だが、その思考を掻き消す声が屋敷に響き渡った。


「我は納得いかぬ 何故、先程、我の魔術が発動しなかったのだ!」


昂は地団駄を踏んでわめき散らしていた。

理由は、文月の魔術によって一時的に自身の魔術を封じられてしまったからである。

昂は陽向に対して魔術による攻撃を転じていた。

しかし、文月の魔術で魔術の発動を封じられてしまった影響で、逆に陽向から手痛い反撃を食らってしまったのだ。


「なるほどな」


昂と連携していた元樹は、状況を改善するために思考を走らせる。


魔術の本家の者達である由良文月と神無月夕薙。

昂達を翻弄するほどの魔術の実力者。

加えて、玄や輝明達を倒すほどの実力を持っているプロゲーマー。


元樹のその疑問は論理を促進し、思考を加速させる。

そうして、導き出された結論は元樹が今の今まで考えもしない形をとった。


「魔術が発動する前に封じられるというのなら、こちらが由良文月さんの魔術を発動させなかったら意味がないよな」

「なっ!」

「……っ」


予想外な真実を突き付けられて、拓也と綾花が目を見開く。


「確かに、そうですね~」


確かめるような問いをぶつけた元樹に対して、文月は不意を打たれたような顔をした後、すぐに平静を装った。


「でも、私の魔術が意味を為さなくても、夕薙さん達の魔術がありますよ」

「我はそんなことはどうでもいいのだ!」

「……わぷ!?」


奇襲を仕掛けてきた第三者の声に、ようやく状況に気づいた文月は間の抜けた声を上げる。

強靭な魔術の嵐が文月を後方へと吹き飛ばす。


「我の魔術を封じた罪は重いと知るべきだ!」


奇襲を仕掛けてきた存在ーーそれは黒峯家の会合に賓客として招かれたというのに、奇襲によって全てを台無しにした昂だった。


「素晴らしい、素晴らしいぞ、我の魔術による猛攻は!」


期せずして始まった昂の語り口。

文月は躊躇いの色を滲ませたまま、身ぶり手振りで当たり散らす昂を見つめる。


「まさに我は魔術の本家の者達をも翻弄する偉大なる未来の支配者、そして綾花ちゃん達を黒峯蓮馬と黒峯陽向の魔の手から颯爽と救う救世主ではないか!」

「……舞波はどんな状況でも相変わらずだな」

「……ああ」


昂の熱意がこもった発意に、拓也と元樹は少なからず、驚異の念を抱いていた。


「舞波の行動を読むのは、由良文月さんでも厳しいだろうな」


元樹は戸惑いを振り払うように、文月の動向に注視する。


「あのあの、いつから不意討ちを仕掛けようとしたんですか?」

「むっ、決まっているではないか。貴様が我の魔術を封じた時だ!」


文月の慌てぶりに、昂は傲岸不遜な態度で率直な意見を述べる。


「本当にそうなのか?」


拓也が抱いた疑問に応えるように、元樹は推測を確信に変えた。


「いや、舞波のことだから、出たとこ勝負だった可能性が高いな」


確信を込めて静かに告げられた元樹の問いは、驚愕する文月へと向けられていた。


「舞波昂くん、もう、不意討ちしちゃうの早すぎですよ~。私、これでも必死に周囲に目を向けていましたもん」

「面白い子ですね、舞波昂くん。あの文哉さんが興味を持つはずです」


どこか抜けている文月の賛美に続いて、夕薙からの真摯な称賛。

昂はそれを見越した上で徹頭徹尾、自分自身のためだけに行動を起こす。


「決まっているであろう。偉大なる我の実力なら、貴様らに不意討ちを仕掛けたり、貴様らの魔術を封じることなど朝飯前だ!」

「なっ!」

「えっ? 昂くんも魔術を封じることができるの?」


意気揚々に語る昂の発言に、玄の父親と陽向は反応する。

図らずとも、ブラフをかける昂。

だが、当の本人は虚実をない交ぜにし、ハッタリを噛ませながら語り続けていた。


「黒峯蓮馬と黒峯陽向! 今から思う存分、我の魔術の凄さを知らしめてやるのだ!」


事情を察すると同時に、玄の父親は薄く目を細める。

まさに点と点が繋がったとばかりにーー。


「昂くん、魔術を封じる手段を見出だしたとはどういうことだ?」

「むっ! ど、どういうことだ、だとーー!!」


玄の父親の懸念に、昂は拒絶するように両手を前に突き出す。


「わ、我もそんなもの知らーー否、我が言うはずがなかろう」


昂のたどたどしい答え方に、拓也は呆れた声でつぶやいた。


「何でそうなるんだ……」

「舞波は、どんな状況に追い込まれても変わらないな」


どこまでも前向きな昂の発想に、拓也と元樹は思わず辟易する。


「舞波昂くん、想像以上に未知数の力の持ち主のようだな」


状況は思っていたよりも複雑で混線しているのだと文哉は頭を抱えた。

どれが真実で、どれが虚実なのか。

昂の行動理念に解を示してくれる人がこの場に一人でも居てくれれば、と文哉はそう願わずにはいられなかった。

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