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マインド・クロス  作者: 留菜マナ
魔術革命編
284/446

第五章 根本的に在りしき日々は過去の残照⑤

魔術の本家に連なる者達。

その一歩が生み出すは虚。

重苦しくも、地をも揺らがすその一歩を食い止めんとする昂は更なる追撃を捌きながら戦い続けていた。


「……はあはあ。まだ、終わりではないのだ」


何度も強力な魔術を放った影響で、昂は息を切らしていた。

魔術は、陽向達にだけ攻撃が及ぶように射程を絞っている。

そして、強力な魔術を放てるようにと、威力を一点に集めていた。

昂は今までの戦い方を踏襲する。

だが、そこまでしても、陽向と夕薙の魔術の豊富さには悪戦苦闘していた。


「今度こそ、我の魔術の偉大さが分かったであろう」

「うん。すごい威力だね」


矜持を貫いた昂に答えたのは、泰然自若と立っていた陽向だった。


「むっ?」


目を見張る昂の前で、陽向は平然とした表情で服についた埃を払っている。


「お、おのれ~! 何故、いつも倒れないのだ!」

「昂くんの魔術って、やっぱりすごいね」


何度目かの魔術の打ち合いの後、昂は荒い息を吐きながらも陽向と距離を取った。

同時に陽向も浮遊して、万全の攻撃態勢を整える。

次の瞬間、昂と陽向は同時に叫んだ。


「次こそ終わりなのだ!!」

「うん。終わりにしようか、昂くん!!」


互いの魔術は正面から激突し、そして大爆発が発生した。

周囲が巻き込まれるのも構わず、破壊の限りを尽くす魔術の嵐。


「随分、派手に騒ぐものだ……」


介錯のない魔術の威力に、結界を張り巡らせた文哉は辟易する。

幸い、負傷者は出なかったものの、二人が発した爆風によって吹き飛ばされている者がいた。


攻撃の手数を減らす必要がありそうですね。


吹き飛ばされつつも、夕薙は急がない。

端然と着こなす衣服を乱すこともなく、誘発された魔術に足取りを迷わせる事もなく、冷静沈着に距離を保っている。

昂の予備動作にあわせるように浮かび上がらせた焔に魔力を充填し、至近に照準を合わせる。


文哉さんが告げたとおり、どちらも容赦ない攻撃ですね。

これはこれは久しぶりに由良さんの本気の力が見られるのではないでしょうか……?


昂と陽向が発揮した底知れぬ才能と実力に、夕薙は歓喜とともに胸を打ち震わせる。


「面白い子達ですね、舞波昂くんと黒峯陽向くん。二人とも将来が楽しみです」


昂と陽向の強い気概に、夕薙は不思議な感慨を覚える。

二人の激突を目の当たりにすることで以前、文月に挑んだ時の熱い気持ちが蘇ってくるようだった。


「我は意地でも会合に出席するのだーー!! そして、綾花ちゃんも、我の魔術書も渡さないのだーー!!」

「……騒がしい方ですね」


夕薙は魔術の焔を行使して、魔力を(たぎ)らせる昂へ叩きつけようとする。

それは一つだけ放たれていれば、昂を打ち倒すものだっただろう。

だが、魔術を使いこなせるのは昂だけではない。


「なっ……!」


突如、至近距離に現れた元樹。

魔術道具を用いた元樹が地面を蹴って、夕薙との距離を詰めてきたのだ。

思わぬ事態に、夕薙の動きに鈍りが生じる。

僅かではあるが、それが隙になる。

その隙を見逃すこともなく、元樹は声を張った。


「舞波!」

「むっ、分かっているのだ!」

「元樹くん、いつの間に……!」


予想外の行動を前にして戸惑う陽向とは裏腹に、元樹は冷静に昂へと視線を向ける。


「黒峯陽向、今こそ、我の魔術を食らうべきだ!」


元樹の言葉に応えるように、昂は裂帛の気合いを込めて魔術を放った。

意表をついた昂の魔術。

だが、それは口にした陽向ではなく、夕薙へと向かっていく。


「その手には乗りませんよ」

「むっ!」


宙に浮かんだ魔力の焔は、果たして幾つか。

その瞬間、夕薙が放った華麗な魔術と昂が不意討ちを込めて放った魔術がぶつかり合う。

屋敷全体を揺らす衝撃が、彼らの魔術の激しさを物語っていた。

その爆風が掻き消される前にーー


「まあ、そうくるよな!」


元樹は既に動いていた。

その言葉が合図だったように、元樹は魔術道具を使って、一瞬で陽向のもとまで移動する。

そして、陽向の体勢を崩すために足払いをした。


「なっ……!」


静と動。

本命とフェイント。

元樹は移動に魔術道具を用いて、陽向の意表を突くと、緩急をつけながら時間差攻撃に徹する。

攻撃手段が魔術でないため、跳ね返すことが出来ない陽向は次第に翻弄されてしまう。


「元樹くんはすごいね」


間一髪で難を逃れた陽向は、巧妙な元樹の攻撃方法に感嘆の吐息を漏らす。


「今度は二人、同時ですか?」


夕薙はどちらを迎撃するか、判断を迫られる。

逡巡を巡らせ、ここは元樹を対処するべきだと夕薙は判断した。

受けに回るのは得策ではない。


「これなら、どうだ!」

「くっ……!」


夕薙より速く、元樹は攻撃態勢に入り、蹴りを振りかぶる。

それでも夕薙は魔術を用いて、元樹の次撃を躱す。

元樹も怯まずに、蹴りと拳打のコンビネーションで攻め続けるが、夕薙はそれすらも防いでしまう。


「ならば、黒峯蓮馬、我の魔術を喰らうべきだ!!」

「今度は私か……」


そのタイミングで、昂は迷いなく、玄の父親に向かって魔術を放つ。

以前、陽向や玄の父親に放った魔術と同じように、玄の父親にだけ攻撃が及ぶように射程を絞っている。

そして、強力な魔術を放てるようにと、威力を一点に集めていた。


「おのれ~、黒峯蓮馬め!」


魔術を放った昂が地団駄を踏みながら、わめき散らしていた。

誰が見ても完璧な不意討ちを前にして、玄の父親が後退しながらも、魔術の知識の防壁を駆使して防いだからだ。

元樹と昂の連携攻撃。

だが、そこまでしても、魔術の本家の者達を打ち破ることには悪戦苦闘していた。

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